今日は、最近遊びが続いた……外遊びは体育という名目だったけど、まあそういうことで、いつもの勉強会です。
「なるほどー。ブンレッツが五人に別れて、そのうち二人なんだな!」
「ふふん。千多ちゃんパワーを得たミケにかかれば、小数ぐらいちょちょいのちょいよ!」
つまづいていた二人も、新たな武器を得て、楽しそうに攻略しています。
「先生。ここ、合ってますか?」
「うん、大丈夫。その調子!」
クロちゃんは相変わらず、堅実に進んでいる模様。で、うちの愛娘はというと……。
無言で、バリバリ進めています。すごい気迫。
「せんせー、合ってる!?」
「うーん、アメリちゃん読みは完璧だけど、書くほうが追いついてない感じかな。反復練習あるのみだよー」
「うにゅう」
おおう、漢字の書き取りは気合だけでは無理でしたか。でも、読みは完璧っていうのは、ネットで鍛えたからなんだろうな。私も、書き方は覚えてないけど読めるって漢字、増えちゃってるからねー。
こちらは、月末手前脱稿を目指したペースで描き進め中。月末には、アメリの検査結果が出るからね。次々号のプロット突入なんかも考えて、それまでに終わらせたい。ことによると、アメリのメンタルケアも必要かもだし。
「お茶のおかわり、淹れてくるね!」
と、アメリの声。
「それ、私がやるよ?」
首を、向こうに向ける。
「ううん、アメリがやるー。……いってきまーす」
手早く湯呑とお皿を集め、トレイに載せてぱたぱたと出ていく愛娘。
ふむ。気分転換したいってとこかしらね。だいぶ気合もこめてたし。
あ。コーヒー牛乳がない。おかわり作りに行ってこよ。
◆ ◆ ◆
「おお? おねーちゃん、アメリ一人でできるよ?」
台所にやって来た私を見て、困ったような顔をする娘。
「あー、気にしないで。私は私で、コーヒー牛乳作りに来ただけだから。邪魔はしないよ」
「おおー……」
しばし、無言で互いの作業を進めていく。
「勉強、気合入ってるね」
沈黙が厳しくなったので、話しかけてみる。
「うん! 検査結果どっちでも、頑張らなきゃだから!」
ポットから急須にお湯を注ぎながら、応える愛娘。
「そっかー、偉いね。でも、無理はしないでね」
「うん!」
ほんとに、無理だけはしないでね。
「おやつは足りそう?」
話題を変えてみる。
「おお……? まだあるの?」
「うん。緑茶に合うかわからないけど、チョコパフが冷蔵庫に」
「おお! もらっていくね!」
うん、入れ込み過ぎということはなさそうかな。適度にちゃんと力が抜けていると思う。杞憂だったか。
「先に戻ってるね!」
「はーい。転ばないように気をつけてねー」
お茶菓子を用意し終えた愛娘が、ぱたぱたと戻っていく。私はコーヒーメーカーから作るから、ちょっと時間かかるのよね。
◆ ◆ ◆
「ただいま戻りましたー」
コーヒー牛乳片手に帰還。アメリはとっくに配膳を終え、バリバリと書き取りに打ち込んでますね。
着席しようとすると、チョコパフがデスクに一個、ちょこんと載ってました。
「ありがと、アメリちゃん」
「どーいたしまして!」
では、これとコーヒー牛乳でお仕事頑張りましょー!
「ねー、センセー。ミケたち、こういう勉強することにイミあるのかしら」
不意に、疑問を呈するミケちゃん。
「小・中学校の勉強は、色んな所で役に立つわよ」
「そーじゃなくて。その、カンジンの学校には行けるのかなって」
なんとなく、場の空気が重くなる。たしかに、モチベーションに関わる問題だ。
「九月になったらまた国会で話し合いが始まるし、議員の皆さん、前向きに動いてると思うよ」
そう元気づける、白部さん。アメリの場合……特別カリキュラムが受けられたらだけど、学校はどうなるのだろう。白部さんに訊いても、多分そこまでわからないだろうし。
猫耳人間は、色んな意味で規格外の存在だ。平均化を是とする学校という場で、彼女らはどうなっていくのか。
私みたいな、良くも悪くも凡庸な生徒には居心地のいい場所だったけど、吸収力の塊みたいな猫耳人間……とくに、アメリにとってはどうなんだろう。
学校に行かせてあげたい。それがついこの間までの私の願いだったけど、今は「浮きこぼれてしまうのではないか」という不安が、逆に鎌首をもたげる。
不確定な未来を心配しても意味のないことだけど、それでもやっぱり気になってしまうな……。
結果次第だけど、次回のT総でそのへんも相談してみよう。
おっと、いけない。筆が止まってた。私が今、一番やらなければならないことがお留守でしたよ。いかんいかん。
気分を一新して、楽しいことを考える。作者のメンタルって、作品に出ちゃうからね。
まずは、連載を片付けてしまおう。猫アメリとの楽しかった日々、そして今アメリとの楽しい日々を脳裏に想起する。
この「あめりにっき」も、アンケート次第で、今アメリを描いた「新」に移行するかもしれない。猫アメリとして描けることは、今のうちにきちんと描き切ろう。
とにもかくにも、読者を楽しませる。それが今、私がやるべきことだ。
子供たちの質疑応答や雑談をBGMに、今日もこつこつと筆を走らせるのでした。
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