その後、店を出た私たちは公園で話すことにした。
(こうしてると、なんだか昔に戻ったみたい)
隣を見ると、イケメンな黒炎くんの横顔。だけど、どこか幼げで。
身長や声が変わったって、性格まで変わることはないんだろう。
そう、思っていたんだけど、現実は違った。
「ねぇ、黒炎くん。ギャルゲー、好きなの?」
「あぁ、好きだぜ! 言ってなかったか? って、無理もないか。俺とお前が一緒だったのって小学生の頃だもんな」
「うっ」
今、槍がグサッと胸に刺さった気分。
好きな人から、まさかそれを言われるとは、なかなかキツい。
「俺、大のギャルゲーオタクなんだ!」
なかなかキツいカミングアウトを黒炎くんは恥ずかしがることなく言い切る。
心なしか、超がつくほど目が輝いているのですが、気のせいだろうか。
いや、きっと気のせいではない。
「ク、クラスメイトと話してる時と随分違うよね?」
さっきから子供っぽい黒炎くんに違和感を抱いた私は聞いてみた。
「そりゃあ、こんなこと話したらドン引きされて高校生活終わりになるだろ? だから、まわりの奴らには秘密にしてるんだ。って言っても、俺と同じギャルゲー好きって人がいたら別だけどな! まあ、あんな学校だし、そんな奴がいるとは思えないけどな。まぁ、お前は小さい頃から俺のこと知ってるしな。変に隠すのもおかしな話だし、こうして打ち明けてるんだぜ」
「え? それって、私が特別ってこと?」
“秘密”という言葉にドキドキするも、自分が特別扱いされているんじゃないかと勘違いしてしまいそうになる。
「朱里、何言ってるんだ? お前は幼稚園から一緒なんだから家族みたいなもんだろ? なんか妹と秘密の共有してるみたいで萌えるよな~!」
「か、家族……」
うん。黒炎くんの言ってることがイマイチ理解できない。
家族ってことは「私のこと……」なんて聞く気にはならなかった。
おそらく、これは黒炎くんの本心なんだろうと納得した。どうやら、私の好きな人は鈍感らしい。
「それより、どうして高校は地元を選んだの?
今、住んでるのってどこらへん? 今度遊びに行ってもいい?」
ギャルゲーの話はよくわからないし、と話題を変えることにした。
「それは……。朱里。俺たちは、“ただの幼馴染なんだ”あの頃とは何もかも違う、変わったんだ。
……もう、昔の俺はいない。それじゃあ、また学校でな」
「え……」
そう言うと、黒炎くんは私の前から去って行った。
え? どうして? 意味がわからないよ。
さっきまで凄く楽しそうに話してたのに。
黒炎くんだって、笑ってたじゃない。私のこと家族だって。ギャルゲーが好きだって。私だから打ち明けたって。
“ただの幼馴染”
まさか、好きな人に言われるなんて思わなかった。
そんなことを言われて、ショックな自分がいた。
だけど、私はそれよりも黒炎くん自身のことが気になった。
聞いたこともないような、重く、低い声。
とても鋭く、冷たい目。
私、あんな黒炎くん、見たことない。
キラキラで眩しい黒炎くん、それが貴方の小さい頃の印象だった。
だけど、さっきの表情はまるで違う。
光なんて一切なく、深い海よりも、さらに深く、まるで闇の中にいるような、そんな印象。
ねぇ、黒炎くん。
私と会ってない間、貴方に一体、何があったの?
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