恋愛偏差値U15~俺様は僕を好きで仕方ない

出会い(高校時代)
皇 陽太
皇 陽太

美術の授業

公開日時: 2023年2月8日(水) 00:45
文字数:1,172

美術の授業は美術室で行われる。

机は作業台のような作りで数人で両側に並ぶタイプ。座席は出席番号順なのだが、僕の背中合わせで真後ろの席がアイツだった。


真後ろということは、黒板に立つ先生の方を向いている間は真横だし、授業中も真後ろなだけにちょっかいなんてレベルでは済まない。



入学から大して日も経ってないのに、アイツは「ねぇ、学級委員~」とか「ねぇ、女子~」とか「ねぇ、バカ~」とか呼んでくる。名前で呼ばれるということが一切ない。


下らないことを聞かれたり、身体をゆすられたり、妨害以外の何者でもなかった。



美術の授業が4回目くらいの頃。

左肩をトントンと叩かれ、左を向くと指があって頬に刺さるという学習能力は備わっていた僕は「何?」と右を向いた。



がしかし、右にも指があり、まんまと頬に指がめり込んだ。そう、コイツは両方に指を構えていたのだ。



コイツはただ呼んで、ただ頬に指をめり込ませたかっただけだった。「引っ掛かってんの、だせぇ~」と笑い、達成感を得る。


すかさず僕の右隣の子が言った。

「君たちさぁ、本当に仲が良いけどどういう関係なの?」



...へ?仲が良い?何故?こんな一方的なやり取りなのに、どこをどう見たらそういう風に見えんの??仲が良さそうとか冗談笑える、マジやめろ




「あのね、これは仲が良いとかじゃなくてさ...コイツが一方的に」



と言いかけた瞬間、おぞましい発言を耳にする。





「は?お前知らねぇの?俺たち付き合ってるんだぜ?」





「え、そうなの?道理で仲良いわけだ。で、どっちが彼女?」

「コイツが彼女に決まってんだろ。コイツ、俺のこと大好きだからさぁ~」



...この場で喋れないくらいボコボコにしてやろうか、このクソ野郎



そう思いながらも、どこかドキドキしてしまっている自分がいた。「付き合ってる?」「彼女?」「大好き??」何をどうしたらそういう結論に至るのか全く理解が出来ず、ただ人間というものは理解不能に陥るとどうやらドキドキしてしまう生き物のようだ。



悪いが僕にもタイプというものがある。ちっちゃくてかわいいコウヘイみたいなのも好きだし、サラサラヘアの大野くんみたいな色黒イケメンも好きだし、何なら他にもタイプな生徒はいくらでもいた。


コイツの顔はよく見るとカッコいいのかも知れないが、初対面の出来事が第一印象になりすぎていて、タイプとか男とかそういう次元で考えることの出来ない相手だった。



「付き合う」が何をするのかも知らないし、そもそも告白とか意思確認とかそういうものを踏まえてするのが「付き合う」なんじゃないのか


冗談で言っても構わないが、ちょっと冗談にしては飛躍しすぎなのではないか


え、もしかしてそれって願望として発言してるってことなのか?


授業が終わってからというもの、その日は終始そのことばかりを考えてしまって、僕の頭の中は完全にキャパオーバーだった。

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