私はただのOLの山田絵里だ。
私の働いている会社はかなりブラックであった。
残業は基本であり弱音を吐くものなら上司から根性でがんばれと言われるのが当たり前だった。
そんなとんでもない会社のためほとんどの若手はすぐに辞めてしまう。
そのため結局最後はここ以外行き場所のない人間に固定される。
私の場合もここ以外の働き手が見つかりそうでもないほど無能なのでこの会社で頑張ってはたらいている。
ブラック企業なので残業は当たり前でさらに私の場合は作業が遅いので徹夜が当たり前だ。
なのでもちろん自由時間などなく私の好きな乙女ゲームの恋愛ファンタジー学園はほとんどプレイできていない。
私の好きな恋愛ファンタジー学園は私が高校生の頃に初代が発売されて以降全7作の大型シリーズものとなっている。
乙女ゲームにここまでの続編が出ることはないためゲーム業界の七不思議として世間的にはある意味有名なものとなっている。
恋愛ファンタジー学園はどの作品も大体同じようなストーリーでありキャラデザが違うくらいしか一般人には区別できない。
私はこの恋愛ファンタジー学園シリーズの中でも初代が1番好きだ。
だからこそこの作品は全ルート攻略したのはもちろんサブイベントも全て攻略した。
私は初代恋愛ファンタジー学園の猛者なのである。
この日もいつもの調子で徹夜だ。
毎日何もなしで徹夜するのは流石に徹夜の達人の私でも難しいのでエナジードリンクを飲むようにしている。
最近は飲み過ぎなのか効果が薄くなっている。
なので最近は多めになってしまっている。
そんな調子でいつもの相棒のエナジードリンクを飲むことにしたのだが今日はいつもよりも一段と眠気が差してきていたので今までも経験がしたことのない20本というとんでもないほどの量を飲んでいた。
だがそんなに飲んだら体が持つわけもなく真夜中に会社で1人、倒れた。
カフェインの取り過ぎによる中毒死のようだ。
最後がカフェインにより死というのはかなり屈辱的だが地獄から解放されたと考えると悪くない。
そうして私の人生は一時的に幕を閉じた。
目に太陽の眩しさが伝わる。
目を開けてみるとそこはベットの上だ。
あの夜死んでなくて記憶がないうちに家に帰ったのだろうか。
いや家にいくら帰っていないとはいえ流石に家の内装ぐらいは覚えている。
脳みそはあの夜のことを必死に思い出そうとしていた。
でもよく考えたらおかしいような気がする。
まず昨日の夜会社で倒れていたとするとまず会社で寝ているはずだ。
だが会社にベットなどない。
誰かがベットの上に移動させてくれたということも考えられるがそもそも徹夜していたのは私だけで他の社員はみんな家に帰っていた。
つまり辻褄が合わないわけだが。
ていうかそもそもここどこだ。
場所確認のため窓を見てみたら驚きの光景が広がっていた。
そう中世ヨーロッパのような風景が広がっていたのだ。
どうやらここは日本の可能性は低そうだ。
ではどこの国だろうと窓の外の風景をよくみてみる。
よくみているうちに初代恋愛ファンタジー学園の悪役令嬢のミリーナの家の近くに似ている。
周りの家の配置から木の並びまでがほとんどいやまったく同じだ。
まさか異世界転生なんて現実にはないし夢だよな。
そう思っていたら誰かがドアをノックして「ミリーナ様、朝食ができています。」といかにも使用人感溢れる声で呼ばれた。
どうやら日本国在住の山田美里はあの夜カフェイン中毒が原因として死亡したのち恋愛ファンタジー学園の悪役令嬢のミリーナに転生をしてしまったようだ。
こんな非現実的なことが起こってしまった。
これもは神のいたずらなのか。
今より12年前の時に初代恋愛ファンタジー学園は発売された。
当時高校生だった私は予約してこのゲームを買った記憶がある。
この乙女ゲームは中世ヨーロッパの学園とファンタジーを組み合わせたものであった。
ゲームの内容はというと魔力に才能があり特別入学を許された主人公のコレットはこの国最高峰の学園に通うこととなる。
この学園は基本貴族や王族が通う学校なので上下関係が強く身分の低いものはいじめられるのが当たり前だった。
もちろんミリーナもいじめられた。
特に第1皇子の婚約者であった悪役令嬢ミリーナのいじめは酷くていじめの代表例はもちろん池に落としたりコレットの体に傷をつけたりということまでしていた。
そんな心身疲れていたのでコレットはもう耐えられなくなり人気の少ない旧校舎で彼女は自殺をしようとした。
ただいつもこの旧校舎で読書をしていた第1皇子のアルスによって自殺を止められる。
この出会いをもとにコレットはその後合計7人の攻略対象と恋をしていくというものだ。
また悪役令嬢ミリーナはいじめを止めることはなくて最後は婚約破棄されてしまう。
その後のミリーナはどのルートでも処刑されてしまうというものだ。
この恋愛ファンタジー学園はなかなかのヒットをあげる。
その後世界線は繋がっていないものの続編がたくさん出て計7作品の大作シリーズとなる。
この作品数は乙女ゲームでは異例でありこのゲームを超える乙女ゲームはいまだに出ていない。
そう今私は大作シリーズの初代悪役令嬢のミリーナに転生しているのだ。
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