かみてんせい。

挿絵いっぱいな物語。
あゆみのり
あゆみのり

第四十七話 実質泣いてない。

公開日時: 2020年11月1日(日) 11:17
更新日時: 2020年11月12日(木) 09:05
文字数:1,535

 私が崩れ落ちてから2か月経ってる…?

 私が目覚めたのは3日前なのに?


 でも確かに変化が多すぎる。

 タチとイトラが争って、ダッドとナビ…土と風が参戦した。

 たぶんここで一区切り。


 次に風の大陸各地にに現れたダッドを倒しながら、猥談を広め――。

 どう考えても3日じゃ収まらない。


 ユニちゃんがくれた、、ミルクかき氷をパクパク無心で口に運びながら出した結論。


 やっぱり。タチと別れたあの日から2か月経ってる。


「わらわの耳にしたウワサ通りなら、ナビ様はタチ側についたのじゃろう。わらわの時と同じじゃ。自らの地で好き勝手されとる。ダッドはイトラ様側じゃろうな。前から繋がっておった動きをしておる…。」

 同じくパクパク頬張るズーミちゃん。

 とっても美味しそうに食べてる姿が、ミルク氷より私を癒してくれる。


「神犯しの女と黒衣の駄犬…あとなんじゃったかな?銀色のチビ?いやチビの泣き虫じゃったか、がウィンボスティー周辺でダッドと戦ってるはずじゃ。」

 

 

 2か月…2か月も…。

 

 タチもずっと心配してくれただろう。

 私と同じように、恐怖におびえながら。

 

 しかもまだ、タチは私の無事はしらない。

 私が生まれ変わるのは承知してても、最後があんな別れ方だ…。


 タチの気持ちを考えると、申し訳なくなる。

 でも、なにせあのタチだ。私基準で考えちゃいけない。

 疑うこともなく信じてるかも。私と再び会えるって。

 

 ぐるぐる考えは巡るけど、根元にある一本の芯。「タチに会いたい」という気持ちは補強された。

 だってタチは生きてる!


ぱくり。

 もう一口ミルクかき氷を口にした瞬間。広がった甘みを意識してしまい、せき止まらない感情が溢れでた。


「良かった…良かったよ~。」

 食べかけのかき氷を地面に落とし、ズーミちゃんの体に顔をうずめる。

 どこまでも自分本位で嫌になる感情だけど、ともかく安心した。



「ちょっ…ナナ!わらわの中で泣くな!」

 ゴポ!ゴポゴポ!…ゴポポポポ!

 周囲には漏れない言葉を、ズーミちゃんの中で発する。

(だって…タチに会うまで、涙は流したくないんだもん…!)


 タチにだけは見せていい弱さ。自分の情けなさ。彼女と一緒の時だけのものでありたい。

 タチと居ないときは、せめてちょっとぐらい気丈で強く振舞ってたいのだ。

 恰好だけでも。


 だから、泣かない。ズーミちゃんにくっついていれば、涙だって瞳の潤い水分か、ズーミちゃんの体液かなんて境はないはず…。


 つまり、実質泣いてない!


「泣いたという事実は変わらん気もするが…よいよい。好きにするのじゃ。」

 一人ゴポゴポと大泣き…瞳の潤いを見き散らす私を、ズーミちゃんは優しく受け止めてくれる。

 

「このままじゃ塩味になりそうじゃ…。お通しも食べ終わったことじゃし、収まったらご飯にするとしよう。お主もよいじゃろう?」

 ズーミちゃんが私の背中をポンポン叩きつつ、ユニちゃんに話しかける。


「…てぇてぇユニ。」

「ユニ?おぬし腹はへっておらぬのか?」

「えっ…えぇ!いただくユニ!既に胸いっぱいご馳走様ユニだけど…!もっと食べたいユニ!」

 この二人…どうにか隔離空間に閉じ込めたいユニ…。

 そんな言葉が聞こえたような気がするが、ズーミちゃんから頭を抜いた直後の聞き違えだろう。


「ナナは当然食べるじゃろう?」

「…うん。おなか減った。」

 この3日間まともな食事をしてなかったし、そもそも喉を通らなかった。

 ズーミちゃんのお腹に顔をうすめながら、自分のお腹を鳴らす貴重な体験をするぐらい空いてる。


「新・もちもち殺し…。食べたら元気が爆発するぞ?」

「しん!!もちもちごろし…!!!」

 自慢げに口にしたズーミちゃんの魅惑の商品名、恥ずかしながら心躍らずにはいられない。


 沢山泣いたし。おなかも減ったし。

 仕方がない。


 愛するタチのもとに向かうにも、まずはお腹ごしらえです。

 

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