さあて、やってきましたいつもの……ではないスーパー! 例のBGMがないとなんだか調子が狂うけど、チラシをチェックしてみましょー!
メバル、カキ、春野菜各種がお安い!
メバルかあ~。煮付けがまず思い浮かぶけど、真留さんをお迎えする「ごちそう」としてはちょっと地味な気がするなー。まあ、おもてなしなのだから気持ちがいちばん大事なわけだけれど……。ほかのレシピも調べてみよう。
アクアパッツァとな? 以前かくてるハウスでいただいたアレか。でもこれ、にんにく使うのかー。真留さん、食後打ち合わせしたらそのまままたお仕事に行っちゃうから、ニオイのキツいのはNGだなー。
うーん、メバルは他にこれといっていいレシピなし。煮付けを候補として頭の片隅に置いておいて、別の食材というと……カキ。鍋をやるならギリギリの時期だけど、カキフライという手もあるね!
アクアパッツァほどの鮮やかさはないけど、煮付けよりは見栄えのする料理な気がする。
あと大事なのは、明日真留さんがいらっしゃるのはアメリと食卓を囲むのが主目的であるということ。ならばアメリの手料理なんて、真留さんの胃袋をグッと掴むんじゃないかしら!
「アメリちゃん。明日真留さんがお昼食べに来るわけだけれど、手料理を振る舞ってみない?」
「おお! 真留おねーさんにごちそう作りたい!」
ノリノリですね、お嬢様。よし、明日はアメリシェフにカキフライを作ってもらいましょう! すると、キャベツも一玉買って……。プチトマトも買っていきましょうね。あとは、家にある冷凍ブロッコリーを使えば付け合せは完璧かな。
明日のお昼はこれでいいとして、せっかくだから私たちはメバルの煮付けを晩ごはんにしましょうか。キャベツのお味噌汁も作って、アスパラのおひたしなんてのもいいね! うんうん、これは美味しそうですよ!
アメリに何か入用なものはないか尋ねると、特にないとのことで、三種の神器もかごに入れてお会計でーす!
◆ ◆ ◆
えっちらおっちら歩いて帰宅~! ふう、キャベツと牛乳重~。まだ寒い時期だし、ドライアイスハンカチにくるんで使わせてもらったから、生物も大丈夫だとは思うけれど。
時間もちょうどいいので、さっそくおニューの炊飯器を使ってみましょう! 無洗米を入れーの、お水を入れーの、スイッチポン。これで、時間が来れば出来ちゃうらしい。
着替え終わった後は、寝室で休憩タイム。さっそく、買いたてほやほやの本の世界に没入するアメリちゃん。うーん、構ってもらえないと寂しいわ。私ってば、ちゃんと子離れできるのかしら?
「アメリー。頭撫でていい~?」
「いいよー」
快諾してもらえたので、撫でながらテレビを見る。あ、お笑い番組やってる。これ見よっと。
爆笑しながら頭を撫でていると、「あんまり頭動かさないで~」と苦情を言われてしまった。ごめん。番組チョイスを間違えてしまった感。やむなくチャンネルを変えて、グルメ番組に。今度は無闇にアメリの頭を揺することもなく、静かに視聴できました。
途中、はっとなって(アラーム忘れた! 炊飯ボタン押さなきゃ!)と立ち上がりかけたけど、もうその必要がないことを思い出し、座り直す。どうにも、八年続いた習慣はすぐには抜けないね……。
そしてしばらく経ち、今度こそ蒸し上がりをスマホが知らせる。
「アメリちゃん、ごはんが炊けましたよ。料理しに行きましょう~」
「おお? もうそんな時間? 行こー!」
というわけで、キッチンへ!
◆ ◆ ◆
「さて、アメリシェフ。シェフには、アスパラのおひたしを作っていただきます」
「おお~!」
拳を突き上げ意気軒昂。
「一、お湯を沸かします。二、硬い部分を切り落とします。三、アスパラの皮をピーラーで剥きます。四、程良い長さに切ります。五、茹でます。六、火が通ったらザルに揚げて流水で冷やします。七、薄めためんつゆをかけます。八、鰹節をまぶします。……作業が多いけど、できるかな?」
「頑張る!」
「手順がわからなくなったらいつでも訊いてね。じゃ、はじめましょー!」
まず、お米を切る。おお、本当にふっくら蒸れてますねえ! こりゃすごい。
で、私はメバル担当。メバルはすでに鱗とワタが取ってあったので、沸かしたお湯にさっとくぐらせ、まずは臭み取り。
続いて包丁で胴体に×の字を入れ、さっきのお湯を一旦捨てて、水二百ミリリットル、料理酒百ミリリットル、みりん大さじ二杯、お砂糖大さじ一杯、生姜チューブ適量を沸かす。湧いたら、メバルを入れて落し蓋をして十分コトコト煮込みまーす。
「アメリシェフ。そちらはいかがですかね?」
「おおー、こんな感じ~」
ふむ、カットまでできてますね。
「いい調子! あとは茹でるだけだね」
「はーい」という返事を受け、私はキャベツの作業に移る。お馴染み芯をくり抜き、濡らしたっキッチンペーパーを詰める。あとは、数枚剥がしてざく切りに。うちはコンロが二口しかないので、アメリのアスパラ終了待ち。
メバルが煮えるまでやることもないので、アスパラの茹で状態を見守る。ぐつぐつ……ぐつぐつ……ん。そろそろいいんじゃないかしら。
「アメリちゃん、ザルに揚げてちょうだい」
「はーい」
ザルにざーっと流し込み、踏み台と一緒に流しのほうに移動するアメリ。じゃーっと、冷やし始めます。
「ちょっとお水借りるねー」
アメリが使っていった鍋に水を張り直し、キャベツを入れて沸かし始める。
アラームが鳴ったので、メバル鍋の落し蓋を一回取り、お醤油大さじ三杯を加え、再び落し蓋をしてさらに五分煮ます。
再度アラームが鳴ったのでメバル鍋の火を止め、粗熱を取る。味見……OK!
その間に味噌汁鍋のお湯も沸いてキャベツもしんなりしたので、火を止めてお味噌を溶く。こちらも味見……うん、OK!
「おねーちゃん、めんつゆの濃さこれぐらいでいーい?」
アメリがアスパラを盛ったお皿を差し出してきたので、スプーンでひとすくいして味を見る。
「バッチリです、アメリシェフ!」
合格を告げると、「やったー!」とお陽様のような笑顔を向けてくる。
二人でお味噌汁、お米、アスパラ、お茶を配膳し、最後に熱が取れた煮付けをお皿に盛る。
「じゃ、いただきますしよう。いただきます!」
「いただきます!」
まずはアメリちゃん謹製のアスパラから。うん、この歯ごたえ、いいですねえ。おつゆの濃さもグーですよ!
「美味しいよ、アメリ」
「ほんと!? 嬉しい~」
あらあら、照れちゃって。可愛いなあ。
続いてメバル。これまた美味し。やはり、旬のものはいいですねえ。
「おねーちゃん、お魚美味しい!」
「ありがと」
笑顔に笑顔で返す。
ごはんを食べつつ、お味噌汁。これまた良いお味。しかし、ごはんの美味しいこと! さすが最新式の炊飯器は違うわー。
締めはお茶をいただき、ほっと一息。美味しゅうございました。
二人でごちそうさまを言い、後片付け。
その後はアメリは読書、私は皆さんとチャットを楽しむのでした。
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