神奈さんとアメリちゃん

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第十三話 お手軽サバサンド

公開日時: 2021年4月17日(土) 08:01
文字数:2,642

「涼しいねー、アメリー」


 十分弱歩いていつぞやグラタンの材料を買ったお店に到着! 店内に入ると冷房とテーマソングがお出迎え。


 漫画家とか、ただでさえ運動不足になりがちな仕事なので、歩いて行ける所は歩くようにしている。


 さて、今日は何を作ろうかな。アメリに選ばせると、多分グラタン、オムライス、スパゲッティーーの三択になりそうだし。


 今日の安売りはー……パン三割引。おお、いいじゃなーい。牛乳も安いなー。この辺はまずゲットよね。


 とはいえ、今日安いのは日配品ばかりか。うーん、料理のビジョンがピンとこない。


 そういえば、今日アメリとクロちゃんがお魚トークしてたっけ。アメリにもなにか魚料理食べさせてあげたいけど、箸使うのが多いから今のアメリには難しいだろうし……。


 献立に迷っていると、とある料理を稲妻の閃きのように思い出した! ……はちょっと大袈裟か。


 とりあえず、パンと牛乳をかごに入れて鮮魚コーナーに向かうと、ありましたよ目的のアイテムが!


 サバ! それも塩サバではない生サバの半身。


「なにこれー?」


 サバをかごに入れると、不思議そうにアメリに問われる。


「サバっていうお魚だよー」


「え! これが泳いでるの!?」


 びっくりする彼女。ははーん、この半身が泳いでると勘違いしたな? 思わず苦笑。


「違う違う、泳いでるのはこっち。これを切ったのがこっち」


 丸一尾のサバと半身を両方見せて説明すると、もはやおなじみの「おお~!」という感心の声。


「私たち二人じゃ一尾は食べ切れないからね。この半分のを買うわけ」


 あと必要なものは、洗わずに使えるというカットレタス。コスパは良くないけど、私とアメリで一玉なんてとても食べ切れないしね。


 そういえば、ついにアメリのおやつにしていたカリカリも、底を尽きそうなんだっけ。


「アメリ、おやつ買おうか」


「アイス!?」


 期待の眼差し。どうやら、ゴリゴリくんがよほど気に入ったらしい。


「うーん、それでもいいけど……。今日はジュースにしてみようか」


「じゅーす?」


「甘ーい飲み物のこと」


 正確には違うんだけど、まあざっくりした説明でいいよね。


「これ面白いよー。飲むと、しゅわしゅわーってなるの」


 差し出したのは、「コラ・コーラ」。炭酸飲料といえばこれ! ってぐらいの定番商品。アメリに五百ミリボトルは多すぎるので、三百五十ミリボトルをかごに入れる。私用には、賛否両論分かれることでおなじみの「マスター・ペッパー」五百ミリボトルをかごにイン。言うまでもなく、私は「賛」派。


「よし、今日はこんなもんかな」


 お会計の後、再び外の世界へ。うひい、蒸し暑い。


「ジュースはここキャップをを左向きに回して外して、口に咥えて飲むんだよ。外れた黒いのキャップと空になった容れ物は、その辺に捨てず渡してね。はい」


 コーラをアメリ渡す。「おお~!」っという声とともにキャップを開け口をつけて飲むと、「おおお~! しゅわしゅわするー!」と大感激。


 私も「マスペ」を飲む。うーん、この独特の風味が病みつきになるのよね。


 そうやってジュースを飲み飲み歩いていると、アメリがゲップをてしまう。あはは、出ちゃうよね。


 すると私も、もらいゲップ。恥ずかし。炭酸飲料はどうもこれがねー。まあ、好きなんだけど。


「ねーねー。それ、アメリのと味違うの?」


「そうだねー。ひと口飲んでみる? 美味しいよ」


 こくこくとうなずくので、マスペを手渡す。ひと口含み……無言で大変微妙な顔をして返してくる。お気に召しませんか、お嬢様。


 まあね、こうやってオススメしては深い悲しみを背負うのが、マスペ派あるあるですよ。こんなに美味しいのになあ。


 そんなやり取りからしばらくして、うちに着きました。



 ◆ ◆ ◆



 ただいまのあと、買い物を冷蔵庫に入れて入浴タイム。アメリも魚くん(ちゃん?)のおかげですっかり苦手意識が消えたようで、お風呂を楽しんでくれるようになった。ありがたいことですなあ。


 そして、お風呂を上がったらレッツ・クッキング!


 脳内に、三分でクッキングする例のBGMが流れる中、食材を並べていく。今回の料理は「ハモリ式サバサンド」。ハモリさんという、料理好きでも有名な芸能人の公開レシピの一つで、これが超簡単! なので、以前何度か作ってみたことがある。


 まず、サバの骨を丁寧に取り、魚焼き用グリルの弱火で身側から焼く。身側が焼けたら、ひっくり返して皮側を焼く。


 焼き上がったら、カットレタス&醤油マヨと一緒に軽くトーストした食パンに挟んで半分にカットして……完成~! わあ、お手軽。


「アメリー、できたよ~」


「おお~!」


 興味津々に、テーブル上のサバサンドを見つめる彼女。


「じゃあ、いただきますしよう。いただきます」


 食べ方のお手本として、かぶりついてみせる。


「いただきます!」


 「どう?」と、早速かぶりつくアメリに問う。


「おいしい!」


 うんうん。これお手軽なのに美味しいのよ。実は最初安いからという理由で塩サバを使ったことがあって、そのときはしょっぱくなりすぎて食べられはするけどたいそう微妙な感じになってしまったので、以降素直に生サバを使うことにしている。


 一見ネタ料理みたいなサバサンドだけど、もともとトルコの名物料理だそうで、向こうではとても手軽に食べられているものらしい。トルコ料理=牛と羊のイメージが強かったから、サバを好んで食べるというのがとても意外。現地のはもうちょっと手の込んだレシピなんだけど、ハモリさんがお手軽に簡略化してくれたというわけ。



 ◆ ◆ ◆



 洗い物を食洗機に放り込んで歯を磨き、今日も自家製コーヒー牛乳を傍らに置いて、お仕事なう。


 アメリは横で、「さかなのおうち」なるオブジェを巡ってサメとイカがバトルするという、よくわからない物語の遊びに興じている。子供って色々自由で素晴らしいなー。漫画家をやっていると、ときどき自分の発想力に勝手に足かせをつけていないか? という疑念を抱くときがある。そして、夢中で好き勝手に、自由帳に拙い漫画を描いていた子供時代を思い出すのだ。


 なんだかアメリを見ていると、そういった昔の自分を思い出してノスタルジックな気持ちになる。


 それにしても、アメリの外出着はしっぽを目立たせないようにロングスカートのフェミニンな服装にしてるけど、こうしてパンツタイプのパジャマ着て遊んでるのを見ると、活動的なアメリには絶対ショートパンツ似合うよねって思う。部屋着だけでも今度ショートパンツの買おうかしら。きっとボーイッシュで可愛いだろうな~。


 そんな益体もないことを考えながら、筆を走らせるのでした。

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