小五の時に中三のサル共を、家に置いてあった木材でボッコボコにしてやった。どうやってボコったのか。相手はオス科のサルで私は卑怯者だったって感じ。
そりゃもう徹底的にね——だって、私たちの秘密基地をめちゃくちゃにした分、あたしの親友を泣かせた分だ。倍返しは当たり前、私の友達を泣かせた奴は全員叩きのめす。
お父さんと一緒にそのサル共の家に謝りに行ったけど、全治三ヶ月だという。大した事ないと思った。でも、その後はお父さんに思いっきり怒られて、ケンカした。泣きすぎて顔がパンパンに腫れ上がったのは、まあ今となっては懐かしい……かな。
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私の名前は、久里間 薙 (くりま なぎ)
ど田舎の海と山に囲まれた町で漁師のお父さんに育てられた。バスは二時間に一本は来て、来なかった。だから移動はチャリ。私のギア付きべんべん丸。
お父さんは体格と顔がゴリラで、髭がものすごいジャングル。私の中のかっこいいのゾーンには入らない……。
私のお母さんは私が生まれてすぐに病気で亡くなっちゃったらしい。でも、私はお母さん似に生まれたと、お父さんから聞かされた。
お母さんは町でも五本の指には入る別嬪さんだったとか。お母さん似で産まれて心底ホッとしてるし、まつ毛もそれなりに、うん。
そして、笑うと出てくる ”えくぼ” を受け継いだ。
ありがとうお母さん。
小三の頃には地元でわんぱくな女の子として有名な漁師の一人娘になってた。その頃から髪型は黒のショートボブ。邪魔にならなくていいのだ。
けど、私は本当は、可愛いお嬢様になりたかった。
小四に上がる頃にその子は転校してきた。彼女の名前は杏。私は、目玉がビーーンと、飛び出た。
その上手に纏まったポニーテールとシュシュ。整った眉毛、高級そうな ”GUCCHA” と文字の入ったメガネ、肩についてる可愛いフリル、何より膝下までの純白なスカート。私の、目指している完成形、可愛い女の子!!
「ねえねえ、ねえねえ! あなたすっごくかわいい! どこから来たの!?」
私が急にグイィィぃっと顔をその子の目の前に持っていくと、メガネの子がビクッとして、身を引いちゃった。
「あっ、えーと東京からぁ」
「——とっ、東京!? いいなああ、私もヤーシブ行きたいよおお。おされして街を歩いて、裏ハラ? で美味しいもの食べて、タピオカミルクティーは、あっでもミルクティー飲むからランチは抜きね」
「すっごいなあ、なんか私より、全然都会の……」
「私はナギっていうの! よろ!」
「あっ、うん。よろしくね。ナギちゃん」
それから、杏の家で都会を研究し、遊んだ。そりゃお人形に服を着させて、杏のお母さんのファッション雑誌を読んだ。私はこの時に自分の目が猫目だと知る。二重で目尻が上向きなのだ。
「ぜっっったい一緒に都会行こうね!! 約束! 一緒に、可愛いお洋服たくさん着るの!」
「うん。約束! でも、私は田舎がいいなあ」
「えええ。なんでよ? なーーーん にもないじゃんここ」
「ナギはわかってないなあ、でも一番はナギが居るからかなあ。なんて……」
「——杏んん! 私も、杏とズッーーと一緒! ベスフレだから、マブだから、マブ!」
小五の時の日課は私と杏で作った秘密基地で遊ぶ事だった。もちろんお父さんに内緒で、エッチな本とか勝手に持ってきた。お父さんがいうには
『秘密基地と言ったら、これだな。父さんは!』
とか言ってたから。正直私にはこれの良さが全く分からなかった。
そのほかにも、貝殻コレクション、お人形、私と杏の宝物とか、全部!でも、夏の終わりに、
”よそ者は出てけ!!”
”ユーマ様参上!!”
とかスプレーで落書きされてて、秘密基地はもう破壊されてた。宝物は見る影もなくて、エッチな本は消えてた。杏がすごい勢いで泣き出しちゃって、家に閉じこもって学校に来なくなった。
「この……サル共。ぶっ飛ばす」
そんな感じでまあ色々あって、なんとか杏は中学から学校に戻ってきてくれた。
私は、海と山に囲まれたど田舎で、自由に育った。はぁぁ、可愛いのが見たい 、着たい、都会に行きたい。そんな事を考えながら、中二の私は、家の前に毛並みが良い青色の目をした
黒猫を見つけた。
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