再会した幼馴染は××オタクになっていました

高校で再会した幼馴染が××オタクになっていた!?私の初恋どうなるの?
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八章 ハロウィンはドキドキがいっぱいで

33話

公開日時: 2021年1月3日(日) 19:03
文字数:2,006

今でも時々、信じられない。実は夢なんじゃないかってそう思う。


黒炎くんの彼女になってから一週間が経った。


彼女になってから手を繋いだり、キスをしたり、イチャイチャラブラブなリア充ライフが待ってると思うじゃん、普通は。だけど、それはあくまでも他人の話。


黒炎くんにはその“普通”ってのが通用しないわけで……。


『最初はゲームのアカリが好きだった。だけど、だんだんと現実の朱里と話したり、触れ合う度に気持ちが揺れ動いたんだ』


って、言ってくれたはずなのに。なのに……。


「朱里。このシーンのアカリの笑顔めっちゃ可愛くないか!?」


どうして、こんな状態なんでしょうか。


「なんで!? どうして休日の朝からゲームなの!?」


そう、今は黒炎くんのお家にてアカリちゃんを鑑賞中。せっかくの休日だから俺の家に来ないか? とイケメンセリフで誘われ、私はまんまとそれに引っかかり、ドキドキで胸を弾ませて、いざ家に来てみたものの……私が馬鹿だったと今は後悔している。


「なんでって……そりゃあ休日くらいしか、ゆっくりゲームする時間なんてないだろ」


「そうじゃないでしょ。先週のこと覚えてないの? あのイケメンだった黒炎くんはどこに行ったの……」


私はあからさまにしょぼんと落ち込んだ。

「イケメンだった覚えはないんだが。……朱里、さっきから様子が変だぞ」


「ゲームより現実の私が好きなんじゃないの?」


プクーっと頬を膨らませ不貞腐れる私。もうヤキモチは妬かないって思ってた矢先、黒炎くんにこんなことをされたら流石の私でも多少は怒ってしまうのは当たり前で。


「それは言った。けど、アカリの話をする俺のことも好きなんじゃないのか」


「うっ」


それはたしかに言ったけど。付き合ってから私は今まで黒炎くんに対する思いを全て伝えた。けど、それを言われると何も反論できずにいるのがなんだか悔しい。


しかも、問題はその顔。欲しいおもちゃを買ってもらえない子供のような瞳でこっちを見られると、私もどうしていいかわからなくなる。


「じゃあ、少しだけならしてもいいよ」


うぅ、本当は彼女になって初めてのお家デートだから2人きりでイチャイチャ出来ると思ったのに。


「ありがとな、朱里! なら、とりあえず1時間はするとして……」


私がゲームの許可を出した途端、黒炎の表情が明るくなる。それはもうわかりやすいくらいの笑顔で。


って、「1時間もするの!?」とつい叫んでしまった。やばい、本音が。


「1時間って高校生だったら短いほうじゃないのか?」


たしかに私も携帯さわってる時間は長いから、その気持ちはわかるけど。でも、今は彼女《わたし》といるんだから……。


「朱里もこっちに来るか?」


そういって、ベッドに座る黒炎くんはポンポンとベッドを叩き、隣に座っていいぞというアクションをおこす。


「う、うん」


私は呼ばれたのでベッドに腰かける。隣に座ると距離は近いし、横顔もすぐに見れる。ゲームに夢中の黒炎くんは気付いてないけれど。


……やっぱり、こうして見るとやっぱりカッコいいなぁ。こんなにイケメンな人が私の彼氏なんて未だに信じられない。


「黒炎くんって、なんでこんな私が良かったんだろ……」


「やっぱり不安か?」


「……え?」


もしかして今の声に出ちゃってた? 特になにも考えずに思ったことなんだけど、黒炎くんが心配そうに私の顔をのぞきこんでくる。


「お前は俺のこと、否定したりしない。好きなものに対して、それを奪おうとしない。そんな朱里だからこそ、俺は側にいてほしいって思ったんだ」


その言葉は、なぜかやけに寂しく聞こえて……。


「私だって好きなことの1つや2つあるから、バカになんてしない。だけど、そんな女の子いくらでもいると思うよ。黒炎くんのことを好きになる女の子はたくさん……」


「それじゃ意味がないことはわかるだろ。俺が心から好きになった人じゃないと駄目なんだ」


「黒炎くん……」


つい頭を撫でたくなったのは何故だろう。今の黒炎くんが弱く、今にも消えそうに見えたから……そういったら、黒炎くんはどんな顔をするだろうか。


「不安にさせたみたいでごめんな。俺、ゲームのアカリのことも好きで……」


「知ってるよ。もう、そんな不安になってないから大丈夫。だから黒炎くんもゲームとか言わないで。黒炎くんにとってアカリちゃんは心の支えなんでしょ? だったら、それを否定しちゃダメ。今までそう思ってきたんなら、これからもそう思わないと……自分がかわいそうだよ」


アカリちゃんのことを“ゲームのアカリ”というたび、黒炎くんの心が砕けていく音がした。


私のことを好きなのも十分伝わってくる。だけど、それ以上に前からアカリちゃんのことが好きだったんだ。そんな黒炎くんが簡単にゲームのアカリちゃんと割り切れることが出来ないのは私にもわかる。


やっぱり、夏休みのときから変だとは思ったけどなにかあったんだろうな。たぶん、それはまだ聞いてはいけないと黒炎くんの表情から見て取れた。

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