再会した幼馴染は××オタクになっていました

高校で再会した幼馴染が××オタクになっていた!?私の初恋どうなるの?
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退会したユーザー

9話

公開日時: 2021年1月1日(金) 17:23
更新日時: 2021年1月3日(日) 04:03
文字数:2,771

「生徒会長の如月紅蓮です。下校時間になりました。部活をしている生徒、自主勉強をしている生徒さまざまな事情はありますが、全校生徒すぐに帰宅するように。それと寄り道は厳禁です。以上」


音楽が流れると思いきや、まさかの放送だけ。しかも、生徒会長自ら放送するなんて、この学校はどうなってんの。BGMが一切ないせいで、声だけで威圧感を感じさせた。


外で部活をしていた男子生徒は「やべ、早く帰らないと堅物会長から反省文が来るぞ!」と叫びながら慌てて制服に着替えようと更衣室に走っているのが見えた。


一部ではなんて噂もあったけど、男子生徒のほとんどが「堅物会長」って呼んでる気がする。反省文ってなんのことだろ。


「会長さんの放送もあったことだし、私達もそろそろ帰ろっか」


「ああ、そうだな。って、こんな遅くまで勉強してたのか、気付かなかった。朱里、途中までだけど送るぞ」


「えぇ!? い、いいの……?」


勉強会に続き、今日は帰りも一緒のようです。黒炎くんは「女子を夜道一人歩かせるのは危険だからな」と言って私のことを心配していた。が、スマホの時計を見るも19時。


黒炎くんって、もしかしなくても過保護? と心の中でツッコんだ。


「朱里のスクール鞄ってこれだよな?」


「そうだけど、なんで?」


「朱里のことだから教科書持って帰るんだろ? 重いだろうから持ってやろうと思ってな」


そういうと黒炎くんは自分のスクール鞄と一緒に私のも持ってくれた。


小学生の頃はまだ子供だったのに、今では女の子に気遣いも出来るほど男の子になっていたなんて驚きだ。


「あ、ありがとう」


私達は図書室を後にした。


「それにしても19時で全員帰宅って早くない?」


「あー……。それ、生徒会長の前で絶対言わないほうがいいぞ」


黒炎くんは濁すように言葉を吐きだしたかと思いきや、次に発した言葉は力強かった。


「そういえば、図書室に行く前に会長さんと会ったんだよ。ぶつかったんだけど、自分の不注意ですって謝ってくれたし、私の怪我の心配までしてくれたんだよ。あの時は優しそうに見えたけどなぁ」


まぁ、私が「堅物会長」とか言ったせいで怒らせちゃったから声は少し怖かったけど。


「……女子には多少なりとも優しいってことか」


黒炎くんは納得していない様子で一人でブツブツと言っていた。


「高校入学したばかりなのに会長さんのこと詳しいよね、なんで??」


私は会長さんについて知ってそうな黒炎くんに疑問を抱き、聞いてみることにした。


「そんなに詳しそうに見えたか? あの人、一年の頃から学年一位で学校の規則にやたら厳しくさ。俺たちの間でも有名な人なんだよ。

成績トップだから教師も何も言えなくて、放課後の放送なんかもさっきみたいに任されたり、他にも色々あってだな‥‥」


「そ、そうなんだ」


ただ者じゃないとは思っていたけど、まさか三年間学年トップだったなんて。それに加えて、規則に厳しいって、まさに生徒会長の鑑。


放送部ではなく、生徒会長自ら放送って‥‥そういう事情だったのかぁ。教師が何も言えないってどういうことなの。


実は御曹司で学校に高額の寄付とか? いやいや、今はそういうのも無くなったって聞いたしあるわけないよね。


「っと、ここまででいいか?」


「あ、うん! 送ってくれてありがとう」


「途中までしか送れてないし、むしろ申し訳ないって思ってる」


そこまで気を遣わなくても大丈夫なのに。私の鞄を返そうとするとピコン! と黒炎くんのスマホの音がなった。


「‥‥GW中にも勉強会するなら連絡先教えておかないとな。よし、これでいいだろ。朱里。またな!」


「うん、また明日」


鞄と同時に渡されたのは一枚の紙。そこには携帯電話とメールアドレスが書かれていた。


(これって‥‥)


私は今日黒炎くんの連絡先を知ることが出来ました。今なら羽が生えて空まで飛べそうな気がする。外だからあんまり大きな声で叫べないけど、内心はめちゃくちゃ喜んでいた。


だけどスマホ見て、黒炎くん慌ててたなぁ。

アカリちゃんから早く帰ってきてメール? のわりになんだか冷や汗が出てた気がする。

一体、誰からのメールだったんだろう。


私は寄り道厳禁という会長さんの言葉を思い出し、その日は真っ直ぐ家路に向かった。


「黒炎くん、おはよう」


GW初日。図書室の扉を開けると机に頬杖をつき、私のことを待っている黒炎くんがいた。


朝ということもあり、日光が差し込んできて黒炎くんがいつもより一層キラキラして見えた。


「朱里、おはよう。ちゃんと早起き出来たんだな」


「う、うん。なんとか早起きできたよ」


いつもと変わらないはずなのに、どうしてだろう。こんなにもドキドキするのは。

私は寝癖が気になって自分の髪に何度も触れる。


だって今日は‥‥


「今日は髪おろしてきたんだな。なんか新鮮だな」


「!」


気付いてくれた! 凄く嬉しい。けど、「アカリもたまに髪おろすときあってさ〜!」とアカリちゃんの話題を振られると、とたんに幼馴染という現実に引き戻された気がした。


「えーと、ここは‥‥こう?」


「ああ、正解だ」


「やった!」


勉強会を始めると私は問題を真剣に解き、正解した。正直、黒炎くんの教え方はかなり上手かった。


もしかして、アカリちゃんにもこうやって教えてるのかな? なんて考えると少し複雑な気持ちになる。けど、今はこうして図書室に二人きりなのだから、この時間を楽しまなきゃ!


勉強は嫌だけど、好きな人と過ごす時間はあっという間に過ぎていった。午前中という限られた時間なのが悔しい。本当はもっと黒炎くんと一緒にいたいのに。


「今日はお疲れ様。今詰めすぎるのも良くないって言うし、家に帰ったらゆっくり休めよ」


「うん。黒炎くんも勉強教えてくれてありがとう。すっごく、わかりやすかったよ!」


「ホントか? それなら良かった。だけど、お礼はテスト結果が出てからな。明日は用事があるから明後日でもいいか?」

 

「大丈夫だよ! せっかくのGWを毎日勉強会っていうのもなんだか申し訳ないし」


黒炎くんのいう用事ってアカリちゃんとデートかな? と一瞬、頭をよぎったが言葉には出さなかった。それを言ってしまえば黒炎くん大好きのアカリちゃんトークが目に見えて想像出来るから。


私は「また明後日ね!」と言って学校を後にした。


それから2日に1回くらいの頻度でGWは勉強を教えてもらい、平日は黒炎くんが放課後に空いている日に勉強会をした。

そのかいあってか、初めての中間テストではそれなりの成績は取れた。


この学校は成績が学年50番以内の生徒は名前が教室前に貼り出される。ちなみに黒炎くんは学年3番だった。


まぁ、私はそれなりだから当然のように50番以内に名前は載っていない。偏差値が高い高校でこんなに良い成績が取れる黒炎くんってやっぱり凄い! 


黒炎くんの成績を知ったファンクラブの数はその日を堺に増えていったことを当の本人は知らない。

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