神奈さんとアメリちゃん

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第二百七十六話 ノーラとの一日 その二

公開日時: 2021年6月30日(水) 21:01
更新日時: 2021年8月24日(火) 19:52
文字数:2,092

 お、ごはんの炊きあがりを知らせるアラームが鳴りましたよ。二人のお姫様は踊り疲れて、紅茶を飲みながらおしゃべりしています。ジュース類はもう切れてしまいました。


「さーて二人とも、キッチン行きましょーう。それとも、二人で遊んでる? そっちでもいいけど」


「おお~。行くよー」


「アタシもー」


 ほいほい。それじゃあ、子ガモたちを連れて、てくてくキッチンへごー!



 ◆ ◆ ◆



「さて、アメリシェフ。今日はお料理する元気ありますか?」


「あるよー!」


 おお、今日も意気軒昂いきけんこうですこと。


「ふむ。それじゃあ、今日も手伝ってもらおうかな! バテちゃったらいつでも休んでいいからね」


「はーい」


 エプロンを締め、調理器具を並べる私たち。


「なー、アタシもなんかやりてー」


「んー。ノーラちゃん、包丁使ったことある?」


「ないぞ!」


 それじゃ、ちょっとお任せできないなあ。


「ごめんね。私白部さんからノーラちゃんのこと任されているから、危ないことさせられないの。調理器具が使えるようになったら、そのときお願いね?」


「うう~……」


 しょんぼりするノーラちゃん。困ったな。


「うーん、そうだなー……。玉ねぎの皮剥きで良かったらやる?」


「やるやる!」


「それじゃあ、皮剥きをお願いしましょうか。アメリ、鶏肉のほうをお願いできる? 食べやすい大きさに角切りにしてもらいたいんだけど」


「任せて!」


 というわけで、分担作業が始まりました。お米を切り、いつもの脳内BGMスタート!


「では、皮剥きをお願いします、ノーラシェフ」


「皮剥きなら任せろー! ……終わっちゃったぞ」


「ごめんね、活躍これだけで」


 申し訳ないけど、次の作業工程に進ませてもらう。玉ねぎを薄切りにさくさく切っていく。


「うおお~。カン姉、目が痛い!」


「あー、ごめんね。ダメそうだったら寝室に戻って大丈夫だから」


「二人と一緒にいたいから耐える~」


 意外と寂しがり屋さんなのかしら。思えば猫時代、白部さん不在がちだったものねえ。


「りょうかーい。頑張り屋さんだねー」


 さて、薄切りを再開。……完成! トマトも食べやすい大きさにカット。


「できたー!」


 お、アメリシェフも完成しましたね。


「じゃあ、あとは私の担当かな。休んでてね」


「はーい」


 まずは、オニオンスライスひと玉ぶんを耐熱ボウルに入れて十二分じゅうにふんレンチン。


 その間に鶏もも肉を炒め、しっかり火を通す。そして、イタリアンハーブミックスと、ハーブソフトをパッパッ。こんなもんかな。


 炒め終わったら、レンチンが終わるまで、火を止めて休憩。三人で恐竜解説動画を眺める。二人とも、興味津々ね。


 お、レンチン完了~。鶏肉と玉ねぎとトマトを耐熱皿に移し、とろけるチーズを載せていく。


 オーブンを温めて予熱を作り、二百五十度で五分ごふんレンチン~。


 ……ちーん!


「はーい、鶏もも肉と野菜のチーズ焼きでーす」


 完成品を鍋敷きの上に置くと、二人が「おお~!」と瞳をキラキラ輝かせる。ほほえま!


 お皿に盛り付けた後、ごはんと麦茶も配膳し私もエプロンを外して着席。


「はい、それじゃーみんなで一緒に。いただきます!」


「「いただきます!」」


 ぱくっとな。もぐもぐ……おお、アツアツで具材の相性も抜群! イタリアン風味で、ハーブが実にいいお仕事をしています。


「うめーっ!」


 ノーラちゃんがおなじみのシャウト。


「気に入ってもらえたみたいね。良かった良かった」


 ストレートな反応に微笑む。


「アメリも美味しいと思う!」


 なんか対抗意識を燃やすように、うんうんうなずき力強く称賛するアメリ。


「ありがとう。アメリもお手伝い偉かったよ」


 彼女にも微笑みを向けると、「えへへ」と照れる。可愛いなあ、もう。


「アタシも料理、教えてもらおうかなー……」


「いい心がけだと思うよ。白部さんに相談したら、喜ぶんじゃないかな」


 「おー!」と瞳を輝かせる彼女。


「さて、歯を磨くけれど……。ノーラちゃん、歯ブラシって持ってきてる?」


「ルリ姉に持っていきなさいって言われたから、持ってきた!」


「じゃあ、みんなで歯磨きしましょ」


 こうして歯磨き後、私は執筆、子供たちは遊びに打ち込むのでした。二人の共通の趣味だからか、やはり恐竜の名前がよく会話に出てくる。


 思えばアメリがこんなに恐竜好きになったのも、帰省のとき駅前の恐竜像を見せたのがきっかけだった。私があの思いつきをしなかったら、アメリは今こうして恐竜トークをお友達としていないかもしれない。


 私も、落選したときあのバスケ漫画に励まされなかったら、今こうしていない。人間も、猫耳人間も、何がきっかけになるかわからないものだなと、筆を走らせつつぼんやり考えるのでした。



 ◆ ◆ ◆



 ふとPCの時計を見ると二時過ぎ。


「んーっ……。二人ともー、新しいジュースと晩ごはん買いに行かないー?」


 伸びをしながら椅子を向け、二人に訪ねる。


「おおー。新しいコーラ欲しい!」


「おー? 買い物するのか!?」


 キラキラ瞳を輝かせるお嬢様たち。


「それじゃあ、行きますかー。アメリー、お着替えしましょ」


 何しろ、朝起きたまんまのスウェットだし、ノーメイク。アメリも部屋着だ。


「ノーラと一緒にお買い物だー!」


 着替えを始めるアメリちゃん。さーて、今晩は何にしましょうかねー?

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