かみてんせい。

挿絵いっぱいな物語。
あゆみのり
あゆみのり

第十二話 そうだ、聖地にゆこう。

公開日時: 2020年9月7日(月) 18:14
文字数:2,531

 ズーミのお家で一夜を過ごし、地上へと戻る。

 水中では拝むことのできない日の光が眩しい。


「おう、ズーミちゃん昨日はありがとな!」

 荒れた土を整えていたおじさんが、こちらに手を振る。

 つい半日前に戦場だった場所を十数人の人間がお手入れしていた。


「めげないものだ。」

 タチのいう通り。既にお店を再開している所がちらほらある。

 一晩ゆっくり休んだ(タチの夜這いを回避しながら)私たちも復興のお手伝いしようと戻ったのだが…。


「お疲れ様ズーミちゃんとねーちゃん達!」

「ありがとね~」

 どこも人では足りている用な上、ちょっとした有名人になっていた。

 それはそうか、あんな大立ち回りしてたわけだし。

 

「おぉ!魔物を倒してくれたあんちゃん!」

 どうやら、悪いモンスターを退治した一行という認識らしい。

 まだ、顔に包帯を巻いているのに壊されたお店の修理をしている。


「屋根の修理か?手伝ってやるのじゃ!」

「じゃーちょっくら頼もうかな。」

 ズーミが水の力を使い、おじさんを支えるように高所へ…。


「って。正体ばらしたの!?」

 そういえば、先ほどから掛けられる声も変だった。

 私とタチはじょーちゃんやねーちゃんなのに、ズーミは名前で呼ばれている。


「というかとっくにバレとったみたいじゃ。」

 気にする風でもなく補助を続ける。

「変なスライムだと思ってたんだよ。服着て何度もウチのもちもち買ってくんだから。」

「ギルガの作るお菓子は美味しいからの。」

「あたりめーだ!早く店再開して食わせてやるからなズーミ。」

 だいぶ前から気付かれてたようで…。

 互いを名前で呼ぶ中になってる…というかこのおじさんもちもち殺しの店主さんだったのか。


「怖くなかったのか?」

 タチが倒れていた旗を地面に差し言う。

 幻のもちもち殺し!見た見たこの旗だ。


「人のフリしてまで、もちもち並んで買うような奴だからな。極悪にちげぇね!」

 顔覚えられるぐらい、通ってたんだろうな…。

「わらわ、この地の化身じゃっていっておろう!」

「水の化身でも、チビっ子スライムでも構やしねぇーよ。足しげくウチに通ってくれて、魔物を倒してくれたんだからよ。」

 この世界には色んな生物がいる。

 人間が呼ぶ魔物というカテゴリーは「動物の中で人に害を及ぼすもの」の総称だ。


 といはいえ、魔物と呼ばれていても、人間と共に生活し利用されたりするものもいる。

 馬や牛などと同じ感じで。


「…いつも、おまけつけてもらったしの。」

「お得意様には、ちゃんとサービスしねーとな!…なんだズーミ泣いてんのか?」

「ないとらん…!ないとらんもん!ただちゃんと、戦ってよかったなって…!」

 まるで、微笑ましい親子の日曜大工である。

 やりとりをしながらも、みんなで屋台を組み立てていく。


「どうやら、昨日の時点で能力を使ったようだな。」

 タチの指さす先には、昨日壊されて修復不可能な瓦礫が山となって積まれていた。

 確かに、人間の力だけでこんなに早く運べまい。

 

 きっとズーミが水でまとめて運んだのだ。

 それらしき濃い色の土痕が残っている。


 既にバレていたので、全力で手伝ったのだろう。

 それがみんなのズーミちゃん呼びの理由か。



「よし。とりあえず今できるコトはこんなもんだ。」

 屋根の布を張り直したおっちゃんが、ズーミの水の玉に乗り降りてきた。


「…ほんとお騒がせしました。ごめんなさい。」

 タチやズーミとは違い、私は謝らなくちゃならない。

 だって、土の化身の行動は私…神様をを思ってのコトだろうから。


「なんでじょーちゃんに謝られるんだ?」

 他の三人にわかるわけがない。どうしたらいいだろう?実は私は神で…と説明したい。でも、でも…。


「お主。人の身ながら源に触れたり、隠し事もあるようじゃが…良くやっとったよ。」

「…」

 たぶんズーミなら信じてくれる。私が神だって。

 

 うつ向き苦い顔をする私の腰が抱き寄せられた。


「ナナ。私は今お前が好きだ。何か知らんが気に病むな。」

 なんで、私が慰められているのだろう。事情も過去も聞かれることなく…。


「決めた。」

 戻ろう。神様に。

 今の私ではなにもできないし、なにも見えない。

 

 約束の地パンテオン。

 地上で天に最も近い場所。そこに戻れば私は神に戻れる。私の聖地。

 六百年ほどの人生。決意を胸にこれで終わりにする。


「何を決めたんだ?」

「私パンテオンに向かう!」

 タチの顔を真っすぐ向き答える。


「パンテオン…?パンテ教だろう?」

「聖地の名前がパンテオン!空中に浮かぶ約束の地。」


 神殺しの女が、聖地の名前をしらないとは。

 人々が私を想う、信仰の心が集う場所。

 私が地上に降りた、繋がりの地なのに。


「空中に浮かぶ…?地上の中心「ケサ」が聖地の場所だろう?」

 …?地上の中心??


「確か、空中に浮かぶなんたらは、古いほうの聖地じゃな。」

 我が眷属けんぞく

 水の化身まで、不勉強な事を。

 そんなだからこの辺りは信仰者が少ないわけか!


「俺の親戚もパンテ教でな、一人知り合いがケサに向かったよ。もう十年前か…生きてると良いが。」

 もちもち殺しのおじさんまで…。


「みなさん。神と言えば神ですよね?」

「基本パンテ教の神をさすだろうな。」

 タチの答えとおじさんのうなずき。

 当然といった態度のズーミにちょっと安心する。


「パンテの聖地といえば?」

「ケサだろう。私は最終的にそこへ向かうつもりだぞ。神を殺しに。」

 即答のタチ。神様とか興味ないからなーというおじさん。


「四百年ちょっとまえじゃったかのう…お引越しなされたはずじゃよ?わらわお呼ばれしとらんけど。」

 神代理…光の化身イトラ…!私のしらないうちに何かやってません?!



 ただそこにあった。

 たぶん時間で計るなら百三十億年まえぐらい。そう思った。

 

 寂しくなって光あれと、イトラを生んだのが四十億年前。

 ともない影の化身ヤウも生まれた。彼は魔物を産み、悪魔と名乗っている。

 

 天ができ地が広がる。


 三十五億年前ぐらいに地水火風の化身が生まれ。

 地上を豊かに、それぞれが変化させる。好きに勝手に。

 

 二十万年前ぐらいに人類が私に興味を持ち、二千年前に聖地を作ってくれた。

 

 私を想い。私に願い。

 「聖地パンテオン」人と神をつなぐ門となり私はやがて受肉した…。

 


 たった。たった。六百年ほど遊んでいるうちに…!


 短い人の生。

 ほんと、人の感覚じゃ何が起こっているのかさっぱりわからない。


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