朝九時頃、今日も今日とて筆を走らせていると、スマホが鳴りました。送信者はさつきさん。おや、珍しい。
「おはようございます。どうされましたー?」
「おはようございますっす。ミケちゃんがそちらに遊びに行きたいそうなんで、せっかくなので自分もいっすか?」
「アメリに聞いてみますねー」
送話口を塞ぐ。
「アメリー。ミケちゃんとさつきさんが遊びに来たいってー」
「おおー! 待ってるって言ってー」
「ほいほい……お待たせしました。待ってる、だそうです」
会話を再開。
「じゃあ、今日はお弁当持ってそちらにお邪魔するっすー。十時でいいっすか?」
「はい。では、お待ちしてます」
通話終了。最近出ずっぱりだった久美さんじゃなくて、さつきさんというのが珍しいな。まあ、とりあえずお着替えメイクにお片付けしましょっと。
◆ ◆ ◆
十時、二人が来たのでアメリと一緒に門までお出迎え。ああ、ほんっとーに猫耳としっぽ隠さなくっていいって楽だわー。
「あら、ミケちゃんミニスカすっごい似合ってる! 可愛い~」
ロングスカートも悪くないけれど、活動的なミケちゃんはやはりミニスカのほうがよく似合う。しかも、猫耳&しっぽ!
「ふふーん、でしょ~? これも、神奈おねーさんや白部センセーがミケたちのために動いてくれたおかげね! 感謝するわ」
感謝と言いつつ胸を反らしドヤ顔。そんなところも彼女らしい。
「立ち話もなんだし、中へどうぞ~」
というわけで、二人をお招き。さつきさんが冷蔵庫を借りたいと言うので、お貸ししたけれど……お弁当箱じゃなく紙包みね? なんだろう?
あ、そうそう。また飲み物をいただいてしまいました。ありがとうございます。
◆ ◆ ◆
「神奈さんの仕事部屋に来るのも久しぶりっすね~」
感慨深げに寝室を見渡すさつきさん。そういえば、前に取材受けたことがあったっけ。
「ベッド、大きくなってるっすね?」
「ええ。印税も入りましたし、思い切って買い替えました」
などと、ほのぼの雑談。
「あ、そうそう。『大航海世代』買ったって、優輝ちゃんから聞いたっすよー」
「ああ、昨日買ったゲームですね。実はまだ開封してなくて」
「だったら、ちょうどいいからみんなでやらないっすか?」
うーん、原稿も進めたいけど……ちょっとぐらいならいいかな?
「やり方は教えるっすよー。ミケちゃん、初心者さんにえげつないプレイしちゃダメっすよー」
「う、わかってるわよ……。ミケはオトナですもの。いい感じに手加減できちゃうんだから!」
あらやだ、可愛い。
ともかくも、さつきさんにレクチャーを受けながら四人でプレイ。
このゲームは、大航海時代をモデルにすごろく形式で世界中を帆船で巡りながら交易品を売買し、一番のお金持ちを目指す……という内容らしい。
で、ゲームを進めていってるわけだけど……。
「あう~! またネズミが湧いた~」
「神奈さん、ツイてないっすねー。猫カード持っといたほうがいいっすよー」
どうにも私はサイコロ運が無いらしい。
「おお~! チーズいっぱい買う~」
「アメリ、さっきから食べ物の売買ばっかりね」
「いや、それ実はいい戦略っすよ。部門賞ってのがあって、食品王っていうので最後にボーナスがもらえるんす」
へー、いろんな勝ち筋があるんだなあ。多分趣味で食べ物扱ってるだけだろうけど、初プレイでそこに至るとは……アメリ、恐ろしい子!
「ミケは夢はでっかくインド航路よ~! 胡椒~、待ってなさーい!」
ミケちゃんはいきなり胡椒売買を目指す模様。
「この頃の胡椒って、入手難じゃありませんでした?」
「っす。なんで、ミケちゃんは当たれば大きい大バクチ路線っすね。初心者には手堅く地中海巡りがおすすめっすよ」
へー。
そういうさつきさんは、アフリカ・ヨーロッパ間で金と象牙、ワインと銃をピストン輸送してる。ミケちゃんほどじゃないけど、ちょっと長めの航路だ。
私は、とりあえず彼女におすすめされた地中海路線でいこう。部門賞があるって言ってたっけ。陶器と美術品を中心に扱ってみようかな?
◆ ◆ ◆
ゲームは進んでいき、終盤戦。私もコツがつかめてきて、そこそこソツのないプレイができるようになっている。地中海での投資額は私がトップ。このあたりは私の天下ね!
アメリは相変わらず食品王プレイ。世界中の味覚をコンプリートしそうな勢い。
ミケちゃんは胡椒バクチに勝ち、現在トップ。部門賞でもスパイス王取りそうだし、強い。
さつきさんも、アフリカから大西洋経由で新大陸に拠点を変え、タバコで荒稼ぎ。ミケちゃんと抜きつ抜かれつのデッドヒート。やはり、この二人熟練者だけはあるわ。
そして、ついに試合終了~!
一位、さつきさん。二位、ミケちゃん。三位、アメリ。ビリ、私。とほほ。私って、ほんとゲーム弱いわね。
「いやー、二人とも初めてにしては上手っすよ。今回、初心者の心を折りかねないから自分もミケちゃんも使わなかったっすけど、妨害カードを使うともっと白熱するっすよ」
へー。これでも十分面白かったけど、さらに燃えるのかー。
そんなこんなで、もうすぐお昼どき。それじゃー、サーモンサンドを作りましょー!
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