「さぁ、いつでもどうぞ?」
挑発という程ではないが、気心の知れた相手なので臆する事無く言える台詞だ。
「その挑発に乗せられてやるよ!」
どうやらミカゲには挑発の台詞に聞こえたらしく、早速仕掛けてくる模様。
当のミカゲは地面に片膝と右手を突き、迅速に魔法を唱える。
「行け! シャドーメイク!」
ミカゲの足元から影が這い広がり、俺の足回りは影で埋め尽くされる。
「喰らえ! シャドースティング!」
「!?」
ミカゲが魔法を唱えると同時に影から殺気を感じ、咄嗟に俺は影の鎖を引き千切り空中へ跳ぶ。
すると、跳んだ直後に影の中から無数の影の棘が飛び出して来た……がそれを読んでの事前回避である。
「この感覚は……そんな……」
ミカゲは本気で俺を殺す気のようで、明確な殺意を当人から感じ取れる。
しかもこの魔法は黒葬程ではないが、殺傷力の高い闇属性魔法のようだ。
「はぁ!? 嘘だろ!? なんでコレを避けれんだよ!?」
どうやら先程の攻撃で倒したかったらしい。
だがそれよりも、殺したい程に疎まれていた事実を知り衝撃を受けた自分がいる。
「ミカゲ……そこまでセリーヌのことを……」
余程惚れているのだろう、俺という存在が邪魔で邪魔で仕様がない事が今の攻撃で充分に理解出来た。
しかし、俺もただで負ける訳にもいかず無論、死にたくもない。
それに死よりも何よりも、セリーヌの前では負けたくないのだ。
その事を考えた瞬間に勝たなければと気力が湧き、空中にいる状態で即座に魔法を唱えていた。
「俺は負けない! 雷霆!」
上空から猛烈な雷がミカゲに目掛け落下する。
「なんだ!? これはヤバーー」
落下した雷霆により地面は深く抉れ土埃が立ち、そしてミカゲの姿が完全に見えなくなった。
「うーん、やり過ぎたかな……?」
そう呟いた後、地面に着地しミカゲの様子を見ることに。
「なんなの……なんなのよ! この魔法は!?」
エリザが取り乱しながら俺に問う。
「これが、今ある俺の実力です……」
俺の座右の銘でもある「驕らず謙虚であれ」の精神を以ってエリザに返答。
「有り得ない……絶対に有り得ないわ! あなたみたいな無能がこんな実力を持つなんて!」
(必死になる程、認めたくないのか……)
頑なに俺を認めようとしないエリザに対し、悲しみよりも憐れみの眼差しを向ける。
「や、やめなさい! そんな目で私を見ないで!」
今のエリザにはいつもの傲慢で高飛車な姿が見られず、それでも一応は強気な態度を取っているようだが、あれはただ虚勢を張っているだけであろう。
「……」
(エリザさん……何故そこまで……)
エリザを見つめながら考え事をしていると、雷霆が落下した場所からミカゲの声が聞こえてきた。
「あぁ、くそぉ……本気で死ぬかと思ったぞぉ……」
その力無い言葉の直後、ひび割れした影の球体が粉々に砕け、球体の中にいたミカゲが姿を現す。
「ははっ、よかったぁ……」
ミカゲの姿を確認した俺は、悪態ではなく安堵の言葉を呟くのであった……
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