かみてんせい。

挿絵いっぱいな物語。
あゆみのり
あゆみのり

第五十話 お出かけ準備。

公開日時: 2020年11月19日(木) 15:22
文字数:1,741

「わらわの大陸とちがって川が少ないからの…。ちと移動は面倒になりそうじゃな。」

 ズーミちゃんとユニちゃん二人の頑張りで、あっという間に風の大陸に到着した私達。

 まだ海の見える陸地端で、これからの旅計画を整える。


「いよいよ…あの女との対決ユニね…!」

 ぴょんぴょん跳ねながら、拳を宙に素振るユニちゃん。

 やるき満々である。


「タチ…今戻るからね。」

 今踏みしめてるこの大地のどこかに、タチがいる。

 一歩ずつどころか、二人のおかげで百歩づずぐらいタチの元に戻れている気がする。


 そういえば、戻るといえば…。


ポン。


 軽く、ゆる~く。空気が弾けた音がした。

 音のした方をみると、さっきまで拳を構えていたユニちゃんが消えている。


「…あっ。」

 視線を下げると、出会った頃の小さくて愛らしいユニちゃんがそこにいた。

 そうそう。そのコトを聞こうと思ってたんだ。


 そろそろ戻ってもおかしくないんじゃないの?って。


「うむ。良いタイミングで戻ったの。海上でなくてよかった。」

 ズーミちゃんも変化に気づいて、うむうむとうなずく。

 きょとんと立ち尽くしていたユニちゃんは、自らの状況を把握し地団駄を踏んでいるが、その姿が凄く可愛らしい。

 

 久しぶりにみたけど、やっぱりこの姿のユニちゃんは反則だ。

 可愛らしすぎる。


「よしよし。ここからは私が運んであげるからね。今まで沢山ありがとうね。」

 闘志に満ちていたユニちゃんには申し訳ないが、私にとっては好都合。

 タチと再会したとたん、決闘が始まるのは喜ばしくない。

 

 少し拳は収めてもらい、共に時間を過ごし、話し合いでならせば…。

 仲良くなるとも思えないけど。


「水の大陸まで噂は流れて来とった。この地なら少し聞き込めばタチの居場所もわかるじゃろう。」

「そうだね。あっちに見える村で、食料とか補充するついでに話を聞いてみるよ。」

 一般的な人間の形をしているのは私だけ、地元を離れたズーミちゃんはただの魔物として攻撃されかねないし、ユニちゃんは捕獲される危険がある。

 だから聞き込みや、取引は私の役割だ。


 ここに着てやっと役に立つ場面が来た。

 

「じゃあ。ちょっと行ってくるね!日落ちするまでに帰って来るから。」

「うむ。気を付けるんじゃよ?今のお主だいぶちびっ子じゃからの。夜の一人歩きはさせとうない。」

 優しい保護者のズミママの心配を胸に刻み、買い物の最終確認をする。

 そのまま「子供のお使い」状態だ。

 

 ズミママの言う通り、買う物の復唱をして、村に歩きだそうとする私の頭に、ポフリと柔らかいなにかが降ってきた。


 お洋服だ。


 足元に貼り付いたユニちゃんが、じーっと私の方を見上げてる。

 無言の圧力。


「…約束は約束だからね。これに着替えればいいんだよね?」

 にっこり笑顔でうなずくユニちゃん。反則的に可愛らしい。

 用意されたお洋服が、いままでの中で一番露出が少ないのは、一人で買い物予定の私を思っての優しさだろうか?


 ごめんねヘソ出さないといけないなんて縛りもあるのに…。

 でも出してないと体調崩しちゃうんだ。


「ほら、わらわも手伝ってやるから急げ。明るいうちにすませんとな。」 

 水上生活で毎回着替えの手伝いをしてくれてたから、もうお手の物。

 私の脱いだスカートを畳み、一緒に服のボタンをとめてくれる。


 あぁ…だめだ、ズーミちゃんが優しすぎて一人じゃ生きてけない体になりそう。


「私、ズーミちゃんの子供に生まれたかったな。」

「バカゆっとるんじゃない。全ての始まりであるお主が…口にすると違和感しかないじゃろう。信じがたいがの。」

 たぶん、私が神様だってことは完全に頭から抜けてたズーミちゃん。

 そりゃ~ね。どこの世界の神様だったら、こんなだらしのない存在で許されるのか。

 

 最後にネクタイを締めてもらって、お出かけ準備終了。

 さぁ、行くとしますか。


「待て。頭のリボンが曲がっとる。せっかくの可愛い仕上がりが台無しじゃ。」

「…ん。ありがとう。」

「ついでにクシも買ってこい。潮風で髪が少し痛んどる。綺麗な髪がもったいないじゃろう。」

「わかった。忘れない様にする。」

 ズミママのおかげで、服装もばっちり決まったし、ユニちゃんも満足そうにフモフモ震えてる。

 

 今度こそ出発!

 2人に手を振り、しばしのお別れ。


 買い物と聞き込みぐらい、一人でできるさ!

 

 


オマケ絵[何度生まれ変わっても友達]



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