2000年 都内某所
満月に照らされた古びた神社の境内に豪華な着物を着崩した1人の女とそれに対峙する数人の人影があった。
「おのれ!!この死に損ない共め!あと少しというところで妾の邪魔をするというのか!!」
女が人影に向かって叫ぶ。
そしてその叫び声と共に人影に向かって螺旋状の炎を放つ
一番前にいる人影を庇うように黒く長い髪の女が両手を前にかざし後列から現れる。
そのかざされた両手の前に薄く青い障壁が現れ炎を受け止める。
炎を必死に受け止める女の肩に庇われた男が手を乗せ、何事が呟くと女は笑顔を浮かべながら頷く。
そして男は後ろにいた人影に向かって大きく叫ぶ。
「お前たち!あとは俺と瞳でやる。だからあいつのことは頼んだ!!」
その言葉を聞いた人影から1人飛び出そうとするものの、他の者に取り押さえられそのまま瞳と呼ばれた女と彼女の肩に手を乗せた男を残し、他の人影は闇夜へと消えていった。
「ほーう。気でも狂ったのかえ。妾相手にお主ら二人だけでどうするというのだ!!このままお主らを殺し妾は本懐を遂げさせて貰うぞ。」
そう言うと先ほどから炎を放っていた女は獰猛な笑みを浮かべ炎をさらに強めた。
「いーや、そうはさせねぇ。お前はここでもう一度眠って貰うぞ。そうしないとあいつが、息子が、麟が平和に暮らせないからな!!」
そう言うと男は女の放つ炎に向けて拳を振り下ろす。
男の拳を受けた炎は霧散し、闇の中へと吸い込まれていく。
そして男は拳を構え、女のもとへと走り出す。
その後ろで瞳と呼ばれる女は指で空中に指で何かを描き始める。
着物の女は自分に向かってくる男に手を向け、再び炎を放つ。
今度は男を囲むように周囲からも炎が放たれる。
それらを避け、時には拳で炎を殴り着物の女のもとたどり着くと男は女の腕を掴み真言を呟く。
「オンバザラタマラキリクソワカ」
その真言を聞いた着物の女は表情を変える。
「お主!!その真言は .......まさか!!」
「こいつはお前に効くだろう。今だ!!瞳!!」
「はい!!お願い。私の全てをあげます!!明王封魔陣」
「おのれーーー!!. ....あぁ、今生もまた果たせぬのか......口惜しや......」
瞳がそう言うと辺りは眩い程の光に包まれその光は着物の女へと収束し......そして満月に照らされた境内は静けさを取り戻した。
2018年4月 陽神学園3-A
「ねぇねぇ聞いた?今日は転校生が来るらしいよ。」
教室の扉をガラッと開けると茶色がかった髪を短く切った少女が教室の隅で静かに本を読む美しい少女へと駆け寄り話す。
「もう。真奈ったら、少しは落ち着ついたら。転んだら危ないわよ」
「あはは。ごめんごめん。次からは気を付けるよ。それより桜、転校生の話聞いた?」
真奈と呼ばれた少女は桜と呼ばれた少女の机に腰かけると再び話かける。
「えぇ。さっきからみんな言ってるわよね。」
「そうなんだー。でさーその転校生はどうやらうちのクラスに来るらしいよ。」
「そうなのね。」
「うん。どんな人なんだろうねー。カッコいいかなー?」
「さぁ?それより、そろそろ先生来るから席に戻ったら。」
「それもそうだねー。じゃあまた後でねー。」
「えぇ。また後で。」
そういうと真奈は桜の斜め2つ先の席へと戻った。
真奈が席へと戻ってすぐに教室のドアが開き白衣を着た眼鏡をかけ、無精髭をはやした男が教室へと入ってくる。
「よーし、お前ら席に座ってるな。教室に入る前から聞こえていたが、知っての通りこのクラスに転校生がやってくる。全員仲良くするように。おい、転校生入ってこい。」
その声から少ししてガラガラっと教室のドアが開けられ黒い髪を襟元までかからないくらいに切った少年が中に入ってくる。
そして彼は黒板に名前を書くと口を開く。
「今日から転校してきました。竜胆麟です。」
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