おっと、仕事に打ち込んでたらスマホのアラームが鳴りました! お米さんの炊っきあがりで~す!
「じゃ、行きましょーか。お姫様たち」
「おおー!」
「えー、アタシお姫様って柄かー?」
ふふふ、猫耳四人組はみんな可愛いお姫様ですよ。
◆ ◆ ◆
「はーい、それじゃあ夕ごはんも頑張って作っていきましょー。ノーラちゃんにも少し手伝ってもらうよ」
「おー!」
瞳をキラキラ輝かせるノーラ姫。ほほえま。
「で、ですねえ。どこまでの工程を私一人でやろうかちょっと悩んでいて……。アメリ、いつも私がやってるみたいにキャベツの芯くり抜くのできそう?」
「わかんないけど、やってみる!」
ふむ。
「じゃあ、任せてみようか。一応説明だけしておくとね、中心に向かうように四角く包丁で刺すの」
「わかった!」
「難しそうだったら代わるから言ってね」
私のほうは、いつもの脳内BGMスタート! ニシンに刃を入れ、上半身と下半身を泣き別れに。結構骨が硬い。
背後からは、ぎゅっ、ぎゅっという包丁を刺しているであろう音が聞こえる。
ニシンの切り身にそれぞれバッテンの切れ込みを入れ、バットに置いて料理酒をドボドボかける。
これで十分放置~。
「できた! ……と思う!」
背後からアメリシェフの声。どれどれ?
芯を引っ張ると、スポッと抜ける。
「お見事です、アメリシェフ!」
抜けた芯を掲げ見せ褒めると、「えへへ」と照れる。いつもながら可愛いですねえ、うちの天使ちゃんは。
「では、出番ですノーラシェフ。このキャベツの葉を私がいいと言うまで剥いて、まな板に重ねてください」
「おー! 任せろー!」
アメリと二人で作業を見守る。うん、順調順調。
「はい、そこまででオッケー!」
「ふう……。アタシ頑張った!?」
「うん、とっても。上手だね!」
洗い拭いた手で撫でると、「うへへ……」と、照れくさそうに微笑む。可愛いなあ。
視線を感じてそちらを見ると、羨ましそうに私たちを見ているアメリが。「アメリも頑張った! 偉い!」と頭を撫でると、「うにゅう」と目を細めて幸せそうに気抜け声を出すのでした。
おっと、そんなことをしてる間にタイマーが鳴りましたよ。
「それじゃあアメリちゃん。キャベツの葉っぱをやや大きめのざく切りにしてもらえるかな?」
「らじゃー!」
作業に取りかかるアメリシェフ。
私は、ニシンを取り出して水気をキッチンペーパーで拭き取り、圧力鍋に水百五十ミリリットル、料理酒七十五ミリリットル。お醤油大さじ三杯、みりん大さじ一杯半、お砂糖小さじ三杯を入れて中火で沸かす。
湧いたら、ニシンを入れて圧力鍋に蓋をし、これまた中火で十分。タイマーセットし、アメリの様子見。
「どう?」
「これで終わりー」
すとん、と最後の包丁が入って、ざく切りの出来上がり。
「はーい、お疲れ様ー。休んでていいよー」
コンロの一口は今ニシンを煮ているので、まずはおひたしから。時短のためにポットのお湯を手鍋で沸かし、キャベツの半分を茹でる。
ぐつぐつ……。
ん、茹で上がりましたかね。ザルに揚げて素早く流水で冷却。余分な水分をギュッと絞り、お皿に盛り付ける。あとは味付けだけだから一旦置いといて……。
続いてもう一度ポットからお湯を沸かし、残りのキャベツを投入。茹で上がったら火を止めお味噌を溶く。味見……。よし!
あとは、おひたしに水で割っためんつゆをかけ、鰹節を載せたらおひたしも完成~!
タイマーを見ると、ニシンももうすぐ出来上がる。……鳴りました! 蒸気を抜き、蓋を取る。
「はーい、でっきあがりでーす」
それぞれとごはん、お茶を配膳し、エプロン外して着席。
「それじゃあいただきましょう。いただきます!」
「「いただきます!」」
まずはニシンから~。うーん、圧力鍋のおかげで骨まで柔らか! 小骨もまったく気にならない。味付けも、我ながら実に良し。
「美味しい!」
「うめーっ!」
お姫様たちも大絶賛。
「ふふ、ありがと。キャベツもどうぞ」
おひたしをきゅっと噛む。春キャベツの程よい甘みがいい感じ。これにさっぱりしためんつゆと鰹節の旨味が実に合う。
お味噌汁もいただきましょう。キャベツがダブってしまったけど、ひと玉をなるべく消費したかったからね。それに、ちゃんと美味しいから無問題!
ふう。美味しゅうございました。
「ごちそうさま」
子供たちはまだごはんを一所懸命食べてるので、その様子を見守る。二人とも可愛いなあ。「美味しい、美味しい」って食べてくれて、嬉しくなる。
ノーラちゃん、アメリの順にごちそうさま宣言。締めのお茶を飲む。
「みんなで協力して作ったお料理、美味しかったね」
「「うん!」」
二人がハモる。ふふ、ほほえま。
「じゃあ、後片付けしておくから先に歯を磨いててちょうだい」
「はーい」と、洗面所に向かうお嬢様たち。
二人に合流し、歯磨き開始。先に二人が終わり、寝室に戻って行く。
私も寝室に戻り、お仕事再開。
会話をBGMに筆を走らせていると、八時頃にインタホンが鳴りました。
「はーい。どちら様でしょう?」
察しがつくけど、一応尋ねる。
「こんばんは。白部です。ノーラちゃんを迎えに来ました」
「こんばんはー。今、連れていきまーす」
アメリも外着モードなので、三人で門に向かう。
「ルリ姉ー!」
ノーラちゃんが白部さんにガバっと抱きつく。彼女はアメリも大好きだけど、やはり一番恋しいのは白部さんだ。
「ただいま。いい子にしてた?」
「してた! な!?」
私たちの方を振り向き同意を求めるので、「うんうん」と頷く。思えば最初に預かったときはアメリとちょっと揉めちゃったんだっけ。すっかりそのへんをクリアしてて。白部さんのご教育がいいんだなあ。
「そっかー、偉かったねー。こんばんは、アメリちゃん」
「せんせー、こんばんはー!」
その後は、今日どんなことがあったかをかいつまんで話す。
「そうでしたか。今日は本当に、ありがとうございました」
「いえいえ、大したことでは」
「こちら、『あおばや』さんのお菓子です。召し上がってください」
「ご丁寧にありがとうございます」
互いにお辞儀。
「遅くなってしまいましたし、これでお暇しますね」
「はい。お疲れ様でした」
再度お辞儀しあい、対面に歩いていく二人を見守る。「またなー!」と振り向き手を振るノーラちゃんに、アメリともども手を振り返す。
「ふう。今日も楽しい一日だったねー」
「うん!」
そんな会話をしながら、私たちも寝室へと戻るのでした。
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