さっきからだいぶ離れた所に来たなあ。森はまだ抜けそうにないし、それよりも人っけがない方角に、森のさらに奥に入ってるような気が——
「ここら辺なんだけどな。チップの反応は」
「あんた、わかるの! チップがどこにあるか!」
「最初の確認の時に、伝達されたろ。自分のマイクロチップの中にメールが受信されて、その中にマップが届いてる。それと、マーカーで塗られているところにチップがある」
「あっそういえば、そうだったような?」
教官の話よりも森のマップに意識いってたわ。
「でも、この辺りにチップの反応なんて、無くない?」
「あーー? あるぜ簡単に手に入るチップがな」
「どこ?」
「そこだよ」
そう言うと彼は私の後ろを指差して、私は後ろを振り向く。
「うぐっ!!」
凄まじい衝撃が私の後頭部に直撃した。意識が、途絶える……。
「バカな女だぜ。ハハハッ! 簡単だろ、一人1つずつチップを持つんだぜ? 奪い合いだよ。実に簡単だ。じゃあな。間抜け、まっ、試験終了までは動けねえだろうぜえ、ヒャッホオオッ!」
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どのくらい気絶していたんだろうか、うーん、頭がグラグラする。しんどい。なんかさっきから、ガヤガヤうるさいな。あれ?この機械音は、囲まれてるの?アッ、アンドロイド!嘘でしょ……。
こう言う時は、後ろを取られないように、建物を背にするんだっけ?私は近くにあった大木を背にしてみる。
「くそ、あのサビとか言うやつタダじゃあおかない! でも今はここを乗り切る——セット、出力安定、相互リンク接続!」
動いて、鉄柱!あれ、って言うか私、何でフレームに名前なんか。まあ、名前ついてた方がしっくり来るもんね。最悪の場合は全方位に塞がれてる。それなら、
「来て!」
私自身が空中に逃げる!翼のイメージで、背中に8本全部の鉄柱を展開する!羽のように、光の粒を放出!
私は上空へとビューンっと飛び上がった。
「うわああ! とっ、飛びすぎ——ゆっくり、大丈夫!」
でもすごい、本当に私、今空を飛んでる。この鉄柱から出ている光の翼で。この感じ、ちょっと怖いなぁ。慣れない。
しかも飛んでるって言うか、制御できずに浮いてるだけだけど。なんか足元がおぼつかないなあ。ブランコに座ってるみたいに足をバタバタさせちゃう。
このまま浮いてても仕方ない、ナギ様飛びまーす!
***
そうそう、それそれ!手足を動かすように、もっと深いところまで、神経を通じて精神と思考をリンクする。空を飛ぶコツが秒で掴めてきた。
私、やっぱり最強のフレーム使いになれるわ。優雅な白鳥のイメージが私の中にある。
白鳥は翼を広げて、今、飛んでいるのよ。あれ、白鳥って空飛ぶっけ?
「でも、私、飛んでる! 本当に、空を! ああ違った。地下の空洞を、でも、夢見たい!」
この感覚本当にすごい!本当に私に翼が生えたみたいな!風を受けて上空を優雅に舞う。これ、私、エンジェルじゃない?私はたった今から天使になりました。
少女は白鳥へ、そして天使へと、さらには女神へと至るのです……ああ、何というお美しい私よ。
『ビビビーーー、規定範囲外に差し掛かっています。任務放棄とみなし、リタイアになります、直ちに戻りなさい。』
「そんなの聞いてないし、わっ、わかったわよ——戻るから!」
てか、このチップ喋るの?すげーなこの10円玉。
うーーむ。なんかあそこ、川っぽくない?光の翼を出力を安定させて、静かに、呼吸を落ち着けるように、ゆっくりと着地する。そのまま、鉄柱は一つに纏まって、私の後ろの特製バックパックに入っていく。
この前の訓練後にカリーナにお願いして、工房の人に作ってもらったこの特製!黒くてぶっとい肩掛けのベルトのような何か。でも特殊な繊維で出来てるとかで全然軽い。
てか、体が少し重い。飛びすぎかなぁ?確かフレームを扱うには同調率と思考や、精神の安定率がどうたらこうたら見たいな話だった気が。天使のイメージで飛んでたけど、最後の方は光の翼の出力が弱まってたかも。
「とりあえず、さっきの場所は離れたかな?何だろうこの音は、誰かの声?がする」
川の流れる音がして、とりあえずもりもりしてる森をかき分けて、音のする方角へと走っていく。あれは!レインちゃんだ!それとあっちのは、
この前にみた植物やろう!なんでこんなところに!
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