「お~、冬至だわ。最近、とみに寒いなあと思ったら」
スマホで、カレンダーを見ていた私。今日が冬至だと気づきました。
「とーじ?」
押江先生の授業を受けながら、娘が質問を投げかけてくる。
「うん。一年で最も、お陽様が出てる時間が短い日でね。……よし、アメリちゃん。今日は冬至イベントやりましょう!」
「おお? 何するの!?」
「そうねえ。かぼちゃ食べて、ゆず風呂入ろっか」
オーソドックスだけど、伝統行事だものね。去年は年末進行でバタバタしてて、できなかったし。今年はやや余裕があるから、ぜひとも!
「おお! かぼちゃ美味しいよね! ゆず風呂ってどんなだろー?」
「それは、あとのお楽しみーってことで。先生の授業が終わったら、お買い物行きましょ」
「はーい!」
しゅびっと挙手して、愛娘は書きものに戻りました。
「冬至ですかー。私、殆どをアメリカで過ごしてましたから、冬至イベントやったことないんですよね」
「でしたら、先生もかぼちゃ、ご一緒しませんか? 」
「いえ、お誘いはありがたいですが、お二人の時間を邪魔しても悪いですし、自分で調べながら、やってみます」
うーん、ちょっと残念。……私、最近優輝さんに似てきた気がするな。
「では、それこそ勉強の邪魔をしても悪いので、執筆に戻りますね」
ちなみに、先生は近々ニューヨークに帰省されるご予定だとか。アメリカ育ちの彼女にとって、クリスマスは家族と過ごす大事なイベントで、どうしてもと、有給を取ったそうです。
そしてそのまま、年末年始は普通にCH研の業務はお休みで、里帰り続行。
私は私で、今年も年末進行を終えたら、アメリと一緒に福井へ帰省。
明日は、さつきさんのお誕生会だし、さくさく仕事片付けないとね!
◆ ◆ ◆
「では、失礼します」
「はい。また、よろしくお願いします」
先生がお帰りになられるので、互いにお辞儀。アメリも、「せんせー、またねー! ばいばーい!」とご挨拶。
バス停に向かう先生を見送り、デスクワークでこわばった体を「う~ん」と伸びでほぐす。
「じゃー、買い物行こっか、アメリちゃん」
「おおー!」
拳を突き上げ、お返事。お勉強の後なのに、元気ですねえ。
そんじゃ、さくっと行ってきましょうか。
◆ ◆ ◆
とーちゃーく!
いつものBGMが心地良い。では、買い物買い物~っと。
まずは、主役のかぼちゃくん! 二人だから、四分の一カットのでいいよね。
「おお~、かぼちゃ美味しそう!」
「ねー」
互いに微笑みながら、ゆずを購入。冬至なので、どちらもセール価格でホクホク!
「おお? みかん? 食べるの?」
「ううん。これはゆず。あと、今回は食べるんじゃなくて、お風呂に入れるの」
「お風呂に!?」
アメリちゃん、まさかこれをお風呂に浮かべるとは思ってなかったようで、しっぽをぶわっとさせてびっくり。
「いい香りがするんだ~。ほら、あれよ。入浴剤みたいなもんだと思ってもらえれば」
「おお~……」
まだ、不思議そうな顔をしてる。ふふ、可愛い~。
で、これだけじゃごはんとしては足りないので、アメリのリクエストで、ブリの照り焼きと、ほうれん草のお味噌汁を作ることになりました。良き哉良き哉。
そろそろ、冷蔵庫を空にしていかなきゃいけないからね。あんまり、あれもこれもと買えないのが残念。
とはいえ、これは外せない、つぶあん缶。
「おお? あんこ? お菓子作るの?」
「んふふ~。福井流冬至の必須アイテム~。これも食べるのよ~」
「おお?」
不思議そうな顔をする愛娘。
この量、どうしても余っちゃうけど、残りはお餅で、ぜんざいにでもしましょうかね。
さて、三種の神器も買って、帰りましょうか。
◆ ◆ ◆
たっだいまー!
というわけで、時間も押してるので、着替えたらレッツ・クッキン!
二人で手際よく、料理を作っていきます。
途中、かぼちゃに茹でたつぶあんをかけると、「おおお!?」と、アメリが変な声を出す。
「おお……かぼちゃにあんこかけるの?」
「うん、いとこ煮。冬至はこれですよ」
「うにゅう……変な感じ」
えー?
「アメリちゃん。栗羊羹あるでしょう?」
「うん」
「あれ、あんこの中に栗入れたものだよね? それと同じことよ」
そう言うと、わかったような、わからないようなといった感じの表情をする。
「ま、食べてみてちょうだいな。美味しいから」
「わかった! おねーちゃんのごはん、美味しいから、きっと美味しい!」
ふふ。信用って大事ね。でも、いとこ煮ってそんな変かしら? 解せぬ。
ともかくも、完成! 例によって、ハイタッチ!
では、いただきましょー。
「いただきます」を言い、さっそくいとこ煮を食べてみるアメリちゃん。
「甘い! 美味しい!」
「でしょー」
ふふふんと、私も上機嫌。怪訝な反応をされた、いとこ煮も好評で、良き哉良き哉。
◆ ◆ ◆
ごちそうさまの後は、お風呂。公約通り、ゆずを浮かべます。皮をちょっと削いで、香りを出やすくするのが猫崎家流。
「おお~。ほんとに、いい匂いがする~!」
「でしょー」
ふふふんと……さっきもやった気がするな、このリアクション。
いつもよりちょっと長めに浸かり、香りを堪能。
ぽかぽかになって、お風呂を上がりました。
「あのゆずは、どうするの?」
「んー? もったいないけど、捨てちゃう。お風呂に入れちゃったから、食べるのはちょっとね」
「おお……」
娘も、もったいないと思っているようだけど、しょうがないかといった反応。
ともかくも、これにて行事コンプリート!
いやー、今年は冬至を楽しめて、良かった良かった。
さーて、お楽しみの後は、里帰りのために、お仕事頑張らなきゃね!
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