神奈さんとアメリちゃん

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第三百五十一話 雨の日に その二

公開日時: 2021年9月14日(火) 21:01
更新日時: 2021年10月16日(土) 10:39
文字数:2,411

「まりあさんは、やはりこちらをよく使われるんですか?」


 宇多野家に近いほうのスーパー、「さわき」さんに到着。駐車し、さっそく店内へ入りました。幸い、まだ雨は降る前。


「はい、近いですからね。雨の日は割と身動きができなくなるので、別の宅配も併用しているわけですけど」


 二人でカートを押しながら、店頭の野菜売り場を見る。


「こちらはこないだ一度来たきりなんですけど、おすすめは何でしょうか?」


「わたしはほかのお店をほとんど使いませんから比較しづらいですけど、お野菜もお魚もお肉も美味しいですよ」


「そうなんですね」


 店頭に並んでるのは根菜類やおナス、バナナなど。まりあさん曰く、葉物は基本的に店内にあるそうな。


 昼にアメリに教えるのはたまごサンドと決めているけれど、さすがに夜ぐらいは私が作りたい。何を作ってあげようかな。


「アメリ。夜は私が作るけど、何か食べたいものある?」


「なんでもいーよー!」


 おなじみの力強いお言葉をいただいてしまった。困りましたね。


 あ、そうだ。


「まりあさんは、もう今日の献立は決まっていますか?」


「そうですねえ……。とりあえず和食ということまでは決めています」


 ふむ。


「じゃあ、うちも同じもの作ってみます。お買い物、ご参考にさせてください」


「あら、責任重大ですね。きちんと考えて買わないと」


 口に手を当て、ふふと微笑むまりあさん。というわけで、同じコースを回ることになりました。


「五月はカブが美味しいのよね。クロちゃん、カブどうやって食べたい?」


「うーん、煮物かなあ?」


「じゃあ、同じ旬の絹さやと一緒に煮物にしましょうね」


 外でカブを。中に入り、絹さやをかごに入れるまりあさん。私もそれにならう。


「あとは、油揚げ買っていきましょうね」


 日配品コーナーで薄揚げを買っていく。東京の人は、薄揚げだけを油揚げと表現するので、今でもたまーに混乱する。ともかくも、私も薄揚げをかごへ。


 続いて、鮮魚コーナーへ。


「あら、これは……。神奈さん、イサキですよ」


「あら~、いいですねえ」


 たしか、これも旬のものだ。


「これ、捌いてもらいましょう。すみませーん」


 奥の調理コーナーに声をかけるまりあさん。どうやらこちらでも、例のスーパーのように簡単な処理をしてくれるようだ。三枚下ろしをお願いする彼女。私も、ついでだし頼んでしまおう。


「神奈さん。せっかくですから、缶詰なんか買ってしまってもいいでしょうか」


「はい、うちでは特に必要ないですが、まりあさんが買われるぶんにはご随意に」


 うちには、セールのときに買い込んだ缶詰が割と大量にある。


「ありがとうございます。こういうときでもないと、重い物は運べませんから」


「なになに、お安いご用ですよ」


 というわけで、大豆やひじきといった缶詰を買い込まれる彼女。


 再び鮮魚コーナーに戻り、三枚おろしにしたイサキを受け取る。両方オスのようで、卵は楽しめないようだ。イサキの卵、美味しいんだけどな。まあ、白子は白子で美味しいからいいか。


「ちなみに、こちらはどのような調理を?」


「そうですねえ……。塩焼きか、煮付けを考えています。お刺身もいいですね」


 ふむふむ。うちもその三択から決めてみるか。


 その後、調味料も買っていくまりあさん。車がとにかくありがたいようで、またお礼を言われてしまいました。


 お肉は買っていく予定がないようで、スルー。代わりに、冷凍のお野菜やコロッケを買われていきました。このへんも、私たちには必要ないかな。


 最後に、お米五キロとクロちゃんのおやつとしておせんべいを買われる。


「アメリも、なんかおやつ買う?」


「おお~……。カーネーションでお金使っちゃったから……」


 しょんぼりアメリちゃん。


「いーのいーの。これぐらい普通に買ってあげる」


「ほんと!? じゃあ、プリン食べたい!」


 ほいほい。


「まりあさん、ちょっとデザート売り場に行ってますね」


「日配品があるほうですね。わたしたちも牛乳とか買いますから、一緒に行きましょう」


 というわけで、こちらでも三種の神器とプリンを購入。宇多野家も和食しか食べないわけじゃないのね。当たり前か。


 ここのお店にも幸いマスペがあるので、コラ・コーラと一緒にかごへ。


 両家とも買うべきものを買い終わり、お会計。荷詰めの後、カートに乗せて車まで運んでいきます。


「神奈さん、すみません。もう少しお付き合いよろしいですか? あちらのドラッグストアでティッシュとトイレットペーパー買ってきたいんです」


 一緒にトランクに本日の成果を入れながら、尋ねるまりあさん。ドラッグストアは、この駐車場を挟んでスーパーの反対側にある。


「はい。大丈夫ですよ。車内で待ってますね」


 カートを置き場に戻して、アメリと一緒にお留守番。


「おお? おねーちゃん、雨降ってない?」


 言われて地面を見ると、アスファルトにポツポツとシミが。


 ありゃー。本降りになる前に、まりあさん間に合うかしら。


 ドラッグストアの入り口を注視してると、まりあさんとクロちゃんが出てきました。二人とも降雨に気づいたようで、慌ててこちらに向かって来る。


 まりあさんが到着すると、トランクをオープン。


「降ってきちゃいましたー」


「ですね。おうちに着いたら、お荷物運ぶの手伝いますよ」


「重ね重ね、ありがとうございます」


 というわけで、宇多野家へ!


 なにぶん、まりあさんが歩いていける距離だから車だとすぐだけど、雨中これを徒歩だと辛いだろうなという感じの距離。


 ともかくも、四人がかりで大急ぎで荷物をピストン輸送!


「本当に、今日は助かりました。雨中あまり足止めしても悪いので、簡単で失礼します」


「はい。また、こういうときは気軽にお声がけください。それでは」


 互いに手短に別れを告げ、一路我が家に。おーおー、降りが激しくなってきたなあ! ありゃ、ギリギリのタイミングだったね。


 幸い私たちの荷物は多くないので、傘を差しながら持って帰れる。


 たっだいまー!


 それじゃ、たまごサンドの指導といきましょうか!

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