「これが…ユニコーン!!!」
わき腹を角で突かれたであろうタチが大喜びしている。
裸の時にそんな足ひろげちゃダメだよ…一応女の子なんだから。
「どうしたの?迷子かな?」
見た目のちんまりした感じで、子供に話す口調になってしまう。
詳しくはしらないけど、清らかな湖に生息するはずだ。なんで川に?
「…」
じーっとこっちを、いや、タチを睨みつけている。
可愛い顔に不釣り合いな表情で。
「私の生涯で、出会えるとは思わなかったぞ…!」
いつも通り気さくに手を伸ばし、ユニコーンの頭を撫でようとするタチ。
しかしヒョイッと、かわされてしまう。
そのまま私の太ももにひっつくユニちゃん。…なつかれた?
嫌悪感や不快感は一切ない、さすが清純の象徴。
「大丈夫だよ。怖いかもだけど、そこまで悪い人じゃないからね。…たぶん。」
子供をあやすように声をかける。
ニコッ。
ユニちゃんが私の方を見上げて笑顔をみせる。
…可愛い。これが彼女の自然な表情なのだろう。
「そうか…ユニコーンに会うには処女を水に投げ込めば良かったのだな…。」
はだか仁王立ちで腕を組み、人間とは思えない発言をする不純の塊りタチ。
「そういう思想だから睨まれるんだよ…。」
「精神の問題じゃなく百戦錬磨のこの体が――ぐはっ!」
ユニちゃんが再びタチに体当たりをする。
尖った角が痛そうだ。
「なにが気に食わんのだ…!」
わき腹を押さえながらうめくタチ。
「たぶん、私に触ろうとしたからじゃない?」
私にひっつくユニちゃんに対抗心を燃やし、タチもくっつこうとした所迎撃された。
「ナナを抱きしめて何が悪い!この厄介処女狂いめ!」
「…!」
無言で威嚇するように睨みつけるユニちゃん。
バチバチと二人の間に火花が散る。
「お前も抱かせろ!!」
睨み合いのすえ、出た結論が性欲なタチさん。
…困ったなとりあえず、服が着たいんだけど。裸に布一枚じゃ居心地が悪い。
「帰らんと思ったら、珍しい子がいるの。」
うにょうにょと川をすべるようにズーミちゃんが現れた。
忘れてた!私エサだったんだ。
作戦は成功したのだろうか?
「ズーミこのかわいいの、どうしたら手なずけられる!」
意地でも頭を撫でたいのか、両手をニギニギと構えているタチ。
「お主にはぜーーったい無理じゃよ。貞操観念が壊滅しとるからの!」
ぱちゃぱちゃ!
ズーミちゃんとタチが口論を始めると、ユニちゃんは川の流れにそって逃げてしまった。
「待て!せめて一撫で…!」
「ふむ。わらわの化身の力に驚いてしまったようじゃな。」
ズーミちゃんの周りの水が、ギュポギュポと彼女の体内に吸われている。
口惜しそうに、ユニちゃんの背中を見送るタチ。
(ねぇねぇ。剣は処理できたの…?)
(ササッとじゃが、木の上に引っ掛けて隠した。高い位置じゃし見つからんじゃろう。)
「抱きたい!!!」
拳を川に突き立て、大暴れするタチの裏で
ズミナナ同盟はのヒソヒソと密談するのだった。
* * * * *
「ん?」
川を出て、私が乾いたふかふかの布で体をふいてる最中。
タチは下着を履いている途中で、剣がないコトにきづいた。
「あいつ、どこにいった?」
下着姿でキョロキョロと当たりを見渡す。
私は後ろめたい気持ちで、タチから顔をそらしてしまう。
「どどど…どこじゃろうな…」
ズーミちゃんも同じ気持ちだろう、やってることは悪いコト。
まして、真面目そうな彼女には荷が重い。
嘘も下手だし。
「まったく世話を焼かせる奴だ…」
すぅっと息を吸い、キッと気を張るタチ。
凄い気迫だ。
「…!」
なんだろうこの感覚、…恐怖?
「少し離れているな。」
下着にブーツだけはいて、トコトコと木々の中へと歩いていくタチ。
(ねぇ。あっちって…。)
(わらわが、剣を隠した方じゃ…!)
ドン!
タチの向かった方で、大きな打撃音がして、鳥がバサバサと飛び立つ。
この鈍い音…木を殴った?
「ひっ!」
戻って来たタチの手には、黒々とした剣…神殺しが握られていた。
道中ずっと大人しく灰色だったのに、先ほどのタチの気配に反応したのだろう。
真っ黒に染まっている。
だめだ…この禍々しさ、鳥肌が収まらない。
良い所まで行きはしたが、三日目もズミナナ組の作戦は残念な結果に終わったのである。
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