神奈さんとアメリちゃん

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第百七話 包丁を使ってみよう!

公開日時: 2021年4月23日(金) 12:01
文字数:2,201

お昼。今日は豚肉はともかくキャベツと焼きそばの麺が安かったので、紅しょうがを消費したいこともあり、焼きそばを作る予定なのですが……アメリに包丁の使い方を教えなければいけません。


 まずは、キャベツ一玉から三枚ほど剥がしたものを、調理台の前に立つアメリのために用意。残りは、芯をくり抜いて、水を浸したキッチンペーパーを詰めて保管中。


「じゃあ、始めよっか」


「おお~!」


 包丁を振り上げるアメリ。


「こらこら、危ないからやめなさい」


「ごめんなさい……」


 しゅんとしてしまう。


「刃物を手にしたら、はしゃいじゃだめよ。まず、包丁の扱いはそこから」


「わかった!」


「で、包丁の持ち方はこうね。そして、左手の添え方なんだけど……」


 指先を曲げた、俗にいう「猫の手」にする。


「これ、通称『猫の手』。包丁で物を切るときは、指先を伸ばしちゃダメ」


「おお~! 猫の手!」


 キラキラした瞳を向けてくる。


「刃物使う時はよそ見しないでね。で、この第二関節っていうんだけど、これより上に刃の部分が来ないようにすること。ちょっとやってみて」


 言われた通りに構えるアメリ。


「いいね。上手上手! じゃあ、キャベツを切ってみよう。包丁はね、押し付けるより引きながら切ったほうが切りやすいの。一個だけ見本を作るね」


 食べやすい大きさの見本を、一個切り取る。


「あ、そうそう。刃物とか、尖ったものを誰かに渡すときは尖った側を自分に向けてね。でも、包丁の刃は握っちゃダメよ。こうやってつまんで」


 包丁を手渡すと、「わかった!」という元気良い返事とともに受け取り、「猫の手」に包丁を添える。うわあ、怖い。心配! はらはら。


 すとん、という小気味よい音とともにキャベツが切れた。


「どう!?」


「上手上手! じゃあ、左手と包丁をずらして、もう一個作ってみよう」


 またも成功! ふう、心臓に悪いな。


 こんな感じで、ゆっくりキャベツを切ることに成功! 次に玉ねぎ四分の一と、豚バラ百二十グラムも切ってもらいました。


「お上手です、アメリちゃん! 今回の包丁パートはここまでね。あとは炒め作業だから、私の出番」


「おお~! がんばった!」


 頭をよしよしと撫でると、「うにゅう」といういつものボイスを出す。


 さあ、選手交代! 脳内MP3プレーヤーのスイッチを入れ、三分でクッキングするBGMを流しまーす!


 まず、麺をざるで水洗いした後キッチンペーパーで水気を拭き取ったら、ボウルに入れて料理酒大さじ三杯、お醤油小さじ一杯を混ぜ、よく揉んでなじませる。


 フライパンに大さじ一杯の油を入れたら熱して麺を投入! 焼き色がつくまで炒めまーす。


 一度麺をお皿に空けて……と、続いて、フライパンをきれいにして油大さじ一杯を再度熱し、豚肉投入! 色が変わったら、キャベツとくし切りの玉ねぎ、洗い済みのもやしもイン!


 ある程度しんなりしてきたら、一度端に寄せて、麺を再投入!


 ここに、料理酒大さじ二杯、ウスターソース、醤油、オイスターソース各大さじ一杯、塩こしょう適量入れた特製ソースを注ぎ、よく混ぜ合わせながら炒めまーす!


 いい感じに炒めたら、お皿に盛って紅しょうが、青のり、鰹節を適量~。完成でーす! うん、これで紅しょうがも使い切れた!


 お茶と一緒に配膳し、マヨを中央にセット!


「というわけで、焼きそばの出来上がりだよ! マヨネーズはお好みでかけてね。じゃあ、いただきますしよう。いただきます!」


「おお~、楽しみ! いただきます!」


 まずはマヨ無しで。う~ん、アメリの努力の味がするわ! 実に美味しいこと。


「美味しいね、おねーちゃん!」


「だね!」


 互いに、うふふと微笑む。


 半分食べ終わったので、マヨモードに移行。うんうん、こちらのバージョンもこってりしていて美味しい。


 アメリも真似してかけ、「おお~!」と瞳を輝かせる。良きかな良きかな


 こうして楽しく食事も終わり、ごちそうさま。残りのお肉やキャベツなんかは、夜に野菜炒めにしましょ。そしたらまた、アメリに包丁の指導をしなきゃだね。


 お片付けが終わって寝室でアメリにお勉強を教えていると、真留さんがやって来ました。


 前回のアンケートは好評だったようで、この路線を継続することになり、今回のプロットもすんなり通過!


「そういえば真留さん」


 紅茶を飲んでいた彼女に話しかける。


「はい、何でしょう?」


「素朴な疑問なんですけど、編集のお仕事で一番やりがいを感じるのって、どういうときでしょう?」


「そうですね……。やはり、ヒット作を担当できた時もそうなんですけど、『ねこきっく』の作家さんって基本的に猫飼ってるじゃないですか」


 アメリの頭を撫でながら答える彼女。


「これは編集というより、『ねこきっく』に配属されて一番良かったのは、という話なんですけど、いろんな猫ちゃんと打ち合わせのときに触れ合えるから……というのも大きいです」


「なるほど」


 猫漫画雑誌「ねこきっく」は、作家も編集者も愛猫家揃い。納得の理由。


「その中でも、こうして今のアメリちゃんと触れ合える編集者って私だけじゃないですか。なんか、すごく役得って感じです」


「あはは、そうですね。確かにほかの編集者さんは、猫耳人間との触れ合いなんて未体験でしょうものねえ」


「はい。あ、すみません。そろそろ次の仕事に行かないと。では、お暇させていただきます。アメリちゃんまたね」


「おお~! 真留おねーさん、またね~!」


 というわけで、門まで真留さんをお見送り。さあ、ネーム作り頑張りまっしょい!

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