僕は、なぜここにいるか、青い瞳の女に説明した。
「お前もか!」
なんと!この人も、グラナを奪った、顔に大きな傷のある男を探していたなんて。
「それで、なぜ店主と言い争っていたんですか?」
すると、青い瞳の女は、店主の女を、指差して言った。
「それはだな、このババアが、情報を言わないからだ!」
「だから、うちの商品を買ったら教えてやるって言ってるだろ!」
店主の女は、ものすごい剣幕だ。
だが、青い瞳の女は、それに動じている様子はない。
「商品を買えって言ったって、たかが、毛皮程度で、なぜ金貨一枚もするんだ。高すぎなんだよ!」
毛皮?
青い瞳の女を見ていた僕は、慌てて、店の方を見た。
そこには、動物の毛皮や魔物の皮などが、並べられていたり、金具で吊るされていたりしている。
皮の端の方に血が付いていて、あまり見ていて気分のいいものではなかった。
じゃあ、あの野菜屋の店主が言っていた、皮を売っている店って、ここのことじゃないか。
顔を真っ赤にして怒っている店主の女に、僕は、恐る恐る話しかけた。
「あのー……。」
「何か用かい!」
青い瞳の女と、言い争っている時と同じような声で言い、店主の女は、僕の顔を見た。
すると、一瞬にして、意外という顔つきになった。
「レイス王子、どうしてこんなところに。皮でも、買いに来たんですか?」
「ちょっと、人を探していて……。」
「まさか、レイス王子も、この下品な女と同じことを聞きに私の店に。」
店主の女は、青い瞳の女を、ソーセージのような太い指で、指差している。
「誰が下品だ!早く教えろ!家畜女。」
たしかに下品だ。店主の女は、太っているが、家畜は言い過ぎな気がする。
「皮を買うので、どうか教えていただけませんか?」
あんまり、お金は持ってないけど、なんとか買えるぐらいはある。
すると、店主の女は、大きな胸の前で、両手を広げ、ぶんぶん振って。
「とんでもない。王子の頼みなら、なんだって聞きますよ。」
「おい。私とは随分と態度が違うじゃないか!」
「当然だろ。あんたと王子じゃ、宝石と馬のフンぐらいの差があるんだから。」
なかなか面白いことを言う店主だ。
「私が宝石で、こいつが、馬のフンだろ。」
「そんなわけないだろ!さぁ、早くどこかへ行きな!」
すると、青い瞳の女は、僕の肩に、足のように太い腕を回してきた。
その時に、少し汗臭い匂いがした。
「私も一緒に、聞いていってもいいよな。」
僕の方を、見下ろして言っている。
だが、僕はその時、その女の、透き通った青い瞳に、またしても、虜になっていたので、返事をすることを忘れていた。
すると突然、頬に、稲妻が落ちたかのような衝撃を感じた。
それにより、我に返った僕は、手の平掲げて、今にも僕の頬を、平手打ちしそうな女を見て、慌てて言った。
「一緒に聞いていいですから……。」
「そういうことだ。だから早く教えな。」
店主の女は、悔しそうな顔をしている。
「あれは、一昨日の夜でした。私が店を閉めようとしている時に、突然、誰かがぶつかってきたんです。」
「それで、ぶつかってきた奴の方を見ると、そいつもちょうど私を見ていて……。」
僕は、待ちきれなくなって。
「そいつの頬に、傷はありましたか?」
「ああ、ありましたよ。雨が降っているにもかかわらず、傷が見えたから、相当大きな傷なんだろうね。」
「そいつ、どっちへ行きましたか?」
「ここから、西の方だった気がします。」
よし、急いで西に向かおう。
「ありがとうございました。」
僕が、肩にかけられた、青い瞳の女の腕を、退けようとしたら、力を入れられて、退けることができなかった。
その時の腕は、まるで、鋼のように、硬かった。
「おい、ババア。そこの熊の皮をよこしな。」
この人は、なんてことを言うんだ。
「あんた、お金持ってるのかい?」
「いや、持ってないな。」
「それじゃあ、渡せないね!」
「でも、この私に、無礼な態度をとったよな。」
「あんた……一体何者なんだい。」
「私か。私は、こいつの姉だよ!」
「えー!!」
青い瞳の女の口から出た言葉に、驚きを隠すことができず、僕は、声をあげて驚いてしまった。
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