女子たちは、そんな男の子を見て黄色い声をあげる。
男の子は表情一つ変えることなく、女子の集団をかき分けながら、学校へと入っていく。
(私とは住んでる世界が違うなぁ)
私が関心していると「朱里、口開いてるぞ」と横から声をかけてくれた黒炎くんがいた。
「え!? ……お、おはよ、黒炎くん」
もしかして私、今アホな顔してた?
だって、あんなの見せられたら誰だって驚いて当然だよ。
しかし、昨日の今日で、なんとなく気まずい。
でも、黒炎くんから挨拶してくれるだけで嬉しいと思う私もいた。
あぁ、私ってなんて単純なの。
「黒炎くん、あれって先輩だよね? 朝からすごく目立ってるよね。でも、先輩も運転手さんも美形だったね!」
気まずい空気と、私のアホな顔を早く忘れてもらうようにと、とっさに話を振る私。
「あれは……」
「?」
「いや、なんでもない。遅刻するぞ」
「う、うん!」
黒炎くん、昨日と同じ表情をしている。
どこか遠くを見ていて、なんだか寂しそうな顔。
小さい頃は、そんな悲しい顔見せなかったのに。
やっぱり、なにかあったんだよね?
* * *
教室に入ると、黒炎くんはまたしても囲まれていた。すっかりクラスの中心で、人気者だ。
でも、本当はギャルゲーオタクなんだけどね。
私だけが知っている黒炎くんの秘密。
……アカリちゃんは知っているんだろうか。
私以外の女の子が黒炎くんのことを知ってると思うと、胸が締め付けられそうになって、とても苦しくて、痛い。
……私だけが黒炎くんの全てを知っていたいのに。
そしたら、どんなに幸せだろうか。
* * *
昼休み、クラスメイトに囲まれている黒炎くんを「一緒にお昼どうかな?」と誘うことにした。
「ああ、別にいいぞ」
「ホントに!? ありがとう、黒炎くん!」
昨日の気まずいこともあったから、断られる覚悟もしていた。が、あっさりと受け入れてくれる黒炎くん。
勇気を振り絞って誘ったかいがあった。
「~♪」
私たちは屋上で昼食をとることにした。
あぁ、好きな人とお昼を食べられることがこんなに嬉しいなんて。
「朱里、なんか嬉しそうだな」
「え!? もしかして、また……アホな顔してた?」
両手で口を照れくさそうに隠す。また、口開けてたのかな?
「ふ……あはは。アホな顔ってなんだよ。いや、ただ鼻歌歌ってたから何か良いことでもあったのか? って聞いただけだよ」
「……!///」
無邪気に笑う黒炎くんを見て、私は不覚にもキュン! と来てしまった。
これがいわゆる、胸キュンってやつなのかな?
「良いことって、そりゃあ好きなひ……幼馴染と久しぶりに一緒に食事出来たら嬉しいに決まってる!」
危なかった……。うっかり黒炎くんに私の気持ちがバレるとこだった!
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