神奈さんとアメリちゃん

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第二百五十三話 アメリ、試練を乗り越える

公開日時: 2021年6月4日(金) 21:01
文字数:2,983

 夕方、例のスーパーにとうちゃーく! 今日はアメリがお散歩と自転車特訓で疲れ気味なので、車で来ています。お留守番は、まだ一人でさせるには不安だからね。


 さあ、おなじみチラシチェックの儀式! 今日は何が安いかなー?


 今日のセールは……日配品・日用品。ふむ、ある意味自由にいってみよーってお達しですかねー。


 日配品ということで、まずは三種の神器の卵以外。卵まだあるのよね。薄揚げも買っておこうかな。あとは、日用品枠でラップとか色々。


 さて、肝心のメイン食材だけど、何買いましょ。あんまりアメリを歩かせたくないからなー。


 とりあえずお野菜。お、菜の花! この時期しか食べられないものですねえ。これはぜひ、アメリに食べさせてあげたい。


 あとは……イイダコ。この時期のは卵持ってて美味しいのよね。これも買っちゃおう。うん、今日の晩御飯はこれでいいかな。


 明日のお昼はどうしよう。外食に行ってもいいけど、特に買うもののついでが……。あ。


「アメリー。新しい本欲しい?」


「欲しいー」


 ほむほむ。そういえば、髪切ったのももう随分前だなー。久々にセットしてもーらおっと。


 よし、お昼は駅前で外食! あとは、亀池堂さんにも寄れるから、まりあさんちもお邪魔しようかな?


 うむうむ、明日のプランがざっくり決まりましたよ。グーですね、グー!


 アメリに問うと特に買っておきたい物はないとのことなので、お会計しましょ~。



 ◆ ◆ ◆



 たっだいまー! ごはんの浸水を開始~!


 あ、そうそう。炊飯器についてだけど、「神奈にあげたものだから、僕に遠慮せず買い替えていいよ。むしろ、八年も大事に使ってくれてありがとう」と、お父さんから返事をもらいました。


 名残り惜しいけど、これも買い替えどきだよというお達しかなあ。明日、電気店で見てこようかな?


 着替えると、さっそくベッドに寝そべって本を読み始めるアメリ。やっぱり、疲れてるのね。私も久々によく歩いたから、ちょっと疲労感あるなー。一緒に横になって漫画読んでようかとも思ったけど、「あめりにっき」五巻のルビ振りでもしましょうかね。


 おっと、その前に美容院の予約予約! ……よし、いい感じに空いてました。


 あめりにっきも既刊十五巻。全部にルビを振るのは大変だけど、頑張りまっしょい!


 しばらく経ってアラームが鳴ったら、炊飯ボタンを押しに行く。最近のは水に浸したらあとは炊飯から蒸らしまでボタン一つで全自動らしいから、このひと手間ともおさらばか。嬉しい反面、やっぱりちょっと切ない気もする。


 ともかくも、一旦戻ってアメリに問う。


「下処理に時間かかるから、今から調理始めちゃうけど、アメリはどうする?」


「おお……手伝う」


 ゆっくり体を起こす彼女。


「疲れてるなら見学でも、ここ寝室でご本読んでてもいいよ」


「だいじょーぶ……!」


 むっと気合を入れて、完全に起き上がる。見上げた子だ。


「わかった。でも、本当に疲労を感じたらすぐ休んでね」


 私みたいなインドア党でも、大人と子供の体力は違う。体調管理も親の努めなのです。


 とりあえず、キッチンへ!



 ◆ ◆ ◆



「さて、アメリちゃん。今日はこのイイダコさんを調理します」


「おお~! 赤ちゃんタコだー!」


「んっんー。違うんだなあ、これが。これで大人なのよ」


 「えぇー!?」と驚く彼女。


「生き物って面白いよね。とっても大きなくじらから、こんな小さなタコまでいるんだもの。ま、それはさておき、下処理をやっていきまっしょい」


 脳内で三分でクッキングするBGMを流しながら、包丁を手に取る。


「よーく見ててね。ここに接合部があるんだけど……」


 頭と胴体の隙間にキッチンばさみを差し込む。


「ここをチョキン! で、お箸で胴体を押し込んで……ぐるーり」


 胴体をめくると、グロテスクな内臓が露出する。


「お、おおお!?」


「この内蔵を指でちぎり取ったら、胴体を元に戻すっと。あ、お米粒みたいのは卵で美味しいからそれは残してね」


 アメリの様子を見ると、若干血の気が引いている。


「気持ち悪い?」


 こくこくとうなずく彼女。


「まあ、これが命をいただくということだからね。私だって気持ち悪いけど、こうしないと美味しくならないから。でも、無理だったらやらなくて大丈夫よ」


 しばし「うーうー」うなりながら、あっちこっちへ頭ごと視線をさまよわせた末、「やる」と一言。


「大丈夫? 無理だったら、いつでもやめていいからね」


「……頑張る!」


 アメリシェフの固い決意表明をいただき、例によって調理台とテーブルに分かれて作業を開始する。


 ハサミを入れる音ととワタをボウルと三角コーナーに捨てる音だけが鳴り響く。私の脳内では例のBGMも鳴ってるけどね。


 ……ふう、終わり!


「そっちはどう?」


「半分ぐらいできた……」


 ちょっと声に元気がないな。まあ、はかどるものでもないか。


「手伝うね」


 タコを半分もらい、下処理していく。よし、こっちも終わり!


 数歩遅れてアメリも完走!


「お疲れ様! 頑張ったね!」


 洗ってある手で頭を撫でると、「うにゅ~……」とちょっと元気のない気抜け声を出す。


 アメリにも手を洗ってもらい、次の工程、塩もみです。


 ボウルにお塩を入れて、揉むべし! 揉むべし! ただし、卵は潰さないように。


 これは手分けしても作業工程が減るものではないので、私一人で担当し、アメリには休んでてもらう。


 ん、溶けたお塩がねずみ色になったらオッケーだね。


 あとは、素早くかつ丁寧に流水で洗い流す! 時間が立つと塩分を吸いすぎてしまうので、スピードが勝負!


 タコさんのお肌がざらついた感じになったら下処理完全終了~!


 続いて、菜の花と油揚げの処理。


「アメリ、どっちかやる?」


「……ごめん、ちょっと疲れちゃった」


 うーむ、疲労の上にワタ取り初体験は少々参っちゃったみたいね。「お疲れ様」と労い、菜の花と薄揚げを切っていく。


 あとは、鍋二つ用意して片方でお湯を沸かし、もう片方ではお醤油、料理酒、みりん、お砂糖を百ミリリットルずつもう片方の鍋に入れ、イイダコと一緒に火にかける。沸騰したら、弱火に切り替えて十分じゅっぷんコトコト。もう片方の鍋のお湯も沸いたので、菜の花投入! ぐでぐでにならないよう程良く茹でたら、流水に晒して冷やす。


 薄めためんつゆをかけ、鰹節を散らしたら、おひたし完成!


 同じ鍋でもう一度お湯を沸かし、お味噌汁を作りまーす。……うん、お味はこんなもんかな。


 タコさんももうちょっとで完成か。アメリはというと、テレビをぼーっと眺めている。ほんとお疲れ様。ごはん切ってましょ。


 アラームが鳴りました! 深皿に盛り付け、菜の花、お味噌汁、ごはん、お茶とともに配膳。


「はーい、できたよー。いただきましょー。いただきます!」


「おおー……いただきます」


 ちょっと元気なくいただきますを言うアメリ。しかし、イイダコをひと口食べると瞳をキラキラ輝かせ「美味しい!!」と一気に元気になる。


「アメリ、頑張って作ったからね。美味しいでしょう、イイダコ」


 こくこくとうなずくお嬢様。


 とにかくもう、夢中で箸を動かす。ふふ、本当に美味しそうに食べるなあ。


 菜の花とお味噌汁も好評で、アメリちゃんはあっという間に食べ終わってしまいました。


 私も少し遅れてごちそうさまをし、後片付け。歯を磨いた後は寝室へ。


 まりあさんに明日のことを打診したところ、二時半に伺うということに。


 アメリが早めにダウン就寝してしまったので、本日ダンスはなし。デスク以外消灯し、ルビ振りに精を出すのでした。

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