夕暮れどきは私にとって買い出しタイム。今日はサンドイッチ作ってパンも切らしちゃったし、アメリに何か美味しいものを作ってあげたい。
というわけで、外出しましょー!
「アーメリ! お勉強の方はどうかなー?」
寝室に戻り、鉛筆片手に色々書いていた彼女に調子を問う。
「おお~! いっぱい書いたー!」
成果を「じゃん!」という感じで見せてくる。ローマ字だから読みにくいけど、どうもざっと見た感じ、色んなものの名前を書いていたらしい。たとえば、Udon no megamisamaとかSamenosuke、ほかにはterebi、omuraisuなんかがパッと目に入る。
「おお~! 頑張ってるねー。今日もいつものスーパーにお買い物に行こうと思うんだけど、どう?」
「行くー!」
元気に立ち上がって、紙や筆記用具をどうしようかという感じできょろきょろするので、受け取って仕事机の引き出しにしまう。これは、私とアメリの記念となる宝物だ。
仕事机と言えば、アメリにも勉強机を買ってあげたほうがいいなあ。とはいえ、デスクを置くスペースなんて寝室にはもうないし……。よし、折衷案ってことで今度折り畳み机と可動式座椅子を買おう。
とまあ、そんな事を考えながらアメリのお着替えを待ち、仲良く自転車を出すのでした。
◆ ◆ ◆
自転車といえば。
スーパーに向かって漕いでる途中、ふとした思考が頭をよぎる。
そろそろ交通ルールについて教えるべきなのでは?
アメリが外出するときは、お隣さんのかくてるハウスに行き来させるとき以外私が必ず同行・先導してるけど、一人でクロちゃんのところへ遊びに行ってみたいと思うこともあるはず。
よし!
「アメリちゃん。さらにちょっと、新しいお勉強をしてみる気はあるかな?」
「おお~? 今度は何?」
「そだねー。信号の渡り方を覚えようか」
自転車が車両扱いであることとか、本当は車道の左側を走らなければいけないとか、そういうこともきちんと教えていくべきなのだろうけど、いくらなんでも今日一日で色々詰め込み過ぎだと思うので、それはまたの機会にしよう。
「アメリ、ちょっとストーップ」
交差点で停車する。
「この、白いはしごみたいなの描かれてるよね?」
目の前の横断歩道を指差す。
「うん」
「これは横断歩道っていってね。人が車の通り道を横切ってもいい場所ですよーっていうことを教えてくれているの」
「おお~! 知らなかった!」
アメリが感心の声を上げる。
「で、向こうに人が歩いている絵が描かれた、緑色のランプがあるよね?」
「うん、うん」
「あれは歩行者用信号っていって、緑に光ってれば『横断歩道を渡ってもいいですよー』って意味で、赤く光ってたら『止まって待っててくださいねー』って意味なの」
「おお~」と、さらに感心する彼女。
「で、ちょっと見ててごらん」
青信号が点滅を始める。
「ああなったら、『もうすぐランプが赤くなりますよー』って合図なのね。横断歩道を渡る前だったら止まって、渡ってる最中だったら急いで向こう側に行くんだよ」
「わかった!」
信号が赤くなる。
「うん、赤くなったね。こうなったらストップってわけ。で、それぞれの呼び名なんだけど、緑を青信号、赤を赤信号って呼ぶの」
「おお? なんで緑なのに青なの?」
「んー……。それは私も不思議なんだけどね、なんかそう呼ぶことになってるのよ。だから、とりあえずそう覚えちゃって」
「わかった!」と、再び元気に返事する。
「で、スーパーへの通り道にはないけど、黄色い箱が付いた柱が近くにある横断歩道がたまにあるんだけど、それは何もしないで待っていても青信号にならないから、黄色い箱の赤いボタンを押して待つんだよ」
「はーい!」
元気に、しゅびっと挙手する。
「あと、信号がない横断歩道だけのところも割とあるんだけど、これは左右をよく見て、車が近付いてないことを確認して渡るんだよ。歩いているときは右手を高く挙げながら渡ってね」
「わかった!」
またもや元気なお返事。良き哉良き哉。
「あとは……あっちに、横向きにランプが付いてるのがあるね。今赤いの」
「うん、うん」と頷く彼女。
「あれも歩行者用信号に意味は近いけど、車のためのものなの。本来はこういう自転車もあっちを見て渡ったり止まったりしないといけないんだけど」
「む、むずかしい……」
「うん、今は『そういうのがあるんだなー』程度でいいからね。で、こっちには黄信号っていう黄色いランプがあるんだけど、これは歩行者用信号の青信号の点滅と同じ意味。だいたい、歩行者用信号と光り方が一緒だから、そんなに混乱しないと思うよ」
「うーん……よくわかんないけどわかった」と自信なさげな返事。むう、やっぱり詰め込み過ぎだったかな。
「よし! お勉強はここまで! じゃあ、実際試してみようか。さあ、アメリ。今、私たちはどうしたらいいかな?」
信号は青。
「えーと……横断歩道を渡る!」
「正解です! じゃあ、渡りましょ~」
こんな感じで、横断歩道があるたびクイズを繰り返しながら、スーパーへと向かいました。
ちなみに、お米を水に浸すことを忘れていたのをスーパーに着いてから気付き、今日の晩ごはんはロールパンとホワイトシチューになりました。美味しかったけど、自分のうっかりぶりにがっくりです。
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