かみてんせい。

挿絵いっぱいな物語。
あゆみのり
あゆみのり

第五十一話 タチガール。

公開日時: 2020年11月28日(土) 00:47
文字数:2,527

 村に着いたらまず、お店が閉まる前に買い出しだ。

 食料に、油、手ぬぐい、それとクシも。


 買い物しながらお店の人に話も聞いたけど、ウワサを耳にしていても、今の居場所まで知ってる人がいない。

 消耗品の補充も終わったし、本格的な聞き込みをしたい所だが…。


 人の集まる場所といえば、やっぱり酒場。

 足を運びたいけど、今の私だと店の前をウロついてるだけで叱られそうだ。

 どうしたものかと、切り株に腰を掛け悩んでいたら声をかけられた。


「見ない顔だね?親はどうしたんだい、迷子かい?」

 前を通りかかったおばーちゃんが、私の横に腰かけ座り込む。

 どこの村でも一人はいる、気さくに声をかけてくれる優しいご年配みたい。


「えっとね、人を探してるんですけど…「神抱きのタチ」の噂ってしってますか?」

「あぁ、あの卑猥ひわいな話かい。あんたみたいなチビ助が耳にするのはまだまだ早いよ。」

「えっと…えっちな話が聞きたいんじゃなくて、居場所がしりたいんです。」

「そんな事いって…しょうがないねぇ~。そういうのに興味をもつ年ごろかい?ルーベン!ルーベン!」

  性に関心を持つどうしようもないエロチビのため、向かいで野良仕事をしていたお兄さんにおばーちゃんが声をかける。


「なんだよばーちゃん!今忙しいんだよ!」

「いいからおいで!このチビ助が聞きたいことがあるんだってよ!あんた直接見たことあるんだろ?」

「またその話かよ!エロばーさんが!」

 ヒッヒッヒと笑うおばーちゃんは、嬉しそうに私の顔を見た。

 孫に叱られたのが嬉しいのだろうか、元気なおばーちゃんである。


「それで?なんの用だい、おじょうちゃん。」

「神抱きの話が聞きたいんだとさ!」

 私が口を開くよりさきに、返事をするおばーちゃん。

 さてはおばーちゃん。私をだしに孫と話をしたいだけだな…!

 

 可愛いおばーちゃんである。


「こんな子供に聞かせる話じゃねーよ。ド下ネタだぞ。」

「あの…エッチな話が聞きたいんじゃなくて、その人の居場所が――」

「私だって若い頃はね、沢山もてたんだよ?フィーンに船を持つ船長に――」

「ばーさんは夕食の支度だろ!話がややこしくなるから、早く家にけーれ!」

 関係のない長話が始まりそうになったその時、お兄さんがばーちゃんの背中を押し、すぐ横にある家の方へと追いやる。

 どうやらここがお家だったらしい。


「なんでだい!私がこの子を見つけたんだよ?」

「いいから、帰れって。日が暮れちまうよ。」

「チビ助も一緒に食べるかい?今夜は――。」

「ばーさん!」

「いっひっひ。意地悪な孫だろ?」

 2人のやり取りを縮こまって見ていた私に、同意をもとめるおばーちゃん。

 眉間にしわを寄せてはいるが、本気じゃない。あきらかにおばーちゃんは楽しんでいた。


「えっと…仲良しさんでいいですね。」

「そんなことないんだよ、この前だって――」

「あぁー!はいはい!こんな子供にまで気を遣わせるんじゃねーよ!」

 もう無理やり扉の前までおばーちゃんを押すお兄さん、若い力によって元気なおばーちゃんは家にしまわれた。

 負けないぐらいチャーミングでお元気だったけど。


「悪かったな。…それで「神抱きのタチ」の居場所が知りたいって?」

「はい!知ってるんですか?」

 お兄さんの腕力のおかげで、日が暮れる前に情報が聞けそうだ。

 

「…まさか、じょーちゃんもタチガールか?」

「…たちがーる???」 

 また聞き覚えの無い、通り名である。

 彼女がなにかやらかしたのだろうか?でもその場合私に確認するのはおかしいか…。


「なんでも、最愛の神様が死んだんだってよ。まぁ。神様っても「想い人」って事だろうが。んでもって、また生まれ変わってくるはずだから、戻ってくるのを待ってるらしいんだが…。」

 うん。間違ってない情報だ。水の大陸で流れていた盛り盛りの噂話より正しい。

 神様が本当に神様を指すとは誰も思ってないようだけど。


「直接聞いたんですか?」

「あぁ、一ヶ月ほど前になる。毛皮を売るためにクリーンの街に向かう途中、でっけー土の魔物と戦ってるのを見た。」

 土の魔物…たぶんダッドだ!風の大陸で暴れまわってるとズーミちゃんが言っていた。


「つえーこと、つえーこと。人間離れした動きで切り伏せてたさ。その後、街の酒場で見かけて酒を奢ったんだよ。器量も良いし、酒も強かった…。」

「その街どこにありますか!?」

 嬉しい。少なくとも一ヶ月には、その街に元気に存在してくれている。

 そう証明してくれる人が目の前に存在する。


「やっぱり…こんな小さな子までタチガールかよ…。立派な女だが…チビには良くないだろう…。」

「あの?さっきから言ってる、タチガールってなんなんですか?」

「言っただろう?強くて、顔が良い…。ようはモテるんだよ。」

「…?」

「私が転生した神だよ!って自称する女が、わんさか神抱きに寄ってんだ。あんだけもてりゃー気持ちがいいだろうな。」

「!!ちょっと私のタチなのに――。」


 タチガールの言葉の意味を理解して、つい声を上げてしまった私を冷ややかな目で見るお兄さん。


 違うんです。本当に本物は私なんです。

 今寄っているニセタチガールと違って、本当に本当のタチと愛し合った存在…それが私!


 でもそれってタチガール呼びされても仕方がない気もするけど。


「まぁ好きにするといいさ、今頃はウィンボスティーに居るんじゃないか?もっと神の可愛らしさを広めたいって言ってたからな。ドエロイ話を酒のつまみにしながら。」

「ありがとうございます…!おばーさんにもお礼言っておいてください!」

「あいよ。入れ込むのもほどほどにな。若い時ぐらい変な恋に燃えるのもわるかね~ってのは。ばーさんの言葉だ。」

「本当にありがとう!」


 目指す場所に目星がついた。

 ウィンボスティー。聞き覚えがある。確かストレちゃんの元いた国の王都だ。

 タチが王子様に「おいた」した場所…。


 そんな所いて大丈夫だろうか?

 北の大陸で一番大きな国の中心地、確かに人は多いし噂も広めやすそうだけど…。

 

 まぁ。タチが昔した事を気にして効果的な手段を避けるかと言えば…避ける気がしない。 


(行こう…ウィンボスティーに。)

 まだ日は暮れてないが、駆け足でズーミちゃんとユニちゃんの所に戻る。

 少しでも早くタチの元にたどり付くために。


 だって私。タチガールだもん。



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