神奈さんとアメリちゃん

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第二百四十八話 ほっとシチューと、ぶんすうきょうしつ

公開日時: 2021年5月30日(日) 21:01
文字数:2,884

「ばいばーい、またねー!」


 玄関で手を振り、二人を送り出すアメリ。名残惜しいけれど、お別れの時間です。


「またなー!」


「バイバイ。またね、アメリちゃん」


 アメリに別れを告げたお二人を門まででお送りし、今度は私が別れを告げる。もう、だいぶ外が暗い。


「今日は、アメリのためにありがとうございました」


「いえいえ。こちらこそ、ノーラちゃんが勉強を教えてもらって。ほかにも、分数のことなど実りが多かったです」


「アメリの教え方、わかりやすい!」


「では、失礼しますね。またいずれ」


 二人とも改めて私に別れを告げ、お向かいの扉に消えていきました。


 さて、晩ごはんの買い出しだねー。今日は何にしましょうね?


「アメリー、ただいまー。お買い物行くから着替えましょー」


「おお~」


 アメリも、部屋着だとちょっと門まで出ることもできなくて難儀だな。いっそカミングアウトしてしまおうかなんていう考えが頭をよぎる。


 いや、ダメよね。私の短気でアメリやほかの皆さんに迷惑かけるのはいけない。



 ◆ ◆ ◆



 気分一転、いつものスーパー! チラシチェックでございます!


 牛スネ肉、じゃがいも、玉ねぎ、人参、あとはカレー・シチューなんかがお安いですと。ほむほむ。これはカレーかシチューを作りなさーいって言われてるようなものね。


「アメリー。カレーとシチューだったらどっち食べたい?」


「おお? んー……寒いからシチュー!」


 はいな。じゃあ、シチューに大決定で。ホワイトシチューは前作ったし、今度はドミグラスのほうにしてみようかな。


 すると、主食にロールパンもほしいよね。あとは、ブロッコリーとマッシュルームも買って……。調理用の赤ワインも買っときましょ。


 ふむ、こんなもんですかね。


 アメリに何か買いたいものはないか尋ねると、特にないとのことで、お会計~。



 ◆ ◆ ◆



 ただいまっと。ふう、今日は出るのが遅かったから、もう夕食の用意だ。よく考えたら、アメリがカレー選んでたら炊飯で晩ごはんすごく遅くなってたわね。


「じゃあ、役割分担で作っていきましょっか」


「はーい!」


 では、いつもの脳内BGMスタート!


「アメリちゃんにはー……玉ねぎ、人参、マッシュルームを切ってもらおうかな。玉ねぎはくし切り、人参は乱切り、マッシュルームは薄切りで」


 動画を見せながらオーダーを出す。


「わかった!」


 というわけで、調理開始。まず、じゃがいもの芽を取り、皮を剥いて食べやすい大きさにカット。続いて、ブロッコリーもつぼみの部分を切る。最後にスネ肉を食べやすい大きさにカットし、塩胡椒を揉み込み、圧力鍋にバターを引き、スネ肉を強火で焼く。


 いい感じに炒めたら、赤ワインで煮詰める。そして、ブイヨンと水を入れてローリエを浮かべたら、加圧して十五分煮込みまーす。


「できたー!」


「ほいほい。ちょーだいね。ふう。一休みですよ、アメリちゃん。お疲れ様」


「はーい」


 というわけで、タコの動画を見る私たち。なんか謎チョイスだけど、アメリが見たいっていうんですもん。


「おお~……タコすごい」


 タコが瓶の蓋を開けている動画が映っている。いやー、器用というか頭いい。これ、分類的にはアサリと同じ軟体動物なのだから、生物の世界は面白い。アメリが生物道にハマった理由がなんかわかる気がする。


 こんな感じでタコを中心に魚介類の動画を見ていると、タイマーが鳴りました!


 減圧して、玉ねぎ、人参、じゃがいも、マッシュルームを入れたら、さらに十分じゅっぷん加圧。


 今度は、セキセイインコの動画を見て過ごす。小鳥も可愛いよねー。昔、りんちゃん幼馴染がセキセイインコを飼ってたけど、人懐っこい子だったなあ。りんちゃんによると、セキセイも一羽一羽ずいぶんと個性があるらしく、実際飼ってみないとその魅力はわからないかも。とのこと。


 逆に私は、りんちゃんに猫の魅力をよく説いたものです。


 おっと、タイマーが鳴りましたよ。減圧してローリエを取り出し、ルウを割り入れて弱火で十分じゅっぷんコトコト。同時にお湯を沸かし、ブロッコリーを茹でる。


 あとは、ほど良く煮込まれたシチューにブロッコリーを入れ、ロールパンを軽くレンチンしたら完成~!


「お待たせー! 出来上がりだよー!」


「おお~。お腹すいた~!」


「今、配るからね~」


 配膳し、紅茶をれて対面に腰掛ける。


「「いただきます!」」


 さっそく、お肉をぱくっ! う~ん、圧力鍋のおかげでとろ~り。じゃがいもも人参も、ほっくほく! 玉ねぎはこれまたとろりと甘く、マッシュルームがお肉と合うこと!


 ここでほんのり温まったパンを食べると、実に良し。


 アメリも、美味しい美味しいと大喜び。良きかな良きかな


 仲良くごちそうさま。後片付けの後、寝室でアメリに切り出す。


「アメリ。分数のお勉強進めてみない?」


「やるー!」


 おお、元気元気。相変わらず向学心が強いことで。


「今回はちょっと軽めの内容ね。仮分数と帯分数っていうんだけど」


 紙に、五分の五と五分の十二を書く。


「これが仮分数。漢字で書くとこう。要は、一より大きい状態の分数なんだ」


「おお~?」


 例によって、ブロックに登場願う。


「このブロック二つの塊が一だとするね? 半分にすると?」


 ブロックをぱかっと分ける。


「二分の一!」


「正解です。じゃあ、二つにすると?」


 ブロックを再度合体。


「二分の二!」


「また正解! じゃあ、さらにブロックをくっつけると?」


 ブロックをさらに一個合体。


「えーと……二分の三?」


「またまた正解です! こういう風に、一かそれより大きい状態の分数を仮分数っていうのね。で、帯分数なんだけど……」


 三つのブロックを二と一に分ける。


「この二個は二分の二。この一個は二分の一。この状態だと、一が一個と二分の一が一個だね?」


 こくこくとうなずくアメリ。


「この状態をね、帯分数っていうのでは、一と二分の一って呼ぶんだ。二分の三と、一と二分の一は同じなの」


「おお~!!」


 新たな知の扉が開かれたことに、キラキラ瞳を輝かせる彼女。


「特に仮分数は大事だから、よく覚えといてね」


「はーい!」


「じゃあ、短いけど今日の授業は終わり! ダンスしましょ」


「うん!」


 こうして、今日も楽しくダンスでシェイプアップ! お風呂に入った後は、アメリがクロちゃんとお話したいというので、イヤホン付けてスマホを貸しました。


 私は黙々とルビ振り。横で話を聞いてると、遊びの誘いをしているみたい。


「おねーちゃん、明日クロが遊びに来るって! いいかな?」


「早すぎたり、遅すぎたりしなければいいよー」


 作業をしながら返事する。


「わかった! クロ、時間だけどね……うん。うん。おねーちゃん、またお弁当一緒に食べたいって! お昼でいい?」


「りょうかーい。オッケーって伝えといてー」


「お昼でいいって! ミケとノーラも誘うね!」


 なんですと!? 全員でうちでお昼!? いやいいけど、クロちゃんがお弁当な以上、ミケちゃんとノーラちゃんもお弁当かー。


 というわけで、アメリのお願いで優輝さんと白部さんにもダイヤルし、それぞれ子供たちに代わってもらうのでした。


 アメリにもスマホ買ってあげたほうがいいのかなー。でも、さすがに早すぎる気がするし、何より身分証明の問題がある。


 ふう、子育ては悩みが尽きないね。

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