神奈さんとアメリちゃん

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第三百六十八話 愛しのケイティちゃん ―前編―

公開日時: 2021年10月1日(金) 21:01
文字数:2,668

「今日はいい天気で良かったですねー」


 雲ひとつない晴天の下、助手席のまりあさんに話しかける。


 今日は二十日、お楽しみのピュアランドデイ!


 お仕事もだいぶ進めておいたし、憂いなく遊べるってもんです。


「ええ。全天候型テーマパークでも、やはりこう天気が良いとワクワク感が違いますね」


 運転中につき脇見できないけど、多分微笑んでいらっしゃることでしょう。


 まりあさんのおっしゃる通り、ピュアランドは屋内にある全天候型テーマパーク。


 しかしそれでも、どんよりとした空の中車を走らせるよりは、はるかに気分がいい。


 子供二人は、例の江戸時代漫画のネタバレはアメリに禁じてるので、福井旅行の過去バナを語り合っています。アメリも温泉入りたかったようで。今度、連れて行ってあげようかなあ。


 そんな感じで、車を走らせること三十分。着きましたよー、ピュアランド!


「はーい、到着でーす!」


 スパッと一発で車を駐車場に停め、キーを抜く。ふふ、私かっこいい?


「お疲れ様でした。ありがとうございます。角照さんたちと白部さんたちは、もう到着されているそうです」


 見ていたスマホをしまいながら、降車するまりあさん。子供たちも降りる。


 私も外に出ると、向こうにでっかい建物が見えますねえ!


 とはいっても、ピュアランドは下に伸びてる施設らしく、どかーんとビルが建ってるって感じじゃないけど。それでも、横に広い。さっすがー。


 子供たちはわくわくの極みで、特にうちのお嬢様なんて興奮でぷるぷる震えてしまっている。


「おねーちゃん、ここにケイティちゃんがいるんだよね!?」


「そうだよー。楽しみだねー」


 中に人が入ってるなんて、ロマンぶち壊しなことは教えなくていいよね。


 建物に近づいていくと、入口の横に見慣れた人影が七人。手を振ると向こうも気づいたようで、こちらに手を振ってくる。


「お待たせしちゃいました?」


「いえいえ、せいぜい数分ですよ。神奈さんは、まりあさんのお迎えがありましたし」


 気さくに返してくださる優輝さん。


 係員さん方、新たに増えた猫耳ちゃんたちに少しびっくりしたようだけど、そこはプロ。ちょっと眉を上げただけで、すぐに笑顔に戻ります。


 というわけで、一日用パスポートを購入! 久美さんが「大人料金で!」と強調してたのに、ちょっと心中苦笑い。いや、笑ったら失礼だけれども。正直というか、やっぱりプライドなのでしょうね。


 それはさておき入館すると、さっそくどのレストランで食べるかに話題が移りました。正確には、レストランじゃなくてフードコートが多いみたいだけど、細かいことはいいのデス!


「ウチ、ビュッフェがいいわ」


 見た目の割によく食べる久美さんが、ビュッフェを提案。


「グリーディング……ってなんでしょうね?」


 まりあさんがパンフレットを見ながら首を傾げる。それパンフレットによると、ビュッフェ「マンションズ・レストラン」ではグリーディングも楽しめますって書いてあるね。


「きぐ……キャラとのふれあいが楽しめるみたいですよ」


 子供たちの夢を壊しそうになり、慌てて言い直す優輝さん。


「時間も十一時開店で、ちょうどいいですね」


「じゃあ、そこにしましょう!」


 白部さんと私も話に乗り、四階……出入り口は三階なので、エスカレーターで上を目指す。


 店舗前にやってまいりました! さっそく、整理券を受け取る。幸いまだ空いていたので、数分待っているだけで入れました。


 愛想のいい店員さんの説明によると、ビュッフェというよりいわゆるバイキングのようで。七十分食べ放題って寸法らしいです。


 さっそく料金を支払い席を確保すると、娘と一緒に食べ物を取りに行きます。


「あ、アメリー。ケイティちゃんのゼリーがあるよー」


 食品は、キャラ物《・・・・》が多いけど、そうでないのもたくさんあります。


 「おお!」と、さっそくケイテイちゃんの顔をした大きなミルクゼリーを取りわけようとするものの、ケイティちゃんを傷つけるのをためらってしまっています。


「ケイティちゃんが、『アメリちゃんに食べてほしいよー』って言ってるよー」


「うう……ごめんなさい、ケイティちゃん!」


 なるべくダメージを与えないように(?)右耳を取り皿に入れるお嬢様。


 ほかにもスイーツが多数あるものの、スイーツから攻めたい気持ちを抑え、サラダコーナーに。


 普通の取り分けのほかに、すでにカップに盛り付けられているお手軽なのもあったので、それをひとつ。


「アメリもお野菜食べよう?」


「うん!」


 アメリちゃんも、ケイティちゃんのかまぼこ(?)が入ったカップを取りました。


 さらにぐるぐる回ると、ケイティちゃんのおいなりさんと、肉まんを発見! もちろん、取っていくうちの娘。ほんとケイティちゃん好きなのねー。


 私は、ステーキなんてゴージャスなモノがあったので、それをお皿に。


 カレーコーナーに行くと、久美さんとばったり出会いました。


「よ。そっち塩梅どう?」


「アメリ、こんな感じですよ。見せて差し上げて」


 ケイティちゃんだらけのお皿を見せると、「はは、アメ子らしいや!」と、久美さんがほほえましそうに笑う。


「ところでさ、このカレー、色すごくね?」


 見ると、青いカレーが……。


「面白そうだから、ウチはこれ取るぜ」と、いたずらっぽい笑みを浮かべて、ライスに青いカレーをかける彼女。


「たしかに、どんな味か気になりますね……私もいただきます」


 というわけで、ブルーカレーとナンをお皿に盛る。


「あら、なんですか、このカラフルなの?」


 久美さんのトレイにラーメンの小皿が入っているけど、そこの赤だの青だのをした、謎のカラフルな楕円球が目につく。


「これ? 多分うずらだと思うぜ」


 へー、うずらの卵かー。面白そう。私も後で取ろうかな。私と久美さんって、結構こういういたずらっぽいところ似てるかも。


 私は最後に牛タンチューを取り、アメリと一緒に席に戻る。


「「いただきます!」」


 まずは、シチューから……ぱくっ。あら、美味しい!! いや、テーマパークごはんとあなどれない美味だわ。ブラボー!


 カレーは甘口で、文字通りの色物の割にはちゃんと美味しい。


 すると、突然「ケイティちゃんだ!」とアメリがガタッと立ち上がる。


 どうしたのかと背後を振り返ると、ケイティちゃんのきぐるみが席を回ってお客さんと触れ回ってました。へー、これがグリーディングかー。


「アメリ、座ろう」


「お、おお……」


 キラキラした視線でケイティちゃんを追いかけながら、夢見心地に食事するうちの子。ちゃんと味わえてるのかしら?


 そして、ついにケイティちゃんが私たちのところにもやって来ました。


 ところがここで、予期せぬハプニングが! 続く!

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