朝九時頃、ネームに打ち込んでいるとスマホが鳴りました。送信者を見ると、優輝さん。
「おはようございまーす。どうされましたー?」
「おはようございます。今日、お忙しいですか?」
「忙しいといえば忙しいですけど、丸一日の用事とかでなければ手が空きますよ」
例によって、マルチタスクで仕事しながら返答する。
「だったら、先に用件から話したほうがいいですね。ミケがミニスカ履きたいというものだから、『るるる』にご一緒にいかがかと思いまして」
ほー。たしかに、ロングスカートってよりミニスカって柄よね、ミケちゃん。
「そうですねえ。アメリの今の外着は本来部屋着用に買ったものですから、外着専用に何か買ってあげるのも悪くないですねえ」
可愛い子にはおしゃれさせよ。……そんな格言はないけれど、なにか新しい服を買ってあげたいというのはある。
「まりあさんたちはお誘いするんですか?」
「あ、もうしてあります。まりあさんも白部さんも、せっかくだからって感じで応じてくれました。言い出しっぺですから、まりあさんとクロちゃんはあたしが連れていくことになってます」
おお、手回しがいい。
「では、行きましょうか。何時頃あちらに着いていればいいですか?」
「そうですね。十一時にしましょう。現地で何か食べてから、お買い物って感じで」
「わかりました。細かい合流場所は後でご指定願いますね」
というわけで、通話終了。
「アーメリちゃーん。十一時にるるるにお買い物に行くことになりましたよー」
ブロック遊びをしていた彼女に話しかける。
「おお? おもちゃ買うの?」
「あー、買ってもいいねー。でも、今回のメインはお洋服なのです。もっと外で動きやすい服欲しいでしょ?」
「おおー!」
瞳をキラキラ輝かせるアメリ姫。うふふ、ほほえマイエンジェル!
◆ ◆ ◆
とうわけで現地。二階掲示板前に皆さんすでに集まられてました。
「すみませーん、お待たせしましたかー?」
「いえ、ついさっき来たばかりですよ」
優輝さんが気さくに答える。しかし、やっぱりというか、私たち注目の的ね。
「お昼、どこにしましょうね?」
「『パルの木々』でいかがでしょう?」
というわけで、まりあさんのご提案でいつものお店へ。おいしくオムライスをいただきました。
そういえば、最初口をケチャップまみれにしていたノーラちゃん、すっかり食べるの上手になったなあ。感心感心。
続いて、本日のメインである児童服売り場へ。
クロちゃんはこれといってイメチェンの展望がないようで、まりあさんと一緒に店内をぶらぶらウィンドゥショッピング。残り六人で子どもたちの服を見繕います。
「ノーラちゃん、こういうのどう?」
白部さんが、薄緑基調のショートパンツを手に取る。
「おー、動きやすそうだなー!」
さっそく気に入った模様。
「アメリもこっちの似た感じの薄紫のにしてみる?」
「うん!」
うちのお嬢様も気に入ったご様子。
優輝さんたちはスカートコーナーで、ミケちゃんの好みがいまいちビビッと来ないのか、とっかえひっかえ悪戦苦闘。
そのうちいくつかを選び、試着室に入っていきました。私たちも試してみましょうかね。上に着るケイティちゃんのシャツも持って行って、と。
「アメリー、どーう?」
「いいと思う!」
どうやら一発で気に入ってく売れたようで何より。
隣からは、ミケちゃんの唸り声が聞こえる。
「これ、どうかしら?」
彼女がカーテンを開け、ピンクと白のギンガムチェックのスカートを優輝さんに見せる。
「可愛いいよ、ミケ!」
「まーね! ミケはに着ても似合うもの。神奈おねーさんたち、どうかしら?」
「お、私も? ……似合ってると思うよ!」
白部さんも同意する。
「そう? でも、もう一つなのよねー」
再度カーテンを締め、今度はチェリーのプリントが施されたスカートを見せる。
「どう?」
「似合ってるよ」
うんうんと頷く私たち。
「うーん、個人的にはさっきのと二択なのよね」
「じゃあ、両方買っていこうか?」
優輝さんが、こともなげに言う。ゲーム売れて羽振りいいものね。
「いいの!?」 じゃあ、両方買いましょ!」
というわけで、ミケちゃんも決定。
ノーラちゃんは、最初に選んだショートパンツにしたようです。
「下着類も買っていきましょうか。これから暑くなるし」
白部さんは、ノーラちゃんの下着を買い足すことにした模様。うちも買おうかな。
こんな感じで、無事服も購入完了。まりあさんもクロちゃんの下着だけ買ったようです。
「アメリがおもちゃ欲しいようなのですけど、お付き合いいただいて構いませんか?」
「はい、構いませんよ」
優輝さんを筆頭に皆さんの快諾をいただき、「トイザウるス」へ。
「で、アメリはどんなのが欲しいの?」
「新しいゲーム欲しい!」
おおう、私のアドバイスできない分野だ。しかーし、隣に心強いアドバイザーがいるのです!
「優輝さん、相談に乗ってあげていただけますか?」
「お任せあれ。アメリちゃん、どんなのがやりたいのかな?」
「んーとね、ダンスだと一度に二人しか遊べないでしょー? だから、もっと大勢で遊べるの!」
アメリのオーダーを聞くと、「ふむふむ」とゲームの棚を物色し始める優輝さん。
「これとかどう? ボードゲームっていうジャンルで、世界中を飛び回っていろんな名物を買うんだ」
「おお~。面白い?」
「うん。うちでもよく遊んでるよ。ちょっと漢字が難しいかもだけど、神奈さんに教わりながらやるといいんじゃないかな」
「おお~!」と瞳を輝かせるアメリ。
「これにする?」
「うん!」
アメリちゃん、いたく気に入ったようです。人数分のコントローラーと一緒にかごへ。
「少し、男児玩具売場を見ても構いませんか?」
白部さんのご提案で、ぞろぞろ同行。
「やっぱ、エレメントレンジャーねーなー……」
がっくり肩を落とすノーラちゃん。
「こういうのはどう?」
別の特撮の玩具と思しき戦闘機を見せる白部さん。しかし、ノーラちゃんの反応は今ひとつ。本当に、エレメントレンジャーが好きなのね。
「いいや、アタシはゴッドレンジャーをずっと大事にする!」
決意を新たにしたようです。初志一徹なのね、ノーラちゃん。
一方、道すがらクロちゃんが、プラモデルの箱を手に取りました。ものは姫路城。し、渋い……。お買い上げする宇多野姉妹。
その後は、近くの「フォレスト」でしっぽ穴のためのあて布を買ったり、はたまた踵を返して「麗文堂」で子供向け科学本を買ったり、ショッピング三昧でした。
「いやー、今日はありがとうございました」
駐車場で、優輝さんが頭を下げる。
「いえいえ。私も案外色々買うものがあって、いい機会でしたよ」
実際、各人今日は色々買っている。
「そう仰っていただけるとありがたいです。では、帰りましょうか」
というわけで、みんなで家路をたどる。
今日も一日平和だなあ。こないだまでの激動が、ウソのようだ。良き哉良き哉。
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