あの七夕の日を忘れない

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私は前へ進む

公開日時: 2021年3月14日(日) 19:07
文字数:872

あれから、数分後

私は、彼のことを病院に届けた

その時、先生がいつになくうれしそうにしていたのがよく覚えている。

先生曰く


「蓮君は優しい人だったんだけど、不幸が大きすぎたんです

 ですから、最後の最後に、君を幸せにできて、うれしかったと思います」


確かに、蓮はすごいやさしい人だったけど、身の回りに不幸が多すぎたと思う。

自分の病気に、両親の突然の死

私たちには計り知れない、つらさがあったと思うけど、それでも彼は頑張っていた。


彼のことを、一時保管室に送り届けるまで、見送った後に、私はとある場所向かった。

それは、たくさんの願いが詰まっている場所


病院の中にある、短冊をかけるような竹


お子さんに病気がある人向けにと、小児病棟の中に設置されている。

ここからさほど遠くないので、すぐについた。


そして、私はまず自分の短冊を探した。

すると、近くに二つ短冊がかかっていた。

さっき、この病院を出る前にかけたばかりだから、すごい不審に思った。

でも、その短冊を手に取って、書いてある名前を見て、また泣きだしそうになった。


その二つの短冊は、蓮と彼方のものだった。

人の短冊を見るのは気が引けるけど、あの子たちならきっと許してくれるだろう。

短冊をひっくり返すと


「お姉ちゃんとお兄ちゃんが幸せになりますように 彼方」


「彼方が元気になって、暁さんを幸せにできますように 蓮」


と、書いてあった。

二人とも、本当にお人よしだ。

せっかくの短冊にも、自分のことを一切書かないなんて


「あまりにも優しすぎるよ...」


でも、私は二人から幸せを願われたんだ。

私の願いも、二人の願いの半分は、絶対にかなわない。

でも、私が幸せになれば、彼らの願いが半分ずつはかなえられる。


もう、私は振り返らない

いなくなった彼らのことは、もう思い返さない

彼方のことは、少しだけ心残りがあるけど、後悔はしない

だって、二人からたくさんのものをもらって、託された

だから、これからは私の力で生きていく


そうして、彼らの短冊をもとの位置にかけなおして、大きく一歩踏み出した。

その時、一枚の短冊が風になびいた。


「彼方と蓮が元気になりますように 光」

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