再会した幼馴染は××オタクになっていました

高校で再会した幼馴染が××オタクになっていた!?私の初恋どうなるの?
退会したユーザー ?
退会したユーザー

七章 文化祭と抑えられない気持ち

28話

公開日時: 2021年1月3日(日) 07:05
文字数:2,189

「今なんて言ったんですか」


「だから会長さんとはお付き合いできません。ごめんなさい……」


夏休みが終わり、二学期が始まった。私は生徒会室で会長さんに告白を断っている最中だ。


「そうですか。わかり、ました」


あきらかに動揺してるよね。いつもより声が上ずってるような気がする。


そりゃあ、そうだよね。私が会長さんの立場だったら、大泣きするよ。


「だけど、これからも私の先輩として仲良くはしてほしいです」


「貴方はわりと残酷なことをさらりと言いますね」


「うっ、すみません。でも、会長さんには感謝してるんです。今までウジウジ悩んでた私が馬鹿らしくなるくらい……会長さんには勇気をもらいました」


そういって私は微笑む。会長さんには凄く申し訳ないことをしてるけど、それと同時に本当に感謝しているんだ。


「どうして僕じゃ駄目なんですか……なんて質問はしません。やっと、覚悟を決めたんですね。その告白が成功することを陰ながら応援しています。僕をフッたんですから、貴方は幸せになってください」


思いの外あっさりと引き下がってくれた? と安堵しながら「ありがとうございます」とお礼を言って教室に戻ろうとしたその瞬間、グイッと腕を強引に引っ張られた。


「僕は案外諦めが悪い性格をしているようです。だから、これからも隙あらば貴方にアタックしますから早急にでも柊黒炎と交際することを勧めます」


ボソッと耳元で囁かれた言葉は、まさかの宣戦布告で……恋の応援をしてくれるのは有難いんだけど、これは一刻も早く黒炎くんに告白しろって事だよね!?


* * *


「というわけで、私達のクラスはメイド&執事喫茶に決まりました〜!!!」


「女子のメイド姿楽しみだなー!」


「文化祭、早く来ないかなぁ」


「私は黒炎君の執事服興味あるかもー!!」


「!」


ボーッとしていた私が我に返ると、文化祭の出し物がすでに決まっていた。


会長さんからの恋の宣戦布告と黒炎くんにどう告白しようか悩んでいたから、いつ教室に戻ったのかすら覚えていない。


定番と言えば定番なんだけど……メイド服着るの初めてだからなんだか恥ずかしいな。


でも、黒炎くんの執事服は興味あるかも。ただ、私だけじゃなく他の女子が黙ってないだろうなぁ。


「裁縫得意な人とかいるー?」


「はーい!」


「じゃあ、班を分けて〜」


意見が飛び交う中、私も自分にやれることがないかと探す。


会長さんにもああ言った手前、黒炎くんに告白しないわけにはいかない。だけど、断られる想像をすると今度こそ立ち直れなくなりそうだ。


それに告白をしたら今までのように、自然に仲のいい幼馴染でいることは不可能だろう。


私はフラれたショックで自分から黒炎くんに話しかけることは難しくなるし、黒炎くんだって私を気遣い気まずくなるだろうし。黒炎くんは優しいから、きっと凄く考えるんだろうなぁ。


「そういや、柊といえば午後からしか学校来ないよなー」


「そう、それ! 黒炎君にあんまり会えなくて残念」


「いるだけで目の保養なのに~」


一人の男子が黒炎くんの話をすると、途端にその話題で持ち切りになってしまった。


そう、二学期が始まってからというもの黒炎くんはあまり学校に来ていないのだ。


理由は……わからない。けれどあの日、抜け出したら良くないと言っていたからそれと何かしらの関係があるのかもしれない。


夏休みが終わったら学校でまた話そうって言ってたから楽しみにしてたんだけどな。それに今回が高校初めての文化祭なわけで……メイドと執事喫茶とか、いかにも黒炎くんが好きそうなイベントなのに。


……あれ? まさか、このまま黒炎くんが文化祭不参加なんてことないよね?仮にもしそうだとしたら私の告白がそもそも成り立たない!


「ねぇ、知ってる? 後夜祭のキャンプファイヤーに火がつく瞬間に好きな人に告白すると恋が成就するってウワサ」


「ロマンチックだけど、なんかありきたりー」


「でも、それで何人ものカップルがその日に誕生したんだってよ!」


「だけど場所指定ないの? なんか曖昧なウワサじゃない?」


「だから、あくまでもウワサなんだって」


「……」


文化祭の準備をしながら、聞き耳を立てつつ女子たちの話を聞いていた。


……そんな噂があるんだ。どの学校にもジンクスやら伝説やらがあるけど、この高校にもそんなのがあるなんて知らなかった。あくまでも噂。それでもすがらずにはいられない。


告白は決めてた通り、後夜祭にしようと改めて決意した。って、黒炎くんが来てくれないと意味がないんだけどね。


* * *


「だから、困りますってば」


「空いている時間だけでいいんです」  


準備をしつつ、あっという間に文化祭当日の朝。始まるまではもう少しだけ時間がある。


あれから黒炎くんを見かけたのは、やはり午後の授業だけ。お昼ご飯も一緒に出来なかったせいか、あんまり話す機会はなかった。


そして今現在、私は会長さんに猛烈なお誘いを受けていた。冗談だと思っていたけど、これは黒炎くんと付き合うまでアプローチ続くみたいで。会長さんとは普通の関係でいたいと思うのは私だけ、なんだよね。


私のクラスに会長さんが来てるだけでも目立つのに、そんなに距離が近いと私までクラスメイトの視線を痛いほど感じるんですけど!?


しかも、相手は仮にもこの学校の生徒会長さんだから、どう対応していいか困る。


今日は黒炎くんとはまだ会っていない。うぅ、黒炎くん助けて……と、心の中で助けを呼んでいた。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート