神奈さんとアメリちゃん

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第五百四話 メイドさんがやってきた!?

公開日時: 2022年2月22日(火) 21:01
文字数:2,999

 今日は、ミケちゃんとクロちゃん、押江先生が来る日。


 クロちゃんは、いつも遅れ気味だからと時間の少し前に来ていて、算数チャレンジ中。アメリちゃんは、今日も地球のお勉強です。


 おっと。そんなことを考えていたら、チャイムが。


「はーい、どちら様でしょう?」


 まあ、ミケちゃんだろうけど。


「どもー。自分っす。ミケちゃんと一緒っすー」


 あれ? さつきさん? どうしたのかしら? とりあえず、出てみましょ。


 迎えに行くと……。


 そこには、「おすまししたメイドさん」が佇んでいました。


 しばし、固まる私。


「あの、さつきさん。それは一体……」


「今日は、自分がご奉仕させていただくっす、お嬢様」


 スカートをつまみ、足を一歩引き、反対の膝を曲げる彼女。カーテシーとかいうんだっけ。それにしても、わけがわからないよ……。


「ミケは止めたわよ」


 眉をしかめて、こめかみのあたりを人差し指で、こつこつ叩くミケちゃん。


「とりあえず、長袖で暑いんで、中に入れていただけるとありがたいっす」


「あ、はい……」


 状況が把握できないまま、とりあえず二人を招き入れるのでした。



 ◆ ◆ ◆



 寝室に案内すると、クロちゃん、先生が固まります。アメリちゃんは、「おお~」と、謎の感心。


「ええと、こちら、お隣に住んでいる松平さつきさんです。その、今日はこんな格好ですけど、メイドさんではなく、絵師さんです」


「お初にお目にかかりますっす」


 再び、カーテシーをするさつきさん。ミケちゃんはため息。


「とりあえず、お茶入れてきます」


「あ。今日はご奉仕デーっすから、自分がやるっす」


 よくわからないけど、ほんとにメイドさんをなさるつもりらしい。


「いえ、お茶やポットのこと、わからないでしょうし……」


「だったら、最初に教えていただくっす」


 う~ん、いちいち調子狂うな。とりあえず、好きにさせてみましょう……。



 ◆ ◆ ◆



 というわけで、さつきさんがれてくださったアイスティーを手に、デスクについてるわけですが。


「あの、そろそろ事情を説明していただけますと」


「いや、姉さん、優輝ちゃん、由香里ちゃんと、みんな神奈さんのお手伝いしに伺ったじゃないっすか。で、自分もなにかお手伝いしないと、心地悪いなあって思ったんすよ」


「ありがたいお話ですけど、その格好は……」


「これっすか? コミットで着ようと思ったんすけどね、姉さんに熱中症になるからやめとけって止められたんす。なんで、供養っすね。あと、ノリっす」


 さすが、自称、冗談と悪ノリに生きているだけありますね……。


「というわけで、今日はなんでも言いつけてほしいっす!」


 満面の笑顔。なんというか、この。とはいえ、ちょうどありがたいといえば、ありがたい。


「じゃあ、ミケちゃんとクロちゃんの勉強、見てあげていただけますか? 最近、いつも自習なので」


「かしこまりましたっす、神奈お嬢様。では、ちょっと教材を見せてほしいっす、ミケお嬢様、クロお嬢様」


 うーん、お嬢様がゲシュタルト崩壊。経緯いきさつはともかく、仕事に打ち込めるのはありがたいけれど。



 ◆ ◆ ◆



 ありがたいことに、授業では悪ノリせず、きちんと教えてくださっているようです。


「では、休憩にしましょう、アメリさん。程よい休憩が、いい勉強のコツです!」


「おお~」


 さつきさんのお人柄を理解した先生。順応力が高いのか、マイペースに授業を進めていました。


「ミケも、そろそろ休憩したいわ」


「かしこまりましたっす、お嬢様。新しいお茶をれてくるっすね」


「ありがとうございます。お手数かけます」


 ほんとに、かいがいしく働いてくださいますねえ。



 ◆ ◆ ◆



 夕方になり、まずはクロちゃんが帰宅。先生も、程なくして帰られました。


「戻りましたー。ミケちゃんは、帰らなくていいの?」


「ねえ、さつき。アメリと少し遊んでいたいんだけど、ダメかな?」


「では、自分もご一緒させていただくっす、お嬢様。優輝ちゃんには、自分から伝えておくっす」


 スマホを取り出すさつきさん。


「えーと、すみません。私たちも、夕飯の支度しませんと……」


「だったら、それも自分にお任せくださいっす、お嬢様。向こうから材料取ってくるので、お待ちくださいませっす。ごはんだけ、四人分炊かせていただくっすね」


 ぺこりと一礼して、去っていくさつきさん。ええ~!?


「いいのかしら」


「好きにさせてあげて。あれでけっこー、エンジョイしてるから」


 さすが、同居人。ノリを完全把握してるのね。


 とりあえず、前注意されたし、鍵かけとこっと。



 ◆ ◆ ◆



 しばしして、インタホンが鳴り、応対~。


 さつきさんだったので、再度招き入れます。


「なんだか、本当に悪いですねえ」


「いえ。好きでやらせてもらってるっすから。お台所借りるっすね」


「調味料の場所、教えますね」


 もはや、流れに身を任せることにしました。


「なるほどなるほど。では、向こう寝室でお待ちくださいっす」


「ありがとうございます」


 一礼して、寝室に戻る。ミケちゃんとアメリは、例によってダンス対決しているところ。


 デスクで聞きながら、筆を走らせます。


「おお~! やっぱり、ミケ強い!」


「ふふん。ダテに週二日、教室に通ってないわよ」


 おお、ミケちゃんWinですねえ。さすが。


 こんな感じで、数ゲームすることしばし。


「お嬢様方、お待たせしたっす! できたので、キッチンへどうぞっす~」


「ありがとうございます、お疲れ様でした」


 後をついていく私たち。


 テーブルに乗っていたのは……オムライス?


「エスニックなあれなんですか、これも?」


「いえ、ふつーのオムライスっす、お嬢様。今日はメイドさんっすからね」


 あー、漫画のメイド喫茶でよく見るー。


「ではアメリお嬢様、一緒に美味しくなる魔法の呪文を唱えてくださいっす~。美味しくなーれ、美味しくなーれ。萌え萌えキュン!」


 アメリの横で、ケチャップを手に立つさつきさん。ほんとにメイド喫茶だこれー!


「おお~。美味しくなーれ、美味しくなーれ。萌え萌えキュン!」


 オムライスに、きれいなハートが描かれる。ノリがいいですね、アメリちゃん……。


「次は、ミケお嬢様っす! さ、ご一緒に」


「ええ~? ミケもそれやるの~?」


 眉をしかめて、さつきさんを見上げるミケちゃん。メイドさんの笑顔が眩しい。


「うう……。美味しくなーれ、美味しくなーれ。萌え萌えキュン!」


 半ば、やけくそ気味に詠唱するミケお嬢様。こちらにもハートが。


「では、神奈お嬢様も!」


 ですよねー。


「お……美味しくなーれ、美味しくなーれ。萌え萌えキュン!」


 私も、ほとんど捨て鉢で詠唱! マイ・オムライスにも、可愛いハートさん。


「では最後、自分っすねー。美味しくなーれ、美味しくなーれ。萌え萌えキュン!」


 一人で詠唱して、ハートを描くさつきさん。やれやれ。


「では、いただきましょうっす。音頭取りをお願いしますっす、神奈お嬢様」


「あ、はい。いただきます!」


 皆で、いただきますの合唱。


 さすが、さつきさん。味はたしか。


「美味しいです~」


「お褒めに預かり、ありがとうございますっす」


 微笑むメイドさん。


 こうして美味しくご飯を食べ終わり、ミケちゃんとさつきさんも、帰宅することになりました。


「今日は、メイドライフをエンジョイできて、面白かったっす。また、ご奉仕しに来ますっすね」


「いえいえ、お気遣いなく。今日は、ありがとうございました」


 深々とお辞儀。


 また、メイド服で登場するのかなあ。普通に来てほしいけど。


 ともかくも、なんだかへんてこな一日は、終わりを告げたのでした。

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