かみてんせい。

挿絵いっぱいな物語。
あゆみのり
あゆみのり

第三話 ぎゅっとね!

公開日時: 2020年9月1日(火) 14:50
更新日時: 2020年9月1日(火) 15:23
文字数:1,115

(私の眷属けんぞくが!私のために!私を殺そうとする女を倒そうとしている…!)


 ズーミの中にズップと入った両の手でギュッっと核にぎりこむ。


なっ!!



 私の突然の行動への驚き…というより、的確に急所をつかまれたことの方がびっくりだったろう、大きなお目目が見開かれている。


「タチさん倒してほしいとかっ…!そもそも頼んでないし!!」


 ズーミちゃんの中で、強く強く握りしめる。


「ひゃうぅう!」

 ビクンとズーミの体が波打ち、ぶるぶると震える。もどかしそうに、むずがゆそうに。


「にゃっ…!にゃぜ!わらわの…源のいちぉ…!」

「ホントごめん!ごめんね!」


ギュウウゥ。

 人間でいうと内臓を直接握られるようなモノだ…さぞ気色が悪い感覚だろう。


「やめっ!…ひゃうぅうぅ!」


ぼちゃ。ぼちゃ。

 ズーミの体が少しづつ崩れ落ち、タチを捕えていた大きな水の玉が地面に落ちる。


「殺しはしないから…!ごめんね!」


ぎゅうぅぅうう。

 もうちょっとだけダメージを与えておかないと、すぐ元気にもどってしまうだろうから…。


 可愛そうだけど…!


「ひゃうぅううぅうううぅうぅぅ!」

 ズーミは人型を形成していられなくなり、ぱちゃぱちゃと弾け小さな水たまりを作り出す。


べちゃ!

 水の玉の方が破裂し、タチが完全に開放された。


「タチさん…!」

 土砂降りの雨、それも粘度の高い水に打たれた直後のような、びちょびちょで濡れ崩れ落ちているタチを抱き上げる。

 だいぶ水を飲みこんでいたみたいで、げほげほと咳き込むタチさん。


「よかった…生きてた…」

「よく…やった…」

 安堵の一息をついた私を見上げ、濡れた顔を拭いながら微笑むタチ。

 意外と優しい笑顔である。弱っているからかもしれないけど。


「私の胸は…どうだ?」

「へ?」

 自分の左手を見てみると確かに、抱き上げるために使用したこの腕は、彼女の胸に埋もれていた。


「いや!これは完全に不可抗力です!!!」

 こっちが必至で頑張ったのに、どこに意識を割いているんだこの女!

 だってあんたでかいんだから!体を支えようとしたらそんなこともあるさ!


「照れるな。愛いやつだな…耳まで赤いぞ。」

「いいから!!逃げるよ!!」

 こいつ。助けなきゃよかった。ホントこいつ。


「どうせだ。楽しめ。」


 ホントコイツ!こいつ!

 恥ずかしさと腹立たしさで内臓と頬と耳を真っ赤になる。

 とはいえ、せっかく助けたこの女を見殺しにもできまい、タチに肩をかしすぐにこの場を離れよう。

 ズーミが元気を取り戻す前に。



* * *



 残された無数の水たまりの中の一つ。

 手のひらサイズに縮んたズーミは二人の背中を見送るしかなかった。


(あやつ何者じゃ…?なぜワラワが授かった源を…)

 敗北したことや取り逃がした悔しさより、不可思議な少女への疑問に思いを募らせていた。

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