「いやー、ついに海ですね、海! 明日はいい天気だそうで、今から楽しみです!!」
優輝さんのバンザイ猫スタンプ。おおう、朝からテンション高いですねえ。いつものように、朝のチャット中です。
しかし、もう明日かー。時間が経つのが早い。今日中に、やるべきことやっとかなきゃ。
ちなみに、場所は横浜にあるビーチ、「海の楽園」に決定しています。五人乗れる車を持ってる私が近井さんご一家を、白部さんがまりあさんたちを連れて行く手はずになっています。
明日に備え、今日は勉強会もお休みで、体力温存。
検索エンジンでルート検索し、一番距離が短いルートを選ぶことにしました。一番早いのは十五キロほど余分に距離があるのに、四分しか違わなかったからね。一番走行距離が短くて、二番目に早いルートで行きまっしょい。
あーとーはー。日焼け止めよーし! 水着よーし! 着替えよーし! 浮き輪とポンプよーし! ごはんは、優輝さんたちがバーベキューを予約したので、朝食だけでヨシ! なんかあったら、SAなりPAなりに寄ればいいしね。
おっと、アメリちゃんといえば砂遊び。バケツとスコップも忘れずに!
それと、バーベキュー用の飲み物はかくてるの皆さんがご用意してくださるとのことで。アメリや近井さんたちが飲むのを、明日ドリンクホルダーに挿しておきましょ。
あと、なんかないかな? 皆さんに相談してみよう。
「ビニールシートはあったほうがいいと思いますよー。うちからも、余分を見て持っていきますけど」
と、優輝さん。そうね。重しと一緒に持っていきましょ。
「ビーチパラソルは、あいにく一本しかないですけど」
持ってるだけですごいと思います。ほんとに、レジャー好きなんですねえ。
「ほかには、ビーチボールも持っていきますよー! スイカとバットはどうしようか、悩んでます」
すごいな。さすがイベント大好きガール。
「わたしたちは、水着と浮き輪とポンプと着替えぐらいでしょうか?」
相乗り組のまりあさんが確認してくる。
「そんなもんでいいと思いますよ~」
優輝さん、実に生き生きと仕切ること! ほんとに、血が騒ぐって感じなんだろうなー。
あとは、ビーチのHPを下調べしておこう。へー、ビーチバレー場にサッカー場なんてのもあるんだ。
「サッカーしてえなー」
それらのことを書いたら、ノーラちゃんが反応。
「残念だけど、他の人がサッカーシューズもレガースも持ってないからねえ」
そう返す白部さん。ノーラちゃん、しょんぼり猫スタンプ。
「ビーチボールだけど、そっちで遊ぼうぜ、ノラ子!」
サムズアップ猫スタンプで元気づける久美さんに、ノーラちゃんも同じスタンプで応える。仲良き師弟コンビ哉。
「おねーちゃん。アメリ、なんかやっておくことある?」
LIZEでははなく生のほうで、ベッドに腰掛けてスマホを見ていた娘に問われる。
「特にないと思うよ。強いていえば、早めにぐっすり寝ておくことかな」
「わかった!」
元気なお返事。良き哉良き哉。
私も、明日いっぱい遊ぶからって、無理に仕事しないようにしないとね。アメリと同じ、九時に寝よう。
また思いついたことがあったら、適宜話していきましょ。
そんじゃあ、無理しない程度にお仕事がんばりまっしょーい!!
◆ ◆ ◆
「おはようございます」
近井家の前で車を停め、連絡を入れて車内で待つことしばし。おなじみ近井さんと、ともちゃん。そして、柔和そうな雰囲気をまとった、近井さんと同い年ぐらいの男性がご挨拶してきました。
「おはようございます。今トランク開けますね」
トランクを空けると、近井さんと男性がそれぞれ荷物を入れる。
そして、男性が助手席に、近井さんがチャイルドシートをセット。ともちゃんを座らせ、シートベルトをかけます。その後は、右側にご自身も着席。
「はじめまして。お話は、妻からかねがね。近井良夫と申します」
「はじめまして。猫崎神奈と申します。ええと、近井さんじゃ紛らわしいですよね。初対面で恐縮ですが、良夫さんとお呼びしても?」
互いに、頭を下げてご挨拶。
「はい。それでお願いします」
「では、近井さん……とと、奥さんは親子さんとお呼びしますね」
「わかりました」
「では、あまり長く路駐してるわけにもいきませんので、出しますね」
というわけで、カーナビをセットして発進するのでした。
◆ ◆ ◆
「良夫さんは、免許持ってらっしゃるのですか」
道中、運転免許に話が及んだ。
「ええ。社用で使いますので」
「すみません。てっきりご夫婦揃って無免かと」
「まあ、そう思われるのも無理ないですよね。自家用車はなくていいかと思ったんですけど、失敗しました」
あははと、後頭部を撫でる彼。
なるほど。お話通り、のんびりした方だ。
「私、下の名前が親子でしょう? そして、結婚したら『チカチカ』になっちゃいまして。学生時代の友人や元同僚から、そんな愛称で呼ばれるようになってしまいました」
近井さん改め、親子さんとも談笑。楽しいご夫婦だ。ともちゃんの、屈託のない性格のゆえんがわかった気がする。
高速道路に入ったら、さすがに私は無言。喋りながら百キロとか出せる自信はありません。
幸い、周りが喋ってても気が散らないという特技のおかげで、近井さんご一家とアメリには、自由におしゃべりを楽しんでもらってます。運転に集中してるから、何喋ってるのかまでは頭に入ってこないけど。
途中、PAに寄りながら、目的地に到着! 海独特の匂いが漂ってくるぅ~!
「着きましたー」
駐車場に車を停め、エンジンを切る。
「お疲れ様でした。ありがとうございます」
近井さんご夫妻から、ねぎらいのお言葉をいただく。
「友美も、ちゃんとお礼言おうね」
親子さんが促す。
「ありがとうございます!」
ともちゃんがペコリと頭を下げるのが、バックミラー越しに見える。
「どういたしまして」
「おお? ありがとーございます!」
アメリも真似してお礼。
「アメリも、ありがとう。じゃあ、行きましょうか」
子供たちの可愛いムーブに微笑みながら下車し、必要な荷物をトランクなどから出して、海へと向かう用意をするのでした。
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