ギアード・ウォーリア

その闘いの勝者は大義か。それとも――
結城辰也
結城辰也

第三話 不揃いな敵陣たち

公開日時: 2020年12月7日(月) 15:43
更新日時: 2020年12月7日(月) 15:49
文字数:2,073

 ゼクスは思っていた、一機を破壊するのにこんなにも時間が掛かるのかと。


 確かにこのままでは全てを破壊するは難しいだろう。故に急がなければならなかった。


 もし今のままでいたら敵機は合流し合いお互いがチームを持つ事になるだろう。


 理解したゼクスはG.Wをホバー走行させ先を急いだ。残りのG.Wも後を追った。


 移動の際にゼクスのG.Wはアサルトマシンガンの弾数を操縦席内部のモニターで確認した。


 どうやらアサルトマシンガンの弾数は半分以上が残っておりマガジン交換は不必要と判断した。


 この戦いは長丁場になる。最終的には格闘戦になるだろう。多勢に無勢だがやるしかなかった。


 やる気をなくさないゼクスはG.Wのアサルトマシンガンを出現させ右手でグリップを握り締めた。


 残念だがG.Wは格闘戦を目的として造られてはいない。だがそれでもホバー走行が補っていた。


 滑らかな動きから繰り出す重撃はまるで軽やかな動きで避けては放つ一打のようだった。


 これからのG.W戦においてホバー走行は必要不可欠なものになるだろう。


 故に戦術に叩きこんでおかなければ死因になりかねなかった。ゼクス達は訓練を必要とした。


 だが今は無理だ。ゼクス達は思っていた、どうして半端な状態できてしまったのかと。


 悔やんでも仕方がないのは解る。だがそのような隙を与えては自分や部下を死地に追いやってしまう。


 ゼクスはそれだけは避けたかった。だからと言って敵を死地に追いやりたいもなかった。


 どうして人は分かり合えないのだろうか、こんなにも悩み悔やみ嘆いでいるのに。


 刻々と近付くは敵の機影のみ。それも単機での行動だ。どうやら敵機は合流を諦めたらしかった。


 敵機は凄まじい勢いで近付いてきていた。これはなんと勇猛果敢な事か。玉砕覚悟の上だろう。


 建物を超えられないところを見ると軍事用ヘリではなくG.Wと感じた。ゼクスは全機がG.Wだろうと予想していた。


 視認出来る距離になっても敵機は速度を緩めなかった。故にゼクスのG.Wは牽制程度にアサルトマシンガンを放った。


 それでも敵機は止まらない。やはり所持している武器がアサルトショットガンだからだろう。


 ゼクスのG.Wはアサルトマシンガンを撃つのを止め楯の中に入れた。二度目が上手くいくとは限らない。だが封鎖された基地内ではこうするしか他にない。


 一対一のチキンレースなら負けない自信があった。故にゼクスのG.Wはホバー走行をし始めた。狙いは一撃必殺のパイルバンカーだ。


 その為にゼクスのG.Wは楯で防御姿勢に入った。双方ともぶつかり合うかの如し勢いがあった。だが敵機は急に右にずれた。


 なぜと思いつつも次の光景をメインモニター越しに眼にしてゼクスは不味いと表情を歪めた。敵機の後ろにスナイパーライフルを持ったG.Wがいたからだ。


 このままでは楯ごと貫通しかねないとゼクスは思い急に左にずれた。この事で右にずれた敵機と重なるが仲間の射線上に遮蔽物はなくなっていた。


『アサルトミサイルランチャーを発射するんだ! ライザ!』


 陣形が△である為に後方のG.Wは自由が利かなかった。だが今はライザのG.Wの射線上に遮蔽物はないので撃てる筈だった。


『解った。この距離だと命中は無理。煙幕代わりに撃つわね。隊長』


 ゼクスの思惑とライザの思惑が一致した。ライザのG.Wは固定式アサルトミサイルランチャーを右肩に装着させていた。山なりに飛ばす事も真っ直ぐ飛ばす事も出来た。


 今回は真っ直ぐ飛ばして命中はさせずに爆破させスナイパーライフルの射線上に煙を作ろうとしていた。もしこれが山なりだったら敵機は慌てる事なく移動しているだろう。


 わざと真っ直ぐ飛ばす事で敵機を慌てふためかせてスナイパーライフルの弾数を少しでも減らさせる作戦だった。まさに作戦通りに敵機は移動を止めて撃ってきた。


 だが敵は緊張しているのか手振れが酷く補正される事なく直に機体ごと震えていた。どんなにG.Wが優秀だろうが乗っているのが素人では話にならない。


 実に冷静な態度でライザのG.Wはアサルトミサイルランチャーを四発撃った。全ては煙幕を作る為に。スナイパーライフル持ちの敵機は撃ち落とそうと弾を使い果たした。


 ゼクスはその隙を見て最前線にいるG.Wを倒そうと思った。思いが繋がったように敵のG.Wはアサルトショットガンを適正な距離で撃ってきた。ゼクスの予想通りだ。


 ゼクスのG.Wは撃たれるとほぼ同時に右にずれると即座に元の位置に戻し凄まじい勢いで突っ込んでいった。次の射撃が出来ないくらいの速さで体当たりを仕出かした。


 同じ動作だがゼクスは気にしない。戦場に奇新しさなんて不要だ。ゼクスは敵機が倒れる前にパイルバンカーを打っていた。敵機は勢いのままに仰向けに倒れ込んだ。


 全く動かない敵機を見る事なくゼクスのG.Wは次なる標的を見つけていた。今度の敵機はスナイパーライフル持ちのG.Wだ。煙幕は消え去り蠢く影が正体を現し始めた。


 果たしてゼクス達は次なる標的――スナイパーライフル持ちのG.Wを破壊出来るのだろうか。さらにレーダーを見ても機影は残り四機となっていた。

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