「おねーちゃん、ちょっと疲れた……」
アメリの声に、はっとなる。スマホで時刻を確認すると、すでに一時間半近く経過! やってしまったあああああああっ!!
ああ、どうして私はアメリの撮影を始めるとこう……。
「ごめん! あーもう、またやっちゃった……。ローストビーフ作るから、ゆっくり休んでて」
「おお? ローストビーフ?」
「うん。白部さんたちにも配るのー。美味しいよー。楽しみにしててね」
「はーい」と、ベッドで買いたてほやほやの本を読み始めるアメリを背に、キッチンへ。新しいベッドは、明日到着かー。
さて、今回は一人でれっつ・くっきーん! レシピ動画と脳内BGMスイッチオン!
ありゃ、今から漬け込みになるのか。失敗したなあ。まあ、時を巻いて戻す術はないとどこかの偉い人が言ってた気もするし。グダグダクッキングと参りましょう~。
まず、お肉の塊にフォークでぷすぷす穴を空けまして。塩胡椒にチューブにんにくをすり込み~。
で、チューブにんにく、塩、胡椒、お醤油、料理酒、みりん、はちみつ、中濃ソースをお肉と一緒にジッパー付きビニール袋に入れて、よーくもみもみ。
後は冷蔵庫で一時間寝かせるのか。
えーと、しゃぶしゃぶ用のご飯を炊く時間も計算して……。うん、間に合いそう。ただ、今度はうっかりしないようにしないと。
◆ ◆ ◆
「ただいまー」
「おお? もうできた?」
上半身を起こすお嬢様。
「あはは。私が撮影に熱中しちゃったから押せ押せで……まだなの」
苦笑し、アラームをセットして「フリアト」を立ち上げる。
こっちもこっちできちんとやらないと、真留さんと芦田さんにご迷惑がかかるもんね。
すいすい、すらすら……。お、一時間経過。
えーと、今度は袋ごと室温で三十分放置か。
執筆再開~。さらさら~っ。
おっと。三十分経過~。行ってきまーす。
えっと? お肉を取り出し、たれを六百ワット電子レンジで一分半加熱か。うちのは五百だから、一分五十秒ぐらい?
一方、お肉はフライパンで外周を強火で焼きます、と。
ふう、できた。これをもう一回袋で揉むのか。あちち、ミトンでやらないとダメね。
で、炊飯器くんにポットのお湯と一緒に入れて、保温モードで四十分放置~。ふう。
◆ ◆ ◆
「ただいまー」
「おお!? 今度こそできた!?」
「あー、もうちょっと待ってね」
すると、アメリちゃんがっかり。楽しみにしてるとこ、ごめんね。私の悪癖のせいで……。
ともかく、気を取り直して原稿執筆! ……していると、四十分経ちました!
「お、できた」
「おお、食べる!」
「あ、氷水で冷やす必要があるらしいからもうちょっとね。でも、すぐできるから一緒に行こう」
「はーい!」と元気に後をついてくるお姫様を引き連れ、キッチンへ。
さて。今度は氷水を作って、と。じゃぶん。
「……できた?」
「まだまだ」
氷の溶け具合を確かめながら、首を横に振る。
「……そろそろいい?」
「もう一息」
待つことしばし。
「……ん、冷えたみたいだよー」
「やったー!」
「切るのはアメリちゃんやる?」
「やるー!」
というわけで、薄切りにチャレンジしてもらいます。
……おお、上手上手!
「お見事です、アメリシェフ!」
「えへへー」
ミケちゃんみたいに胸を反らすお嬢様。可愛い。頭を撫でると、「うにゅう」ととろけた顔になる。
「さてと。炊飯器くんには引き続きお米の浸水を頑張ってもらうとして、少し食べる?」
「うん!」
キラキラ瞳を輝かせる。ほほえま!
というわけで、五切れずつお皿に取る。
ぱくっ。……お肉の旨味がギュッと詰まってて美味しい!
「美味しい!」
実食して、さらに瞳を輝かせるアメリちゃん。良き哉良き哉。
「じゃあ、皆さんに配りましょ」
LIZEで訪問の旨を問うと、全員ご在宅のこと。さっそく配って回ると、たいそう喜ばれました。
ラストはまりあさんにお届けしてフィニッシュ!
「もっと食べたかったなー」
「また今度作ってあげるからね。お楽しみに!」
「おお~!」という声とともに、バックミラー越しにキラキラお目々が見える。今日は良くキラキラするね。
◆ ◆ ◆
ちょうど浸水も終わったので、炊飯ボタンを押す。あとは、寝室で執筆再開。
ふう、今日遊び過ぎちゃったぶんは何とかカバーできたかな? 誰かが作業時間を決めてくれる仕事じゃないから、いろんな意味で自己管理力が問われるねー。
すらすらと筆を走らせていると、スマホが炊きあがりをお知らせ! そんじゃー、本日のメインディッシュを作りにいきまっしょい!
「さて、引き続きしゃぶしゃぶを作るですよ、アメリシェフ」
「おおー!」
レシピ動画をセットして、再度脳内BGMをスイッチオン! 今回はカセットコンロ先生に大活躍してもらいます!
「じゃあ、水菜としいたけとえのきを任せちゃおうかな。水菜は春菊と同じ感じで。しいたけは石突きを取って、上にバッテンの切れ込みを入れてね、えのきはいつもの要領でオーケー」
「はーい!」
こちらはお肉を食べやすい大きさに切って、白菜をざく切りに、おネギは斜め切りにする。ごはんも切っておきましょー。
土鍋にお湯を沸かし、顆粒の昆布だしを溶いたらポン酢のお皿をとごはんを置き、エプロンを外して対面に着席。
「じゃあ、まずはお肉を入れてゆすぎましょう~」
しゃぶしゃぶ。しゃぶしゃぶ。
「あとは、ポン酢で食べるのよ」
ぱくっ! うん、シンプルに美味しい! やっぱ、いいお肉は違うわー。
アメリも、「美味しい美味しい」とキラキラお目々。今日は、いっぱい輝いてるね! 良き哉良き哉。
「次は、お野菜をいただくですよ」
お肉がなくなったのでアクをすくい、お野菜を火の通りが悪いものから順に茹でていく。
茹で上がっては食べ、茹で上がっては食べ。うーん、お野菜も美味しいわあ~。
「「ごちそうさまでした!」」
仲良く食べ終わりました。ふう、汗だく。ストレッチ後のお風呂が恋しい。
今日も、美味しいごはんに感謝!
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