「わらわの大陸とちがって川が少ないからの…。ちと移動は面倒になりそうじゃな。」
ズーミちゃんとユニちゃん二人の頑張りで、あっという間に風の大陸に到着した私達。
まだ海の見える陸地端で、これからの旅計画を整える。
「いよいよ…あの女との対決ユニね…!」
ぴょんぴょん跳ねながら、拳を宙に素振るユニちゃん。
やるき満々である。
「タチ…今戻るからね。」
今踏みしめてるこの大地のどこかに、タチがいる。
一歩ずつどころか、二人のおかげで百歩づずぐらいタチの元に戻れている気がする。
そういえば、戻るといえば…。
ポン。
軽く、ゆる~く。空気が弾けた音がした。
音のした方をみると、さっきまで拳を構えていたユニちゃんが消えている。
「…あっ。」
視線を下げると、出会った頃の小さくて愛らしいユニちゃんがそこにいた。
そうそう。そのコトを聞こうと思ってたんだ。
そろそろ戻ってもおかしくないんじゃないの?って。
「うむ。良いタイミングで戻ったの。海上でなくてよかった。」
ズーミちゃんも変化に気づいて、うむうむとうなずく。
きょとんと立ち尽くしていたユニちゃんは、自らの状況を把握し地団駄を踏んでいるが、その姿が凄く可愛らしい。
久しぶりにみたけど、やっぱりこの姿のユニちゃんは反則だ。
可愛らしすぎる。
「よしよし。ここからは私が運んであげるからね。今まで沢山ありがとうね。」
闘志に満ちていたユニちゃんには申し訳ないが、私にとっては好都合。
タチと再会したとたん、決闘が始まるのは喜ばしくない。
少し拳は収めてもらい、共に時間を過ごし、話し合いでならせば…。
仲良くなるとも思えないけど。
「水の大陸まで噂は流れて来とった。この地なら少し聞き込めばタチの居場所もわかるじゃろう。」
「そうだね。あっちに見える村で、食料とか補充するついでに話を聞いてみるよ。」
一般的な人間の形をしているのは私だけ、地元を離れたズーミちゃんはただの魔物として攻撃されかねないし、ユニちゃんは捕獲される危険がある。
だから聞き込みや、取引は私の役割だ。
ここに着てやっと役に立つ場面が来た。
「じゃあ。ちょっと行ってくるね!日落ちするまでに帰って来るから。」
「うむ。気を付けるんじゃよ?今のお主だいぶちびっ子じゃからの。夜の一人歩きはさせとうない。」
優しい保護者のズミママの心配を胸に刻み、買い物の最終確認をする。
そのまま「子供のお使い」状態だ。
ズミママの言う通り、買う物の復唱をして、村に歩きだそうとする私の頭に、ポフリと柔らかいなにかが降ってきた。
お洋服だ。
足元に貼り付いたユニちゃんが、じーっと私の方を見上げてる。
無言の圧力。
「…約束は約束だからね。これに着替えればいいんだよね?」
にっこり笑顔でうなずくユニちゃん。反則的に可愛らしい。
用意されたお洋服が、いままでの中で一番露出が少ないのは、一人で買い物予定の私を思っての優しさだろうか?
ごめんねヘソ出さないといけないなんて縛りもあるのに…。
でも出してないと体調崩しちゃうんだ。
「ほら、わらわも手伝ってやるから急げ。明るいうちにすませんとな。」
水上生活で毎回着替えの手伝いをしてくれてたから、もうお手の物。
私の脱いだスカートを畳み、一緒に服のボタンをとめてくれる。
あぁ…だめだ、ズーミちゃんが優しすぎて一人じゃ生きてけない体になりそう。
「私、ズーミちゃんの子供に生まれたかったな。」
「バカゆっとるんじゃない。全ての始まりであるお主が…口にすると違和感しかないじゃろう。信じがたいがの。」
たぶん、私が神様だってことは完全に頭から抜けてたズーミちゃん。
そりゃ~ね。どこの世界の神様だったら、こんなだらしのない存在で許されるのか。
最後にネクタイを締めてもらって、お出かけ準備終了。
さぁ、行くとしますか。
「待て。頭のリボンが曲がっとる。せっかくの可愛い仕上がりが台無しじゃ。」
「…ん。ありがとう。」
「ついでにクシも買ってこい。潮風で髪が少し痛んどる。綺麗な髪がもったいないじゃろう。」
「わかった。忘れない様にする。」
ズミママのおかげで、服装もばっちり決まったし、ユニちゃんも満足そうにフモフモ震えてる。
今度こそ出発!
2人に手を振り、しばしのお別れ。
買い物と聞き込みぐらい、一人でできるさ!
オマケ絵[何度生まれ変わっても友達]
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