かみてんせい。

挿絵いっぱいな物語。
あゆみのり
あゆみのり

第六話 湖に、着いた。

公開日時: 2020年9月2日(水) 00:46
文字数:1,942

 この地上には四つの大陸がある。

 それぞれを地水火風の化身たちがひとつずつ受け持っていて、各々の特性に合わせた発展をしている。


 たとえば、今いる水の大陸は四大陸で一番小さい。

 だが水の化身が住まうこの地は、水源が多く有数の川や湖を持ち、多様な水生生物が存在する。

 海流も穏やかで、大きな港をいくつももち、他の地の国に比べ、水産業が豊かで盛んだ。


 目の前に広がるアルケー湖もその一つ。水の大陸一大きな湖だ。

 もちろん、人々もたくさん集まるし、露店や屋台、見世物小屋やエッチなお店まで雑然と広がり賑わっている。


「神殺しの剣…この地の何処かにと思っていたのだが…。」

 前を歩いていたタチが、ついに口にしてしまう。

「何処かにっていうか…。」


 遠目に見ている分には、お祭り会場のようでわくわくしたアルケー湖周辺。

 近づけば近づくほど、人々の熱気と賑わいにあてられ、どうにか一夜をしのいだ私も大興奮!…とはいかなかった。


 確かに、沢山人もいるしお店もある。それはいい。

 水の大陸らしく青系統の、のれんや、のぼりが多々並ぶのも統一感があって素敵だ。

 だが、そこに書かれている文字はどうだろう?


 神殺し饅頭まんじゅう・神殺しの魚焼き・神殺しのかき氷・神殺し研磨店…果ては、必殺神殺しの店(ハート)などという如何わしいお店まで「神殺し」である。


「絶対ここに、剣あるよね…。」

 とりあえず「一店舗一神殺し」状態に唖然あぜんとする他ない。


 情報収集や、疲れた体の休息をという名目で、ひとまずアルケー湖に足を運んだらこれである。

 私の当初の目的…甘くてもちもちのお菓子を食べつつ、時間稼ぎをするつもりだったのに…。


「どうやら湖の中にあるようだな」

 水中に眠る伝説。という名のお店を指さすタチ。


 白いお酒の中に、赤い縦長の木の実が一つはいっている飲み物のようだ。

 お店にでかでかと貼り出されている商品図解の横、湖の底に剣が突き刺さっている絵が描かれている。


 今回、とことんついてない気がする…無能力無才能で生まれたことから始まり、私を殺したい人間と出会って、

その手助けをする形になるとは。なぜ…どうして…。


あぁーーー!!

 全身を覆い隠した服装の子供?が深くかぶった頭巾ずきんから私たちを見て大声を出す。


 暖かなこの時期に、不自然な恰好…見るからに怪しい。

 ちびっこはズイズイ歩いて寄ってきた。手には串にささった透明の丸が六つ連なる食べ物を持って…。



(まさか…!あのキラキラしてもちもちしてそうで美味しそうなモノは…!)

 よくみると、手袋までして肌を一切出していない。

 しかも服は全部皮製みたい、熱くないのだろうか?


 そして、なにより。あのもちもちはきっと私が食べたかったお菓子に違いない…!


「やはり来たのう!」

「おぉ。スライムか。」

 タチの前にでで~んと立ち止まったちびっこ、頭巾ずきんの下に隠れていた水色の顔がチラリと見える。

 そう、水の化身ズーミだ。 なるほど、だから肌を隠していたのか…。


「スライム言うな!どうせこの湖に訪れるじゃろうと、待ち伏せておったのじゃ!さすがわらわ!」

「すごいな!よく加工されている皮の服だ。自作か?」

 私はズーミの持つお菓子に興味をもち、タチはズーミの服装に興味をもったようだ。殺されかけた相手より。

 

 だめかもしれない私たち二人は。


「褒めるところはそこでなはいわ!っというか普通の服じゃとすぐビチョビチョになるんじゃもん!」

 確かに、布とかだと水分凄く取られそうな体してるもんね…。じゃなくて、私も一言いうべきことがある。


「ズーミちゃん!なんかこう…剣を隠すとかできなかったの?完全に観光地になってるじゃない!」

 ここで、まずもちもちのお菓子の事を聞いてしまってはタチと同じ。それはとても残念な気持ちになるので、まずは神としてしかるべき質問をする。


 もちもちをどこで買ったのかは後で聞こう。


「じゃって…そもそも人が作ったものじゃし…。わらわが勝手に、名所にするな!とか地域の金回り良くするためにつかうなー!とか言えんし。」

 シュンと落ち込みつつも、割と地味めで全うな理由で返された…。


「じっさい経済潤っておるし…こんだけ大きくなってしまうと、今更口だせんじゃろ…?奴らにも生活があるわけじゃもん…。」

 「現実」という名の正論を次々畳みかけられると困ってしまう…。


「でもでも!神殺しだよ!?ズーミちゃん水の化身で神の使いでしょ!?」

「なんのあぶらで手入れをしてるんだ?植物か?動物か?」

 私とタチの質問攻めを受けるズーミ、わちゃわちゃと小うるさい3人組だが、誰もこちらを気にする様子はない。


 なにせ賑わう場所だ、あちらこちらで声があがる。浮かれた若者たちのじゃれ合いに、しつこい客引き、楽しそうな親子の笑い声…。

 そんな中とあれば、神様と人間皮フェチに責められる化身だって埋もれていくのである。


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