再会した幼馴染は××オタクになっていました

高校で再会した幼馴染が××オタクになっていた!?私の初恋どうなるの?
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13話

公開日時: 2021年1月1日(金) 17:33
更新日時: 2021年1月3日(日) 04:04
文字数:2,240

本当は今すぐ私がアカリちゃんの代わりに彼女になってあげたい! と思うけど、それじゃ黒炎くんの心が軽くならないことも私は理解している。


だから今は少しでも黒炎くんが楽しいと思える話をしなくちゃ。黒炎くんが喜んで笑っているだけで、私も嬉しいから。


「ちなみにさっき見せてくれたアカリちゃんのポスターって……」


「これはこのギャルゲーの初回購入特典だったり雑誌についてくるオマケのポスターだ。このシリーズは登場人物は同じで、ストーリーだけを変えて次回作をどんどん出してる人気のあるギャルゲーなんだ」


(そこまで人気だったとは)


それからというもの、黒炎くんはアカリちゃんが出てくるギャルゲーについてかなり語ってくれた。


話の後半では、将来はゲーム会社に勤めたいと話してくれた。それでいつかは自分で作ったゲームを世界中の人にプレイしてほしい! と目を輝かせながら言っていた。


私は陰ながら黒炎くんの夢を応援しようと思った。将来どうなるかなんて考えたこともなかった。


高校に入ったばかりでもう決まってる黒炎くんはちょっぴり大人びて見えた。


夢、か。好きな人のお嫁さんになりたいなんて黒炎くんに言ったら子供ぽっいって笑われちゃうかな? と思い、心に留めることにした。


それから一人ずつお風呂に入って、私が上がった時にはすでに夕食が並べられていた。


「今日はオムライスを作ってみたんだ。男の料理で味は保証しないけど良かったら食ってみてくれないか」


「うん、わかった」


男の料理、というわりに盛り付けは完璧だった。

フワフワ卵のオムライス。ケッチャップで可愛いネコのイラストが描かれていた。


「いただきます。……!」


これ、普通に喫茶店とかで売れるレベルじゃないの!? ってくらい美味しかった。


普通男女のお泊まり会と言ったら女の子が手料理を振る舞って男の子に良いところを見せるはずが、もうこれは完敗。


「黒炎くん。このオムライス可愛いし、味付けも完璧だよ! すっごく美味しい!」


パァーっと笑顔になる私を見て、「朱里の口に合って良かった」と黒炎くんもつられて微笑んでくれた。


「もしかして黒炎くんって昔と同じようにオムライスが好きだったりする?」


小学生の頃、私の家に遊びに来ていたとき私のお母さんから「昼食は何が食べたい?」と聞かれ、毎回「オムライス!」 と言っていたのをふと思い出した。


「ああ、未だにオムライスが好物だな。あの時食べたオムライスが上手くてな…それを真似して今は自分で作るようになったんだ。それに今は食べてくれる人もいるしな!」


「それって、アカリちゃんだよね?」


「ああ、勿論それもあるけどな!」


それ“ も”とは一体どういう意味なんだろう?

もしかして私のこと、なのかな?


黒炎くん、昔の話をするとやっぱり悲しそうな表情をしてる。そういえば、黒炎くんから家族の話聞いたことなかったな。


すると、いきなりガタッ! と洋室から音がした。


「黒炎くん、大丈夫? なにか落ちたみたいだけど」


「驚かせて悪い。たんなるマンガだ、気にしなくていい」


そう言いながら、洋室の部屋に入り漫画を拾う黒炎くん。


ドアは空いたままで、私は洋室の部屋も気になった。もしかしてアカリちゃんのコレクション部屋なのかな? 寝室だけに収まらなかったとか?


だけど、勝手に入るのもなんだか悪いし……私はリビングで食事を食べながら待っていた。


「……そんなに気になるなら、こっちも入っていいぞ」


「え?」


「そんなに痛いくらいの視線向けられたら流石の俺でも気付く」


だったら、私が黒炎くんを好きっていうのも気付いてよ! と内心、不貞腐れていた。


私はひょこっと洋室の部屋を見た。

すると、そこには巻ごとに綺麗に並べられた本が大きな本棚にギッシリ。それと作業机? のようなものがあった。


本を見る限り、同じタイトルのほうが何冊もあった。それはラノベと漫画本ばかりで、本棚だけでも黒炎くんらしいなと感じた。


著者『神崎紅』と書かれた作品ばかりが揃っている。どの本にも付箋が貼られていて大量のメモが……どれだけ読み込んでるんだろう。


『神崎紅』先生といえば中高生に人気で今をトキめく有名な作家だ。ただし、少女向けだけど。

私も多少読んだことはあるけど、まさか少女漫画が黒炎くんの部屋に置いてあるなんて意外だった。


「黒炎くんって、神崎紅先生のファンなの?」


「あー……まぁな」


なんだか歯切れの悪い返事。こんなに大量にあるから好きなのは明白なのに。なんで隠すんだろ。家族のことといい、重要なことは秘密にされてる気がする。


「オムライスも食い終わったし、寝室でゲームでもしないか?」


「うん、そうだね」


まただ、話を逸らされた。わかってはいても、こういうのつらいなぁ。黒炎くんの知らない一面を見るたび、今の黒炎くんのことを知らないんだと実感する。私、幼馴染としてもまだまだだ。


「もしかしてゲームって」


「ああ、朱里が想像してる通りだ!」


ドンッと積み上げられたのはアカリちゃんシリーズのギャルゲー。


「最初のメインヒロインはアカリじゃないけどな! でも、アカリが出てるところは全部見るべきだ。でも、他のヒロインの攻略も感動するシーンがいくつもあったぞ。とりあえず今からやるか!」


「う、うん」


黒炎くんのこと知るって言った以上、どんなことも受け入れるつもり、ではいたんだけど…まさか高校になって初めてのお泊まり会がこれって。


その日、私たちはオールでギャルゲーをした。

当然のように黒炎くんの解説つきで。


……翌日の私が寝不足になったのはいうまでもない。

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