再会した幼馴染は××オタクになっていました

高校で再会した幼馴染が××オタクになっていた!?私の初恋どうなるの?
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8話

公開日時: 2021年1月1日(金) 17:23
更新日時: 2021年1月3日(日) 04:03
文字数:2,375

「今配ったプリントに再来週からのテスト範囲書いてあるからな。GW中は自主学習を怠るなよー」


「‥‥‥」


六時間目も終了し、机にはGW中にやらないといけない大量の宿題とテスト範囲の書かれた紙であふれていた。


黒炎くんにアタックすることばかりで気を取られていたけど、現実は時に非情である。


この学校は偏差値も高いせいか、テスト範囲もかなり広い。授業もノートを取るだけで精いっぱい。


もうすぐ高校初めての中間テストが始まります。

正直なところ、かなりピンチです。


「高校入って、初めての連休なのに酷くね!?」


「だよねー、私もそう思う!」


放課後。クラスはGW明けにあるテストのことでもちきり。私はクラスの輪には入っていかず、図書室に向かうことにした。


とりあえず、静かに勉強出来る場所に行きたい。


「はぁー‥‥赤点取ったらどうしよう」


大量の教科書を持ってブツブツと独り言を言いながら歩いていたその時、ドンッ! と誰かとぶつかった。


「きゃ!?」


思ったよりも可愛い声が出てしまっていた。というより、声が裏返ってた気がする。


あたりには教科書が散らばり、よく見ると難しい文章が書かれた書類? のような物があった。


「貴方は一年の霧姫朱里ですね。怪我はありませんでしたか?」


その場で尻もちをついてしまっていた私に差し出された手。上を見上げると、そこには見たことある人物がいた。


「堅物会長さん!?」


「霧姫朱里。‥‥貴方もそのあだ名で呼ぶんですか」


表情には出てないものの、心なしか声が怖い。どうやら怒らせてしまったみたい。集会で男子が言っていた言葉がインプットされていたらしい。


如月紅蓮、生徒会長さんだ。まさか、こんなところで会うなんて。


「す、すみません! 今すぐ拾います!!」


私は慌てて、会長さんの書類をかき集めた。これ、生徒会の仕事だよね、多分。色々難しいことが書いてあって、私にはよくわからない。


「いえ、自分の不注意でした。霧姫朱里、もう一度聞きます。怪我はありませんか」


「え? は、はい!」


意外と紳士的な人だな。でも、さっきからフルネームで呼ばれてることが気になった私は「まさか全校生徒のフルネームと顔が一致してたりしないですよね〜」と言いながら軽く笑った。


「‥‥‥‥テスト頑張ってください。それとあまり遅くまで学校に残らないように。貴方に怪我がなくて安心しました。‥‥さようなら」


長い無言のあとに会長さんが発したのは私の怪我の心配だった。やばい、もしかして図星だったの? 軽い冗談で言ったつもりだったんだけど。


この学校はめちゃくちゃ生徒数が多い。そんな中で全校生徒の名前と顔が一致してるとか、会長さんって一体何者‥‥。


「さ、さようなら」


堅物会長なんてあだ名で呼ばれてるから、冷酷なイメージがあったけど、普通に優しい人だった。

でも、会長から頑張れなんて応援されると逆にプレッシャーが‥‥。


ますます勉強を頑張ろうと思った私は図書室に足を進めた。


「ここ、どうやって解くの‥‥」


図書室で勉強を始めて15分ほどが経った頃、私はわからない問題にあたり苦戦していた。


「朱里? 帰ったんじゃなかったのか?」


「こ、黒炎くん!?」


後ろから声をかけられ驚く私。秘書さんから「静かに」と言われ「すみません」と遠くから頭を下げるジェスチャーをした。だけど、まさか黒炎くんが図書室にいるなんて意外だった。


「すぐに教室を出て勉強してたの。実はテスト範囲でわからない所があって‥‥」


「朱里は真面目だな。で、どこがわからないんだ?」


私の隣に座り、そのままこっちに近付いてきた黒炎くん。


耳に息がかかって、くすぐったい。っていうか、近すぎる! 


「ここ、なんだけど」


「ああ、それはこの公式を当てはめれば解けるぜ」


「ありがとう! 黒炎くんってもしかして家で勉強してたりする?」


はっ! この質問はまずかった。と後悔しても既に遅かった。


「家ではギャルゲーばかりだな! 授業聞いてれば大体わかるだろ?」


恥ずかしげもなく、ギャルゲーの話を出す黒炎くんは本当に凄い。別の意味で尊敬するよ。


「え‥‥自主学習とかってしないの?」


「‥‥?」


黒炎くんは「なんのことだ?」と言わんばかりに頭を傾げていた。もしかしなくても、私の好きな人は勉強も出来る完璧な人では!? と思ったけど前言撤回。世の中に完璧な人なんていないよね。


「流石に遅くなるとアカリに心配かけるから、少しの時間なら俺がわかる範囲で勉強教えてやれるぞ」


「是非お願いします!」


ここは同級生だろうと好きな人だろうと恥を捨てる覚悟だ。私は黒炎くんの空いてる時間に勉強を教えてもらうこととなった。


これって、今考えたら好きな人とお勉強会ってやつなのでは!? と心の中で喜ぶ私だった。


「あ、でも明後日からGWに入るな。GW中でも午前中だけだが図書室は開放してくれるみたいだし、教えてやれるがどうする?」


「ま、毎日早起きは難しいかも‥‥」


黒炎くんからせっかくのお誘いなのに朝が弱いせいで断ってしまった。今、すごく勿体ないことをしてしまった気がする。


「休みモードに入ると起きれなくなる癖、なおってなかったんだな。小学生の夏休みの頃もそんな感じだったよな。って、GW中毎日学校来るつもりだったのか?」


「誰だって休日の時くらいゆっくり寝てたいよ。そ、それは……」


(黒炎くんに休みの日も毎日会えると思うと嬉しいよ)


なんて思っていたけど恥ずかしくて言葉には出せなかった。黒炎くんには「真面目だな」って言われたけど、それは違う。勉強はあくまでも二の次。


本当は勉強を口実にして黒炎くんに会えるのが楽しみ……って、そんな悠長に身構えていたらそれこそ赤点まっしぐらコースな気がする。


他愛もない会話をしつつ、勉強を続けた。わからないことがあれば、黒炎くんに聞くという形で。解く前から全部教えてもらっていたら、自分で勉強したって言えないしね。

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