神奈さんとアメリちゃん

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第二百九十六話 クローゼットを開けて ―前編―

公開日時: 2021年7月20日(火) 21:01
文字数:2,012

 もそもそ。もそもそ。


 激動の四月三日が過ぎ去り、のんきに朝食をいーてぃんぐ・なう。対面ではすでに朝食を終えたアメリが、テレビ番組を色々切り替えながら見ている。


 まだ完全とはいえないけれど、穏やかな日常が帰ってきた。そんな気がする。ふわあ……。


 それにしても、毎朝七時頃に確実に起こしてくれる、アメリちゃん時計の優秀なことですねえ。


 そして八時頃。やっとこいつものように、しゃっきりして参りました。たまには、温かいうちにトースト食べきりたいわ……。


 さて、お片付けしてニュースのチェックなどしましょうかね。


 まずニュース、ツイスターともに昨日から大勢は動かず。いい言い方をすると、相変わらず私たちに順風が吹き続けているということ。


 こうやって見ると、あの記者会見をやって良かったとしみじみ感じる。つくづく、白部さんや長野先生を筆頭とした先生方、そして家でアメリの面倒を見てくださった久美さんらに感謝しかない。


 続いてLIZE。皆さんが、爽やかな朝の挨拶を交わしていらっしゃいます。


 挨拶以外の話題は、やはり猫耳人間の今後についてがメイン。


「おはようございます」


 チャットに参加すると、皆さんからご挨拶返しをいただきました。


「おはようございます。神奈さんのスピーチで、ツイスターめっちゃ盛り上がってますね!」


 優輝さんが明るい調子でお声がけしてくださる。


「はい。それで私思ったんですよ。アメリ、変装なしで外出させてみようかなって」


 チャットが一斉にピタッと止まる。皆さん、突飛な話で仰天してるに違いない。


「昨日の今日でっすか? うはー、神奈さんもダイタンっすね~」


 さすがの楽天家・さつきさんもこれには放心猫スタンプ。


「世間の反応を見て、つらつら考えたんです。やるなら逆に今じゃないかって。もう、アメリを四日もろくに外出させてあげられてませんから、さすがに可哀想で。インドア派の私でも、四日も引きこもっていたら、どうにかなってしまいそうになりますし」


 これには、皆さん悩み猫スタンプ。


「最終的に決めるのは神奈さんとアメリちゃんですけれど、大丈夫なんでしょうか」


 まりあさんが心配のメッセージ。


「ん。提案。じゃあ、ウチが護衛についてったるわ」


 久美さんが挙手猫スタンプ。


「だったら、いっそみんなで行きません? さすがにミケは一応変装させときますけど」


 優輝さんが、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」とばかりのご提案。


 さて、肝心の慎重派最右翼・白部さんが気になるところだけど。


「私も、ノーラちゃんを思いっきり外で遊ばせてあげたいんですよね。ほら、この子活発じゃないですか。基本的に室内遊びしかさせてあげられないのが不憫で。ご一緒しますよ」


 おや。意外な、そして心強いご反応。


「では、みんなで行きましょうか! ……ってどちらにでしょう?」


 意気上がる優輝さんだけど、そういえば肝心の目的地を話してなかった。


「児童公園あるじゃないですか。まりあさんには、初めて出会った場所で通じると思いますけど。あそこで思いっきり遊ばせてあげようかなって。場所は……」


 ほかの皆さんに、場所を教える。


「なるほど。では、行ってみましょうか。ちょうど、まりあさんの家との中間あたりですね」


 場をまとめてくださる優輝さん。本当に、天性のリーダーシップだなー。


 こうして、「児童公園、みんなで行けば怖くない」作戦が発動したのでした!



 ◆ ◆ ◆



 メイクと着替えを済ませ、まんじりともせず皆さんを待っていると、インタホンが鳴りました! さっそく二人で門に出る。


「いやー、ほんとに完全武装解除ですね!」


 猫耳フルオープン。服も外出にも使える部屋着のショートパンツルックで、これまたしっぽフルオープンなアメリを見て、舌を巻く優輝さん。ほかのお三方も、ちょっと呆気にとられています。


 ちなみに、武装解除の代わりといっては何だけど、アメリの手には買ったはいいものの使う機会のなかった砂遊び用のスコップとバケツ装備なう。


「はい。ここで妥協したら、元の木阿弥ですから」


 一方ミケちゃんは、いつものキャスケットとロングスカートスタイル。


「覚悟、受け取りました。それじゃ、白部さんも迎えに行きましょうか」


 というわけで、我らが頼れるリーダー・優輝さんの先導で白部家へ。


「お待たせしました」


 出てきた白部さんはいつもの感じだけど、ノーラちゃんがアメリと同じくキャスケットなしショートパンツ姿の武装解除モード! これは驚いた!


「「いいんですか!?」」


 優輝さんとハモって、思わず間抜けな問いかけをしてしまう。何しろ、慎重派筆頭の白部さんなのだ。


「はい。ノーラちゃんも先ほどの話を聞いて、自分もこういう格好で外に出たいというものですから」


 ノーラちゃんも、こんな感じの部屋着兼、外出着持ってたのね。そういえば、スカートはひらひらして嫌だって、初日に愚痴ってたっけ。あれから、買ってもらったんだろうな。


 では、いざまりあさんと落ち合うべく、児童公園にしゅっぱーつ!

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