かみてんせい。

挿絵いっぱいな物語。
あゆみのり
あゆみのり

第四十九話 高速移動。

公開日時: 2020年11月13日(金) 06:40
文字数:2,547

 今私は、爆速で水上を移動している。

 海の波などものともせず、ただまっすぐ。

 

 風の大陸を目指し「水の化身」と「ユニコーン」二人の水適正最強生物に抱えられながら…。 



ちょ…ちょっと待って!休憩!そろそろ休憩はさもう!

「わらわはまだまだ大丈夫じゃよ?」

「ユニも!」

 騎馬きば役の二人は元気いっぱい、でも上の私が疲労困憊ひろうこんぱい


「私が…もたないです…!」

「ナナぽんは、乗ってるだけユニなのに?」

 アルケー湖をでて川を下り、海に出てタチの元へと向かう道中。

 今のところほぼ水上移動なので、確かに私は運ばれてるだけなんだけど…。


「風圧とかっ…!水飛沫とかっ…!もの凄いんだよ…!!」

 一応ズーミちゃんが、防御用で水のヴェールを張ってくれている。

 しかし、速度が速度。

 海にでてからは特に手加減無しで、水をえぐるように進み、通り抜けた後は、身長の2倍以上の水柱が立ち上る。

 そんな速さで爆進していると、水のヴェールを突き抜けて水飛沫が私にぶつかるのだ。

 

「仕方あるまい。ちと休むか。」

 ズーミちゃんが手を振ると、水のヴェールが形を変えてぷよぷよの絨毯状《じゅうたんじょう》に足元に広がった。


「この上で休憩するがよい。」

「ふぃ~。…ありがとうズーミちゃん。」

 水の絨毯じゅうたんに体を投げると、私の体重に合わせ波を打つ。

 ひんやりとした感触と、ぷにぷにの触感が心地いい。

 でっかいズーミちゃんに寝転がっている感覚だ。


「息抜きするなら、ゆったりした服に着替えるユニよ!」

「いいけど…体が強張こわばって、動かないから少し待って…。」

 ユニちゃんとの約束は、一日一回だったはずなのに、何かと理由をつけて着せ替えさせようとしてくる。


 実害もないし、色んなお洋服を着るのも楽しいので好きにさせているが、今は着替える体力すらない。

 ずっと同じ体勢で力を入れていたから、体がバキバキに固まっている。


「良いユニ!良いユニ!ここはズーぽんが、お着替えさせてあげるユニ!」

 うきうきピョンピョン跳ねるユニちゃんに合わせて、水の絨毯がぶにょぶにょ動き、寝転がってる私の体も揺れる。


ゴロン。ゴロン。

 なんだろう体に伝わる負荷が、とっても心地よい。


なんでわらわが面倒を押し付けられるのじゃ!?着せ替えたいのはユニなんじゃから、お主がすればいいじゃろう!

「ユニがやるのもご褒美だけど~。ズーぽんがナナぽん着替えさせたほうが、いっぱい嬉しいユニ!」

「しらんしらん。お主の趣味に付き合う義理は、わらわに無い!」

「うぅ~~体がカチコチで動かない…。この服体に張り付いて気持ち悪いぃ~。」


 ユニちゃんが水上移動用にと私に着せてくれた服は、ゴムのような布のような不思議な素材の物で、体部分を全部覆う形をしていて、おへその部分だけ私の事情でくりぬいてもらっている。


 前世で着ていた、インナーの薄手版という感じだ。同じ物の色違いを並べられ「どれが良いユニ?」と言われ、白を選んだ。

 ユニちゃんいわく、基本は紺色らしい。


「ズーぽん!ナナぽんが苦しんでるユニ!お着替えさせて、体もほぐしてあげるユニよ!」

「ごめん…ちょっとしてもらえると嬉しいかも…。」

 ユニちゃんの欲望と、私の気だるさが調和した。

 しかし…ユニちゃんはタチのことがとっても嫌いだけど、共に旅をしている私の感覚としては「ちょっと綺麗なタチ」

 

 似てる部分が多いと思うんだけどな…。仲良くできればいいんだけど…むしろだから無理なのかな?

 

 決定的に違うのは「参加」か「見学」かぐらいなもので。

 言ったら怒られるだろうけど。


えぇ~い!面倒じゃ!脱がせばいいのじゃろう!!


しゅるしゅる!

 ズーミちゃんの指が伸び、ぴっちり貼り付いた私と服の隙間に入り込む。

 そのまま、すぽん。と器用に服を抜き取ってくれる。


「らく~…便利~…。」

 うつ伏せに倒れたまま、裸でぐったりの私。

 恥ずかしさはあるけど、体を休めたとたん疲れが一気に体を覆い、動く気になれない。


 まぁ、周りは海だし、いるのはズーミちゃんとユニちゃんだけだし。

 襲われる心配もない。

 

 恥じらいもなくなっちゃったけど。


「むむむ!もっとゆっくりじっくり脱がして欲しかったユニだけど…着せる方で味わうユニ!」

 少し残念そうに唇をかんでから、ユニちゃんは角を輝かせ、新しい服をズーミちゃんに渡す。

 白くてふわふわでひらひらのカワイイ奴を。


 ユニちゃんの服の種類は様々だけど、今回みたいな淡くて可愛らしいお洋服を出すことが多い。

 これが子供服を最上位の「神聖」に位置付ける、ユニちゃんの好みらしい。


「ほら。着せるぞナナ。」

「まかせた~…。」

 しゅるしゅるのびたズーミちゃんの両腕が、私に巻き付き体を宙に浮かし、腕を上げ、足を広げ、次々着衣を進めてくれる。

「あぁ~。もう毎日お着替えさせて欲しい…。」

「なにいっとるんじゃ怠け者め、今日だけ特別じゃ。」

「うぅ…。もっと抱きしめて、片足ずつあんよを上げたりして欲しかったユニ…。」

お主が自分でやれ!!


 なんだかんだ言いながらも、ズーミちゃんは私の体調を心配し、結局マッサージまでしてくれた。

 ありがとうママ。実際母親がいたらこんな感じなんだろうか?

 

 ママ…というとタチママを思い起こす。

 全然こんな感じじゃなかったな…。タチママが私のママだったら、きっと今頃蹴り殺されてる。


 とっても失礼な妄想だけど。

 


 小一時間お休みした後。

 「もう大丈夫出発しよう」と私は言ったが、ズーミちゃんから「大事を取ろう」とストップがかかり、今日の移動はここまでで。

 海上で夜を迎える。


「夜は寝間着に着替えるユニ!今度こそゆっくりじっくり恋文を開くように丁寧に脱がすユニ!」

「やらんよ!」

「私は歓迎だよ?」

「なんで2対1になるんじゃ!?肌を触らせるのじゃぞ!?少しは恥ずかしがれ!」

 完全に横着おうちゃくを覚えた私が、ユニちゃんの提案に乗っかる。

 

「だって…ズーミちゃんならいいかなって。私のママだし。」

だれがママじゃ!!!っというかお手伝いさんの扱いじゃろう!!

「その関係も素敵ユニね!」


 今度はズル(?)できないように、ボタンの多い服を用意したユニちゃん。

 彼女の望み通り、一つ一つ丁寧にボタンをとめて、服を着替えさせてくれるズーミちゃん。

 お着替え中に、既に口を開けて寝ている私。

 


 こんな感じの水上移動を数日続けたら。

 あっという間に風の大陸にたどり着いた。

 

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