【第1章完】ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ

阿弥陀乃トンマージ
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第10話(4)(男の)水浴び観察

公開日時: 2024年1月30日(火) 07:20
文字数:1,650

                  ♢

「ふう……」

「お疲れ様でありんすね……」


 通りがかったアヤカに対し、座っていたエリーが声をかける。


「む……貴様らも休憩か?」

「ええ、保養施設が近くにあるというのは便利でありんすね。いつでも好きな時に温泉に入れることが出来るでありんす……」

「……そのように頼んだのだからな、普段はこのような利用は出来ない……」

「はいはい、感謝しておりんす……」


 エリーが適当な敬礼をする。アヤカが苦笑交じりに指摘する。


「全然感謝していないだろう……」

「バレたでありんすか」

「バレる」

「あらら……」

「別に感謝など要らないが……」

「え?」

「気持ち悪いだけだからな」

「ひ、酷い言われようでありんすね?」


 エリーが自らの胸の前で両手を合わせ、上目遣いでアヤカを見る。


「魔族の話す言葉にはどうせ裏があるんだろう」

「いいえ、これは純粋な感謝でありんすよ」

「純粋さとは、もっともかけ離れている種族だろうに」

「それは偏見でありんす!」

「……」

「な、なんでありんすか? こちらをジッと見て……」

「……確かに貴様はある意味純粋なのかもしれんな」

「え……」

「いや、この場合は単純と言い換えた方が良いかもしれんが」

「ちょ、ちょっと!」

「半分冗談だ」

「半分って」

「……それよりもイオと一緒では無かったのか?」

「あ、ああ……ちょっと……」

「しっかり見ていないと駄目だろう」

「あ、あちきはあの娘の保護者ではありんせん!」

「どこへ行ったんだ。風呂嫌いなのか?」

「あまり慣れていないようでありんすね……近くで水浴びをしてくるとか……」

「水浴び……」


 アヤカが顎に手を添える。エリーが尋ねる。


「あのニンジャガールは? ご一緒ではありんせんのでありんせんか?」

「ああ、ちょっと術の練習をしたいと……」

「術の?」

「うむ、『水遁の術』とか言っていたかな?」

「水遁……」


 エリーが腕を組む。アヤカが尋ねる。


「どうかしたのか?」

「いいえ……」

「そうか」

「しかし……ここで待っていて、本当に山の王たちはやって来るのでありんすか?」

「……ここから比較的近くにそれなりに大きい軍の基地もある。まずはそこを攻略し、拠点にするのではないかと考えている。よって、この辺りを通過する可能性は極めて高い」

「ふむ……」


 アヤカの説明にエリーが頷く。


「それに……」

「それに?」

「現状で、この国を本気でどうにかしたいというのなら、キョウ殿を排除することをやはり考えているのだろう」

「なるほど、それは確かに……そういえばキョウ様は?」

「滝の方に行かれたと思ったが……」

「しまった!」

「ど、どうした⁉」

「先を越されたでありんす!」


 エリーがその場から走り出す。アヤカが追いかける。二人は茂みに入る。


「なんだというのだ……」

「うおっ⁉」


 茂みの中には、オリビアとヴァネッサが身を潜めていた。アヤカが呆れる。


「……揃って何をしている?」

「い、いや、狙撃についてのレクチャーをヴァネッサにね……」

「キョウさんの水浴びを覗こうじゃないかとおっしゃって……」

「うおおい! ヴァネッサ! 君は誤魔化すということを知らないのかい⁉」

「まったく、油断も隙もないでありんすね……!」

「……なんだ、注意しに来たわけじゃないんだね」

「もうちょっと、そっちの方に詰めて下さい……」


 エリーがオリビアとヴァネッサを軽く押し退ける。アヤカが首を傾げる。


「キョウ殿の裸体など、いつでも見ているだろう……」

「おやおや、分かっていないね~。隙だらけであろうところが良いんじゃないか」

「おっ、さすがは長命のエルフ。分かっているでありんすね~」

「分かりたくない境地だな……」

「あ、あの……ウララさんとイオさんがあそこに……」


 ヴァネッサが指を差す。キョウの近くの水に、ウララたちがジッと潜んでいる。


「ああっ⁉ 水浴びだ水遁の術だとか言って、ちゃっかり良いポジションを確保しているっでありんすね! 完全にしてやられた‼」

「うおおおおっ‼」

「⁉」


 キョウが滝を一瞬で“駆け”上がってみせた。ヴァネッサがボソッと呟く。


「もう、キョウさんだけで良いんじゃないですか?」

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