「戦力分けが…おかしい!!」
ナビがお仕事を終え、みんなで食事をしながらこれからの話をしている最中ストレが抗議の声を上げた。
もっか対処すべきは風の大陸に現れた、二体のダッド。
タチが仕切った組み分けは…
A:タチ[神殺し]・私[神]・ズーミ[水の化身]・ナビ[風の化身]・ユニ[意地でもBに行かなかった]
B:ストレ[泣き虫一般人]・ポチ[心が折れたタチの犬]
「偏りがひどい!!」
ストレの悲鳴はもっともに聞こえる。いくらなんでも戦闘力に差が…。
「ダッドと接触すれば、私とナナが接触したことがイトラにも伝わる。つまりイトラが現れる。奴と戦いたいならお前もこちらに来い。ダッド一匹ならポチ一人でもどうにかなる。」
タチの見ていたのはダッドの次。光の化身イトラの存在。
確かに、ダッドを倒せばおしまい。という話じゃない。
タチが首をはねられてもトドメを刺されなかった理由も、私が今襲われてない理由もソコにある。
タチと私の合流。そして再び私の前で惨劇を見せる事…。
「合理ですね。移動を考えるとポチさんの馬と私の雲は必ず分けなければなりませんし。」
ナビがタチの班分けに同意をしめす。
ポチの馬は見たことがある。彼が指を鳴らすと雷が落ち、黒い馬が現れるのだ。
話の流れからすると、ナビの言う「雲」も移動手段なのだろう。
「ポチ貴様の力を私は知っている。殴り合った仲だ。貴様の弱さも味わった。抱いてやったからな。投げ捨てようとしたその命。私のタメに使ってこい。」
「わん!わん!」
「いい返事だ。帰ってきたら撫でてやろう。」
嬉しそうに傅くポチ君をみると、もうちょっとご褒美があっても良い気がする。
一人、ダッドに立ち向かうご褒美が撫でられるぐらいじゃ可哀想というか…。
私、常時たくさん撫でられてるし。
「うぅ…わかった!私はチビ様のタメにポチと共にダッドを討とう!」
反論の余地が消え、ストレも決意を固めた。
ごめん。ダッドに立ち向かうのは、ポチ君一人じゃなかった。
周りが濃すぎて、いつもストレちゃんの存在を忘れてしまう。
「えっと…私もご褒美上げた方が良いのかな?」
ストレちゃんが私のタメに戦ってくれるらしいので、神様よりも偉そうに振舞えるタチに、助言をもとめてみる。
「上に立つものとして当然だ。私の場合は肉体接触で思い知らせてやる。主従をな。」
「チビ様をお前と一緒にするな!…私はお褒めの言葉を頂ければそれで充分です。」
タチの前で伏せをしたポチに対抗して、私の前で膝をつくストレ。
「そんなコトでいいの?ちょっと申し訳ないな…あげれる物もないんだけど。」
「主に使える騎士とは、主人の言葉こそ誉《ほま》れなのです。」
元は国に仕える騎士だった彼女。今でもその在り方に尊厳《そんげん》を抱いているのがわかる。
しかし…。勝手に着いてきたのが始まりとは言え、私の方からすると、完全に巻き込んでしまった感があるのだけれど…。
少し嬉しそうに膝まづく彼女を見ていると、その心意気を無下にはできない。
「わかった。戻ってきたら沢山感謝の言葉を言うね!」
「ありがとうございます。」
膝をつき、槍を私に捧げ、頭をたれるストレ。
久しぶりのそれっぽいやり取りに、満足そうに立ちあがる。
その体にも、心にも、気力が溢れていた。
私が共に居る時は、泣き顔ばかりが似合う彼女だったが、騎士として振舞う姿も十分、様《さま》になっている。
「タチ!私はチビ様と貴様の関係を認めてないからな!!」
溢れた気力そのままに、ストレはタチの方へと向き直り、人指し指を「ビシ!」っとさす。
足元に立つ賛同者。ユニちゃんも、いつの間にか同じように指でさしてる。
「この私に言ってるのか?余計なお世話だとわかっているだろう。」
「チビ様の心配をしてるのだ!貴様の毒牙にかかり…蛇の道に…もう二度と主を失うわけにはいかない!それに一応女同士だろう!?」
「私が男なら祝福するのか?」
「…お前が男でも認めん!!とってつけた!」
私が居ない間も、二人は共にいたはずだけどお互いの溝は埋まっていないようで…。
むしろ私が合流したことで、再発したのかもしれない。
「素直で良いお前のそういう所が好きだ。文句があるなら、いくらでもかかってこい。負けたら支払いはしてもらうが。」
「やめろ!いやらしい事をするつもりだな!!」
ストレはしゃがみ込み、ユニちゃんと肩を組む。
良かったね。色んな所がいがみ合う (主にタチを中心にだけど)仲間内でも、新たな友情が目覚めたよ。
「でも、ストレが勝っても私タチから離れないよ?」
「チビさまぁああああああ!こいつ!こいつだけは考え直していただきませんか!あなた様は神様なんですよね!?こいつを人間代表にするには偏りすぎてます!」
「私は人に恋したわけじゃないから。」
まるで母親のように、私の今後を心配してくれるストレ。
ストレの言いたいこともなんとなくわかるんだけど、恋は惚れた奴の負け。
それでいうと私達はどっちが負けなんだろう?
「私の勝ちだ。」
「ぐぬぬぬぬ!」
すっごい勝ち誇った顔でストレとユニちゃんを見下すタチ。
うんうん。わかるよ。めっちゃくちゃ腹立つよね。
でもその顔ですら、私はずっと見ていたいんだ。
「私はお前たち全てが好きだぞ。みんなまとめて抱いてやりたい。ナナが許せばだがな。」
偉そうに、上から二人を抱きしめようとして猛烈な反発にあうタチ。
その反撃すら嬉しそうに味わっている。
どこまでも勝手で、どこまでも自由な存在タチ。
「彼女にも余裕が生まれたようですね。あなた様…ナナさんが居ない時はもっとピリピリしてたんですよ?それもモテる要因だったようですが。」
「…そうなんだ。」
ナビの言葉が私の心にしみる。
たぶんちょっと優越感。神としてはダメな感情の抱きな気もするが、感じたものはしょうがない。
「私はナナが好きなんだ!!この私を止めれるか!!今ならこの世界のすべてを愛せるぞ!!私は!!」
「わん!わん!」
「私達は拒否する!!調子にのるな!!!」
これから起こるダッド・イトラとの戦闘を前に、変なスイッチが入って燃え上がるタチ。
火が燃え移り吠えるポチ。
あらがうストレとユニちゃん。
お酒も入ってないのに騒がしい机だ。
そんな騒がしさを横目に、私はズーミちゃんとナビと食後のお茶をすする。
タチガールの私としては、もうとりあえずタチの一人勝ちでいいんじゃないかな?と思ってしまう。
神としてダメなのはわかってるよ?
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