神奈さんとアメリちゃん

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第百二十七話 第二回・保護者会

公開日時: 2021年4月24日(土) 13:01
文字数:2,443

今日から在宅ワーカーになった白部さん。リモート会議で仕事するのかと思ったら、主にノーラちゃん、そしてアメリたちの行動や社会性なんかを調べるようにと指令が下ったそうで、かくてるハウスにいつものメンバーで集まっている次第です。


「本日は、皆様お集まりいただき、ありがとうございます」


 ノートPCを前に置き、起立してお辞儀する白部さん。


「お固い挨拶はなしでいいですよ。いつも通り、気ままにやるだけなんで」


 そんな彼女に優輝さんが微笑む。


「それで、主にどんなことをご調査されるんでしょうか?」


「そうですね。私の普段の仕事は収集したバイタルデータをまとめ、分析して報告することだったのですけど、その任を外れまして、主に行動や心理面、保護者の皆さんのお話を調査してまとめるようにと、新たに命じられました。四人もの猫耳人間と接点がある故でしょうか」


 まりあさんの疑問に、返答する白部さん。


「なるほど。要するに取材が主になったという感じっすかね?」


「ざっくばらんに言えば、そうなりますね」


「つっても、何か新たにこれといって伝えることある?」


 久美さんが肩をすくめる。


「自然体のデータを集めるのが任務ですから、皆さんはいつも通りにしていただければ。たとえば……」


 PCを操作する白部さん。


「ノーラちゃんだと、趣味が男の子っぽいですけど、詳しくはカウンセリングしてみないとわかりませんが、性自認は女の子で、性同一性障害の類ではない……と思われます。また、やんちゃな面が多く見られ、そこが他者と上手くやっていく上で今後の課題となる……と、このようなことを調査していく感じです」


 「へー」とか「なるほど」とか声を上げる一同。当のノーラちゃんは、上半身をゆらゆらさせて暇そう。


「ノーラちゃんといえば、あたしたちはまだあまり付き合いが長くないわけですけど、そんな感じなんですか?」


「はい。猫崎さんとアメリちゃんにはご迷惑をかけっぱなしで」


「いえいえ、そんな。個性ですよ」


 白部さんが恐縮するので、フォローする。


「アメリ独り占めしようとして、大変だったのよ。神奈おねーさんが機転を利かせてくれたけど」


 ああもう、ミケちゃん。せっかくフォローしたところなのに。


「ええ、そういうところも含めて、包み隠さずいろんなことを教えていただけると助かります」


 しかし当の白部さんは、ミケちゃんの苦情を真摯に受け止める。


「差し支えなければ、アメリちゃん、ミケちゃん、クロちゃんの性格や行動、そして保護者の皆さんが日頃思っていることなどを教えていただけましたら、ありがたいです」


「アメリの性格、ですか。そうですね……とても天真爛漫てんしんらんまんといいますか、好奇心が強くて、何にでも興味を示します。あと、すごく努力家で、向学心が強いですね」


「ありがとうございます。他には何かありますでしょうか?」


「そうですねえ……」


 アメリのことを色々伝えていく。薄紫が好きなこと、ネーミングセンスが独特なこととかも。


「ありがとうございました。大変参考になります」


「じゃあ、あたしの番ですね。ミケは……」


 こうして、順繰りに保護者たちの目線から見た、子供たちの話を聞き取っていく。


「じゃあ、アメリちゃんにもお話聞こうかな。たとえば、悩みとか不便してることとか、やりたいこととか、いろいろ聞かせてもらえるかな?」


「おお~? んっとねー……お外では帽子被るでしょー? ちょっと音が聞こえにくい~。あとね、おねーちゃんのお料理、もっと手伝えるようになりたい! あとねあとね……」


 アメリのとりとめのない話を、逐一タイピングしていく白部さん。当たり前だけど、すごく真面目なお仕事ぶり。


 こうして子供組の聞き取りも終わり、「ありがとうね」と一息ついて、出された紅茶をひと口飲む。


「逆に、私からも質問いいですか? 今後も、こういった感じに定期的に集まりを開いたほうがいい感じでしょうか?」


「いえ、またこうやってヒアリングするのは、随分先でいいと思います。ノーラちゃんの観察……って言い方もあれですけど、そちらがメインで、アメリちゃんたちのことは、あくまでもサブという感じになると思います」


「なるほど」


 私も喉が渇いたので、紅茶をひと口いただく。


「あとは、最初ですのでこうやって集まっていただきましたけど、今後は私が個別にご訪問するという形になっていくかと思われます」


「なー、ルリ姉~。暇だぞー」


「そうね。ちょっとノーラちゃんには、退屈な話が続いちゃったかな。ノーラちゃんたちを遊ばせてあげたいのですけど、構いませんか?」


「ええ、あたしは特に異存ないです」


 保護者一同から特に反対もなく、子供組は固まって遊ぶことになりました。


「すみません、私も彼女たちの遊びを観察しなければいけないので、中座させていただきます。ありがとうございました」


 ぺこりと一礼し、PCを手に子供たちの輪を少し外れて見守る白部さん。何というのか、お仕事として子供たちの遊びを観察しなきゃいけないって、色んな意味で大変だな。彼女のことだから、純粋に猫耳幼女を愛でたいでしょうに。


「あ、そうだ神奈さん」


「はい、何でしょう?」


 唐突に優輝さんが話を振ってきたので、反応する。


「近いうちに声優さんに声を当ててもらうんですけど、よろしければご一緒しませんか?」


「え、そういうアニメみたいなこともするんですか?」


「はい。いかがでしょう?」


「ぜひぜひ! ご一緒させて下さい!」


 声優さんの収録現場なんて、万が一に「あめりにっき」がアニメ化でもされなきゃ直に見る機会がないと思っていたので、とても興味深い。


「あの、わたしもご一緒してもよろしいでしょうか?」


 挙手して、話に入ってくるまりあさん。


「あ、お誘いから外してしまってすみません。ご興味ないかと思って」


「いえ。絵本であっても、何が創作のヒントになるかわかりませんから」


「なるほど。では、追って日時をお伝えしますね」


 こうして、おしゃべりしたり、アメリたちと一緒に遊んだりして、第二回・保護者会はつつがなく終わりました。

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