「珍しく会長が自分から話してくれたんだ。なんでも好きなやつがいるからって。断られたけど、諦めきれないって言ってた」
「……」
会長さん、黒炎くんには本当のことは話してないんだ。私が自分で伝えるっていったから黙っててくれてるのかな? って、やっぱり諦めてはいないんだね。
まぁ、告白を断られたからといってすぐに切り替え出来る人なんていないよね。
「なぁ、前は会長の件で聞けなかったけど……朱里の好きな人って誰なんだ?」
「それ、は……」
まわりは賑わっているとはいえ、こんなところでいきなり答えられないよ。それになんだか今日の黒炎くんはやけに積極的というか……。
「黒炎くん。後夜祭のときに話があるから教室に来てくれないかな?」
「わかった。そろそろ午後のシフトの時間だから、また後でな!」
納得してくれたのか、黒炎くんはシフトに戻って行った。
これで、もう引き返せなくなった。今度こそ、気持ちを伝える。黒炎くんのあの様子だと自分のことを好きだって気付いてないよね。
そりゃあ、アカリちゃんのことばかり見てたら私の事なんて……あれ? そういえば最近、黒炎くんからアカリちゃんのこと聞かないな。それにゲームのことも。
黒炎くんがアカリちゃん関連で何も話さないなんて、どうしたんだろう。
(ついに告白する時間が来てしまった……)
後夜祭の時間。日が沈み、あたりが暗くなった頃みんなはキャンプファイヤーの前でダンスをするため外に移動していた。
その頃、私は一人教室にいた。黒炎くんを待っているところだ。今日、私は黒炎くんに告白をする。
鼓動のスピードだけじゃなくて、心も身体も緊張していて、じんわりと汗をかいているのが手に取るようにわかる。
告白をしようと思ったタイミングはあったけどハプニングやら流されたりとなかなか出来ずにいたが、今日は違う。
本当はもっとアカリちゃんのことを知ったり、黒炎くんの過去を知ったりするのが先かもしれない。
だけど、私はわかったんだ。会長さんが私に告白したときに。好きなら自分の気持ちをいち早く伝えるべきだと。
ずっと幼なじみの関係も悪くないかもしれない……。でも、私は黒炎くんとそれ以上の関係になりたいって思うの。そう、正確には黒炎くんの彼女になりたい。
黒炎くんのことが好きだから恋人としていつまでも隣にいたい。
もう、この気持ちは抑えられない……。
「朱里、待たせて悪い。制服に着替えてたら遅くなった」
「ううん、大丈夫だよ」
ガラッと扉を開けて入ってくる黒炎くん。
「それで、話ってなんだ?」
黒炎くんは普通の雑談程度だと思って、特に身構える様子もなく普段通りだ。私はというと、心臓が口から飛び出しそうなほどバクバクしていた。
「これは、冗談とか幼なじみとかじゃなくて真剣な話として聞いてほしいんだけど……」
「あ、ああ……」
「私、黒炎くんのことが好きなの。小さい頃からずっと好きだった……!」
ついに私は黒炎くんに想いを伝えた。外からはキャンプファイヤー点灯の合図が聞こえた。ジンクスなんて信じてるわけじゃないけど、私の気持ち伝わってるといいな……。
怖くてギュッと目をつむっていたけど、返事を聞きたくて黒炎くんを見つめた。すると、黒炎くんの表情は意外なものだった。
「っ……」
「泣い……黒炎、くん。そ、そんなに嫌だった?ごめんね」
黒炎くんはその場に座り込んで、涙を流していたのだ。私はワケも分からず、ただ謝ることしか出来なかった。
「違う、そうじゃないんだ。朱里の告白が気持ち悪いとか嫌だったとかそういうのじゃなくて……今までお前の気持ちに気付かず、ゲームのアカリの話ばかりしてた俺にイラついて泣いてるんだ」
「え……?」
それはどういうこと? もしかして私に悪い事をしたとか思ってるのかな。
「どうして今まで気付かなかったんだ。それなのに俺、勘違いさせるような行動ばかりとって……俺、最低だ」
やっぱり……そうだった。黒炎くんは、もし自分が相手の立場だったらってことを考えて泣いてるんだ。私の好きな人は本当に優しいな。
「黒炎くん、それは違うよ。私はアカリちゃんも含めて、そうやってゲームの話をして楽しそうにする黒炎くんが好きなの。どんな黒炎くんだって、私にとっては……だ、大好きなわけで」
改めて、黒炎くんに二度も好きっていうとなんだか急に恥ずかしくなった。
「ありがとな。……俺は今まで朱里のことを幼なじみだって思って接してきたんだ」
「うん、それは知ってる」
私は黒炎くんが落ち着いて話をしようとしているのを真剣に聞くことにした。
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