「きょ、巨体でなおかつ、重そうな鎧をつけているのに、なんていうスピードだよ……」
オリビアが信じられないといった様子で呟く。
「さて……」
「!」
山王がオリビアに視線を向ける。オリビアは負傷していない左腕で拳銃を構える。
「……利き腕ではないようだが?」
「どちらの腕でも問題なく扱えるようにはしているさ」
「ふっ、そうか……」
「そうだよ……」
「……スナイパーなのに距離を取らなくても良かったのか?」
「距離を取ったって、どうせすぐに詰めてくるだろう?」
「ふふっ、まあ、それもそうだな……」
山王がうんうんと頷く。オリビアは黙ったまま拳銃を向ける。
「……」
「どうした? 撃たないのか? わしは今、完全に隙だらけだぞ」
山王がわざとらしく両手を広げる。オリビアが舌打ち交じりで答える。
「ちっ……あのスピードを見せつけられた後じゃあ、嫌でも慎重になるってものさ……」
「冷静だな……だが、時には若者らしい思い切りの良さも大事だぞ?」
「生憎だが、若者っていう年齢でもないのでね……」
「おっと、そいつはとんだ失礼を……」
「………」
「…………」
山王とオリビアが向かい合って黙り込む。一瞬間を置いてから、オリビアが動く。
「それっ!」
「! 拳銃を投げただと⁉」
「本命はこっちだ!」
オリビアがローブの中からライフル銃を取り出して、素早く構える。
「なにっ⁉」
「それっ!」
「ふっ!」
「なっ⁉」
オリビアがライフル銃を放って、山王に向かって投げた拳銃の引き金部分を弾き、拳銃を至近距離で発砲させたが、山王が手甲を自らの顔面の前に差しだしてそれを防ぐ。
「……なかなか見事な曲芸だな」
「ど、どうして反応出来た?」
「鎧兜で覆っているわしの弱点は眉間……ここを狙ってくることは読めていた」
「ちっ……」
「さて、銃使いは銃で始末してやろうか……」
山王が落ちていた拳銃を拾ってオリビアに銃口を向ける。ウララが飛びかかる。
「そうはさせないでござる! 『分身の術』!」
「なにっ⁉」
何体かに分身したウララが山王を取り囲む。ウララが声を上げる。
「もらったでござる!」
「くのいちめ、まだ動けたか……しかし、術の精度が極端に落ちているな……そこだ!」
「‼」
山王はウララの本体を見抜いて、拳銃で撃つ。ウララが地面に落下する。
「どうだ、わしの射撃技術は?」
「わずかに手がブレている……満点は上げられない。ぎりぎり合格点か」
「抜かせ……」
「ぐはっ!」
銃で撃たれたオリビアが倒れる。山王が技術を見せつけた。
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