「よーし、着いたぜ。ここが旧校舎だ。」
修羅が古びた建物を指で示す。
修羅が示した建物は外観からもかなり年期が建っているのが確認できる。建物は5階建てで、所々窓ガラスが割れており、壁には穴も空いている。扉は恐らく鉄で出来ていたのであろう。すっかり色は錆びて赤褐色に染まっていた。
「いやー、相変わらず見た目は雰囲気凄いよねー。竜胆君、中入る前に言っておくけど床腐ってるところあるから気を付けてね!」
真奈が麟に伝え、それに頷きを返す。
「よっしゃぁ!さっさと行くぜ!」
「修羅、何かあったらどうする?少しは考えろ!相変わらずお前は落ち着きがないのか!?少しは落ちいてだなぁ..... 」
「ったく。おめぇは考えすぎなんだよ。いいか開けるぜ」
修羅が扉を開けると扉はギィーっと音を立て開かれる。
中は薄暗く修羅に続いて入ると床が軋む音を立てた。
「桜、大丈夫?足元気を付けなよ。」
「ふふ。ありがとう。真奈も気を付けてね。」
「さーて、どこから行くか?やっぱり王道のトイレの花子さんか?」
「トイレの花子さん?」
麟が修羅に聞き返すと修羅はこの学園の旧校舎には七不思議が存在して、その一つがトイレの花子さんだと言うことを麟に教えた。
「へぇー!今どき七不思議なんて珍しいね。」
「だろぉ。それ以外にも実はこの旧校舎には隠れた地下室があるとかも聞いたことあるぜ。」
「あっ!それ僕も聞いたことある!!なんか隠れた通路があるらしいね。」
「そうなの?私は聞いたことなかったわ。加勢神君は知ってた?」
「いや、俺も初めて聞いたな。」
「なら、俺らでその地下室見つけようぜ!麟もそれでいいか?」
「誰も見つけたことないのを見つけられたら面白そうだね。」
「よっしゃぁ。なら決まりだな。とりあえず適当に1階を探し回るか。」
「そうだね。それじゃあ、みんなでバラバラに探す?」
「いや、ここは固まった方がいいだろう。何かあったらどうする?」
「えぇ。私も固まった方がいいと思うわ。」
「それもそうだな。祐介の意見ってのが気に入らねぇが仕方ねぇ。」
そうして5人は全員で1階を調べ始めた。
しばらくして、1階にある科学準備室を調べていると祐介が大きな声をだした。
「おーい!他の棚はしっかりと固定されているのにここだけ動かせそうだ。修羅、竜胆手伝ってくれないか?」
「まじか!?祐介やるじゃねぇか。ちょっと待ってろ。麟、行くぞ!」
「うん。」
そして、男3人がかりで棚を動かす。すると棚の後ろに小さな窪みを発見した。
「3人ともありがとうね。」
「3人ともお疲れ様!何かあったー?」
「何か窪みがあるみたいだな。っておい、修羅何をしようとしてんだ。」
「何って押してみるんだよ。」
修羅がそう言うと祐介が止めようとしたのも一瞬で窪みに指を差し込んだ。
次の瞬間ズズンと大きな音を立て、その壁は倒れその先には下に向かう大きな階段があった。
「おぉ!!この先が噂の地下室か?たぶん見つけたの俺たちが初めてだよな!?麟、行くぞ!!」
そう言うと修羅は一目散に階段を下りていく。
「おい、修羅待て!!何かあったらどうすんだ!?」
「ちょ、ちょっと待ちなよ!!」
「綺堂君、怪我したら大変よ。」
口々にいいながら四人も後に続く。
「な、なんだこりゃあ?」
修羅が声をあげた先にあるのは石で出来た大きな社だった。
「これは、社か?なんで旧校舎の地下に?」
「凄いわね。全部石で出来てるわよ。」
「桜、感心するとこそこなの?」
「ねぇ、みんな何か聞こえない?」
麟がそう言うと突然辺りをつんざくような金切音をが響き渡る。
「くそっ......なんだこれ?」
「頭が......割れそうだ。」
「さ...桜......大丈夫?」
「ま...真奈こそ大丈夫?」
「体が......熱い......」
約5分程だろうか、5人を苦しめる音は続き、不意に音が止まる。
「終わった......のか......」
「どうやら......終わった......みたいだな。」
修羅と祐介が安堵したのもつかの間真奈の声が空間を裂く。
「ちょ、ちょっとあれ何!?」
真奈の声の先を見るとそこには開け放たれた社とその前にいる。四足歩行の獣のようなものがいた。しかし、普通の獣と違いそれには顔はなくただ黒い塊が獣ような形を作っているに過ぎなかった。
そして、その黒い獣は低く、唸ると5人目掛けて飛びかかる。
「全員横に飛べっ!!」
修羅の声で全員が横によける。息を整え獣を見るとさっきまで5人がいた空間の床は大きく窪みその上には黒い獣がいた。
「ど、どうしよう!?階段を塞がれちゃったよ!?」
「くそっ。どうすれば......」
「全員あいつから目を離すなよ。」
「ね、ねぇ、みんな後ろの社からまた出てきたわ。」
桜の言葉通り後ろからももう一体の獣が現れた。
修羅、祐介、真奈、桜の四人が獣を見ているなか麟は1人突如体に雷を纏い社の前にいる獣に拳を叩きつける。
「なるほどね。こういうことか。」
「お、おい!?麟、お前それは?」
「さっきの音の時、声が聞こえたんだ。汝我が写し身として選ばれたってね。それで、あの獣が出てきたときに突然この力の使い方が分かったんだ。皆は聞こえなかった?」
麟のその一言で四人はさっきの音を思い出す。
そして......その時が訪れる。
「汝は我が怒りに選ばれた......か。」
修羅は自分の持っていた竹刀を取り出す。すると竹刀に紅蓮の炎が宿る。
「汝は我が巫女の資格あり......そうなのね。」
桜の周りに花びらが舞い落ち、その花びらに触れた床が修復される。
「汝は我が忠臣導きたまえ......ね。」
真奈の手には細い棒の様なものが握られ、周りには8匹の光る犬らしきものが現れる。
「汝は我が加護を授ける......なるほどな。」
祐介は部活の時に使っている槍がいつのまにか持ち、腕には風が絡み付く。
「「「「これなら......戦える!」」」」
5人が獣を見据える。獣は上を向き咆哮をあげると社から更に10体程の獣が現れる。
そして運命の歯車が回り始める。
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