神奈さんとアメリちゃん

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第百話 神奈、かくてるハウスのキッチンに立つ ―前編―

公開日時: 2021年4月22日(木) 17:01
文字数:2,122

今日ももっそもっそと、朝食のトーストをいーてぃんぐ・なう。この後は、アメリをかくてるの皆さんに預けてまりあさんのおかゆを用意して、ゴミのお片付けをしたらかくてるハウスでアメリたちの面倒をみる予定。現時点で一番暇なの私だからねー。不幸中の幸いというか、自由に動ける状態で良かった。


 あ、そうそう。原稿は無事受領されてました。


「アメリー。今日はまた私、まりあさんのところに行くね。その間、お隣で待っててもらえるかな?」


 ふわあと大あくび。


「ええ~、アメリも一緒に行きたい……」


「ごめんねー。まりあさんの風邪が感染うつっちゃうと大変だし、何よりクロちゃんを元気づけてあげてほしいの。クロちゃん、きっとすごく心細いだろうから」


 そう言うと、「うにゅう~……」と唸りながらしばし逡巡しゅんじゅんした後、「わかった」と、同意してくれた。アメリ、ほんといい子よね。


「もう少ししゃっきりしたら、おでかけね」


 ふわあと、また大あくび。朝食が遅くなってすみません、まりあさん。私、ほんとに朝ダメなんです……。



 ◆ ◆ ◆



「本当に、お手数をおかけして申し訳ありません」


 こんこんと軽く咳き込みながらベッドで上半身を起こし、頭を下げるまりあさん。うん、だいぶ咳も軽くなってきたね。彼女のももの上に水とおかゆ、そしてお薬が載ったお盆を置く。


「いえいえ。私にとって、まりあさん大事な人ですもの。まりあさんが困っていたら、助けたいですから」


「ありがとうございます」


 マスクを外しながら、ちょっと照れくさそうなまりあさん。年上に失礼かもだけど、可愛い。


「食べ終わったら呼んでくださいね。またおかゆを、晩までのぶんレンチンで温めて食べられるようにしておきますんで」


「はい。このお礼はいつかさせていただきますね」


「水臭いこと言わないでくださいよ。やりたくてやってることですから。私とまりあさんの仲じゃないですか」


 そう言うと、「ありがとうございます」と再度頭を下げられる。そういえば、優輝さんにとって私ってこんな風に映ってたのかな。そう思うと、あまりご厚意に遠慮しないほうがいいかなと考えを改める。


 そんなこんなでまりあさんの看病も終わり、大急ぎでかくてるハウスへ!



 ◆ ◆ ◆



「こんにちは~」


 自宅から持ってきたマイエプロンを手にリビングにお邪魔すると、門を開けてくれた久美さんが「いらっしゃーい」とソファから声をかけてくれる。同様に腰掛けていた、クロちゃんとミケちゃんも、「こんにちは」と挨拶してくる。


「おねーちゃーん!」


 アメリが駆け寄ってひしっと抱きついてくるので、屈んで抱きしめ返す。


「いい子にしてた?」


「うん! ね、久美おねーちゃん?」


「おー、アメ子すごくいい子にしてたなー。クロ子のいい話し相手してたよ」


 久美さんが笑顔でアメリの善行を保証してくれる。


「そっかー、偉かったねー」


 頭を撫でると、「うにゅう」と気の抜けた声を上げる。


「ちょっと、久美ー。ミケもクロの話し相手したわよー!?」


 ミケちゃんが不満を訴えると、「そーだな、ミケ子も偉いよな」と、頭を撫でる。ふふふん、と胸をそらしてドヤ顔のミケちゃん。ほほえま。


「そういえば、ほかの皆さんは?」


「あー、シンプルに仕事中。ウチは午前の自己ノルマが終わったから休憩込みでちびっこたちの世話」


 なるほど。


「あ、そーだ。マスペ一緒に飲もーぜ。取ってくるわ」


「ありがとうございます」


 というわけで、五人でしばし休憩。クロちゃんも心細いだろうに、それを表に出さない。健気だなあ。


「クロちゃん。まりあさん、見るからに快方に向かってるよ」


「本当ですか? 良かった……」


 ほっと胸を撫で下ろす彼女。ほんと健気。久美さんが、「良かったなー、クロ子ー! きっとすぐ元気になるぞー!」とクロちゃんの頭をうりうり撫でながら励ます。


「ん、そろそろお昼か。んじゃ神奈サン、一緒に飯作るか! 幸いうち、キッチン広いしな!」


「いいんですか? 私一人でも……」


「さっきも言ったじゃん、午前のノルマ終わったって。あと、本来当番だしな。それに、うちの調理器具の配置とか使い方わかんないっしょ?」


 たしかに。


「では、お世話になります」


「いやいや、それこっちのセリフだから。こっちこそお世話になるよ。じゃ、行こーか」


 マスペの空ボトルを手に、二人でキッチンに向かう。アメリが「お手伝いしたい」と言ってくれるけど、「クロちゃんの話し相手になってあげて」というと、「わかった!」と承諾してくれた。



 ◆ ◆ ◆



「さて、食材は何がありますか?」


 マイエプロンを締め、同じようにマイエプロンを締めている久美さんに問う。


「んー。何が残ってるかな。ちょっと一緒に見よっか」


 ぱかっと大きな観音開きの冷蔵庫を開けると、実に色々な食材が入っていた。踏み台を使っている久美さんの背中に、若干哀愁が漂っている。


「主菜から考えていきたいですね。鶏ももがありますね。あと胸肉も。唐揚げとかいかがでしょう?」


「お、いーねー! じゃあ、付け合せはキャベツの千切りとトマトにすっか」


 パチンと指を鳴らす久美さん。


「お味噌汁の具って好みが分かれますけど、何にします?」


「んー、麩とネギあたりが無難じゃね?」


「では、それでいきましょう」


 こうして、作戦会議終了! では、いざ調理開始!

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