再会した幼馴染は××オタクになっていました

高校で再会した幼馴染が××オタクになっていた!?私の初恋どうなるの?
退会したユーザー ?
退会したユーザー

32話

公開日時: 2021年1月3日(日) 11:05
文字数:2,232

「まさか、高校で再会できるなんて思ってもみなかった。最初はただの幼なじみだって、そう思ってた。だけど、今ではただの幼なじみじゃなくて、大事な幼なじみだって思うくらいにはなったんだ」


うん、私も最初は思ったよ。高校で再会できるなんてって。私は再会したとき、運命だって思ったけど。


ただの幼なじみって言われて、最初は傷ついて心が折れそうになったことが何度もあったっけ。でも、そのたびに諦めたくないって気持ちが強くなっていった。


「でも朱里を幼なじみから異性として見たことは……正直わからない。ずっと一緒にいるのが当然だったから。……今すぐ返事することは難しい。一週間だけ待ってくれないか」


「うん、わかった」

 

黒炎くんなりに考えた結果なのだろう。長く期間を置くのは相手に罪悪感を抱いてしまうから。でも、異性として見たことはない……じゃなくて、わからないなんだね。


それに少しだけ嬉しさを感じてしまうのは、いい返事を貰えると期待しているからなのか。


「朱里、告白してくれて……気持ちを伝えてくれてありがとう。今まで悩ませたりしてごめんな。少しだけ待っててくれ。しっかりと返事はするから」


「うん、待ってるね」

 

あぁ、私……黒炎くんのこと大好きなんだ。まだ付き合ってもないし、返事をしてもらったわけじゃないのに少しだけホッとしている自分がいる。


それは恐らく告白をしたことで肩の荷がおりたからなんだろう。


どんな結果になっても、今なら受け止められる。だって、私の本当の気持ちを黒炎くんに伝えることが出来たんだから。



それから、あっという間に一週間が過ぎた。


その間の私はとにかく告白のことで頭がいっぱいだった。断られたりしたらどうしよう。これからも幼なじみとしての関係を続けられるのかなど。

授業の内容なんて、右から左に流れていた。


自分の気持ちを言えたのはいいんだけど、次はその次のステップが不安なわけで。


私は屋上にいた。もちろん、黒炎くんもだ。

放課後の屋上。普段なら二人きりでドキドキするはずが、今は別の意味でドキドキが止まらない。


「朱里、返事を待たせて悪いな。告白されてすぐに返事をしたら同情や慰めで付き合ってるって思われそうで嫌だったんだ」


「大丈夫だよ。それで……返事は決まった?」


「ああ、決まった。今回は大事なことだから誰にも相談はしなかったんだ。それこそ相手の意見に流れそうだからな。俺一人で真剣に考えた結果だ……聞いてくれるか?」


「う、うん」


ゴクリと唾をのみこむ。私は断られるのを前提で、ギュッと目をつむってしまう。両手はかすかに震えているのがわかる。


正直、今は怖いの気持ちでいっぱいだ。


「俺も朱里のことが好きだ。だから付き合ってほしい……」


その瞬間、風が強く吹いた。フワッとあたたかいぬくもりに包まれる私。


今、なんて言ったの? 黒炎くんの顔を見ようと思ったけど、何故か目がかすんで見えない。


もしかして私……泣いてるの?


「俺、わかったんだ。自分の本当の気持ちが。最初はゲームのアカリが好きだった。だけど、だんだんと現実の朱里と話したり、触れ合う度に気持ちが揺れ動いたんだ。心があたたかい気持ちになった」


最近、ゲームのアカリちゃんのこと聞かないと思ったらそういうことだったんだね。


……良かった。触れ合うたびにドキドキしてるのが私だけじゃなかったんだ……黒炎くんも私と同じ気持ちで今、私はそれだけで嬉しい。


「会長と仲良くしてるのを見たり、口説かれてるのを見たら嫉妬もした。誰にも渡したくない……いつからか、そう思うようになった。だけど、それは幼なじみとしてだと、ずっと自分の心に言い聞かせてた。だけど、ゲームのアカリが言った気がしたんだ。本当の幸せはすぐそこにあるよって」


「っ……」


本当の幸せが私と付き合うこと? そんなこと言われたら、今までアカリちゃんにヤキモチ妬いてた私がバカらしくなるじゃん。


でも、幼なじみじゃなくて一人の異性として嫉妬もしてくれるなんて、私は黒炎くんの幼なじみとして本当に幸せ者だな。


「だから、改めて言わせてもらう。朱里、俺と付き合ってくれないか?」


私の答えは当然決まっている。


「もちろんだよ。これからは彼女としてよろしくね」


泣いてた涙を拭き、微笑む私。多分、泣きじゃったあとだから目が赤いと思う。


「やっぱりお前の笑顔はすごく綺麗だ」


そういって褒めてくれる黒炎くん。そっと手を私の頬に添え、優しいキスを落とした。


「こ、黒炎……くん!?」


私は驚きのあまり、バッと口をおさえた。一瞬のことすぎて何が起こったのかわからなかったけど、私、今……キスされたんだよね?


「もう恋人なんだからキスくらい当然だろ? それにしても反応が可愛いな」


「ちょ……。今の発言だと、黒炎くんはキス慣れてるみたいな言い方だよ!?」


「ファーストキスは観覧車だったな、朱里と遊園地行ったとき。あのときは俺も驚いた。だから、今のは恋人としての初めてのキスだ」


「っ……!」


なんだか黒炎くんのイケメン度に磨きがかかった気がするのは勘違いではないようで。


「俺に告白したとき、付き合うとかは言ってなかっただろ? だから俺から言ってみたんだが、迷惑だったか?」


「い、いいえ」


「……?」


なんで敬語なんだと言わんばかりの眼差しを向けてくるのはやめてもらいたい。


私は晴れて、黒炎くんの彼女になりました。


小さい頃からの夢が叶って良かったと心から喜んでいた。が、この先、最大の困難が待ち受けていることはこのときの私は知る由もなかった。

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